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本記事は アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト 疋田、畠 と、Fivetran による共著です。 はじめに 本記事では、 Fivetran の Managed Data Lake Service 及び CDC 機能を活用して業務システムの RDBMS から Amazon S3 上の Apache Iceberg テーブルへリアルタイムにデータ連携が必要となるユースケースや構成イメージ、実装例を記載します。 本記事では、業務システムの RDBMS からリアルタイムにデータを連携するユースケースを紹介します。また、 Fivetran の Fivetran Managed Data Lake Service 及び CDC 機能を用いて Amazon S3 上の Apache Iceberg テーブルを活用する構成と実装例をご紹介します。 お客様の業務システムには、受注・在庫・会計といった大量のトランザクションデータが蓄積されています。これらのデータを分析やビジネス上の意思決定に活用したいというニーズは年々高まっており、近年では生成 AI の学習データ基盤としてもオープンテーブルフォーマットを活用したデータ基盤へのデータ集約が注目されています。 しかし、業務システムの RDBMS 上で直接分析クエリを実行すると、本来のトランザクション処理に影響を及ぼすリスクがあります。受発注や在庫更新のような日常的なデータの読み書きトランザクション処理は OLTP(Online Transaction Processing) 、大量データの集計や傾向分析などの分析処理は OLAP(Online Analytical Processing) と呼ばれ、それぞれ求められる処理特性が異なります。高スペックな RDBMS を用いて OLTP および OLAP を単一のデータベース基盤で処理する方式の場合、最新のデータを扱えますが、ハードウェアやライセンス等のコストが増大します。夜間バッチで OLAP 基盤へデータを連携する方法では、コストを抑えられますが、データの鮮度がバッチの実行間隔に依存するといったトレードオフが生じます。 こうした課題を解決する手段の一つが、 Change Data Capture(CDC) を用いた業務システムとデータ基盤の連携です。CDC はデータベースの変更をリアルタイムに検知・取得する技術で、業務システムへの負荷を最小限に抑えながらデータを連携できます。 本ブログでは、AWS Data and Analytics コンピテンシーパートナーである Fivetran の Managed Data Lake Service (MDLS) 機能を活用し、業務システムの RDBMS から Amazon S3 上の Apache Iceberg テーブルへデータを連携する方法をご紹介します。Apache Iceberg は大規模な分析データセットを管理するためのオープンテーブルフォーマットで、ACID トランザクションやスキーマ進化、タイムトラベルといった機能を提供します。連携されたデータは AWS Glue データカタログに登録され、 Amazon Redshift 、 Amazon Athena 等からすぐにクエリ・分析が可能です。 業務システムから Iceberg テーブルへの CDC データ連携のユースケース 業務システムで用いられるデータベース基盤から Apache Iceberg テーブルへ CDC でデータを連携するユースケースとして、以下のようなものが挙げられます。 OLTP と OLAP の分離によるデータベース基盤のダウンサイジング オンプレミスの高性能なデータベース基盤では、 OLTP と OLAP の両方を単一の基盤上で実行しているケースが少なくありません。OLAP ワークロードに対応するために基盤のスペックが引き上げられ、結果としてライセンスコストやハードウェアコストが増大しているという状況は、多くのお客様に共通する課題です。 これに対して、CDC を用いて業務データを Apache Iceberg テーブルに連携することで、OLAP ワークロードを Amazon Athena にオフロードできます。Fivetram Managed Data Lake Service が連携したデータは AWS Glue データカタログに自動的に登録されるため、Athena からすぐにクエリを開始できます。これにより、既存のデータベース基盤は本来の OLTP 処理に専念でき、スペックの適正化やダウンサイジングが可能になります。Amazon Athena はサーバーレスサービスであるため、インフラストラクチャの管理が不要で、クエリのデータスキャン量に応じた従量課金で利用できます。 バッチ処理のオフロード 多くの企業では、業務システムのデータを分析用データベースに連携するために、夜間バッチによる定期的なデータ抽出を行っています。この方式では、データの鮮度がバッチの実行間隔に依存するため、日中に発生した変更が分析に反映されるのは翌日以降になる場合も少なくありません。また、バッチ処理自体がデータベースに大きな負荷をかけるため、業務時間外に実行せざるを得ないという制約もあります。 CDC を活用すれば、データベースのトランザクションログから変更データをリアルタイムに取得可能です。これにより、業務システムへの負荷を最小限に抑えながら、データの鮮度を大幅に向上でき、夜間バッチの廃止や実行頻度の削減等を狙えます。また、Fivetran のようなサーバーレスなマネージドサービスを用いることで運用負荷の軽減や、後述の Fivetran Managed Data Lake Service のような多くの機能を素早く利用可能です。 履歴データの保持と分析 業務システムでは、データは常に最新の状態に更新されるため、過去のある時点の状態を参照することが困難です。たとえば、「ある顧客の住所が変更される前の情報」や「商品の価格改定前の単価」といった履歴情報は、通常の RDBMS 上では保持されません。 Fivetran の CDC は データウェアハウスにおける履歴管理手法である Slowly Changing Dimension Type 2(SCD Type 2)に対応しています。SCD Type 2 により、レコードの変更履歴を保持する形式でデータを連携できます。これにより、Apache Iceberg テーブル上に変更の履歴が蓄積され、「いつ、どのように変更されたか」を後から分析することが可能になります。Iceberg のタイムトラベル機能と組み合わせることで、任意の時点のデータスナップショットを参照することもできます。 Fivetranとは? エンタープライズグレードのCDCとデータ統合の自動化 現代のデータアーキテクチャは、Amazon S3 を核として、オープンで柔軟な基盤へと進化しています。組織がレイクハウス型の分析へと移行するにつれ、Apache Iceberg のようなオープンテーブル形式でデータを取得することが、データのポータビリティと将来への対応を確保する上で不可欠になっています。 エンタープライズグレードのデータ移動: High-Volume Agent(HVA)と Binary Log Reader データエンジニアリングにおける最大の課題は、データの取り込みだけでなく、ミッションクリティカルなワークロードの長期的な信頼性と拡張性を維持することです。Fivetran は 700 を超えるフルマネージドコネクタを提供し、多様なデータソースからの連携をノーコードで実現します。特に Oracle(Oracle Exadata を含む)のような要求の厳しい環境向けには、高度な Binary Log Reader 技術を活用した低レイテンシのログベース CDC に対応しています。Oracle Database 19c 以降に最適化されたこの仕組みは、REDO ログを直接分析することで LogMiner などの従来型ツールのオーバーヘッドを回避します。多くの場合、ソースに近い環境に配置した High-Volume Agent(HVA) を介して REDO ログを読み取ることで、テラバイト規模のデータであっても本番環境への影響を最小限に抑えながらリアルタイムに移動できます。これにより、コアビジネスシステムの安定性を損なうことなく、シームレスな OLAP オフロードが可能になります。 自動化されたガバナンスと将来を見据えたテーブル Fivetran MDLS は、スキーマの変更を自動的に検知・反映することで、スキーマドリフトに自動的に対応します。また、レコードの変更履歴が保持される SCD Type 2 のサポートにより、Iceberg テーブル管理の運用負担を軽減します。これにより、ソーススキーマが変化しても、下流の分析の一貫性と「将来への対応」が確保されます。 検出を効率化するため、Fivetran は AWS Glue データカタログとネイティブに統合されています。Amazon S3 で Icebergテーブルが更新されると共に、メタデータが自動的に同期されます。これにより、Amazon Athena 経由でデータセットを即座に検出及びクエリできるようになります。Fivetran の自動データ移動と AWS のスケーラブルなインフラストラクチャを組み合わせることで、チームはエンタープライズ規模の AI と分析に対応できる、ガバナンスが効いた高性能なデータ基盤を構築できます。 さらに、Fivetran MDLS はデータのロード・更新にとどまらず、Icebergテーブルのパフォーマンスを継続的に維持するための自動管理機能をバックグラウンドで実行します。具体的には、クエリ性能を最適化するための小さなファイルの統合(コンパクション)、不要な孤立ファイルの削除、古いスナップショットの自動期限切れ処理などが含まれます。これらの運用タスクが自動化されることで、チームはインフラ管理ではなくデータ活用に集中できます。 また、Fivetran MDLS を活用することで、各ツールやシステムがデータのコピーを個別に持つ必要がなくなります。データは Amazon S3 上の Iceberg テーブルとして一元管理されるため、ストレージコストを抑えながら「単一の真実のバージョン(Single Source of Truth)」を実現し、組織全体のデータサイロを防ぐことができます。 構成の概要とシナリオ ここでは、PostgreSQL で稼働する業務システムのデータを分析基盤に連携するシナリオを例に、具体的な手順をご紹介します。業務データベースに対して分析用途の集計クエリを直接実行すると本番ワークロードへの負荷が懸念されます。加えて、一部のテーブルについては各レコードの変更履歴を追跡できる形でデータを蓄積する必要があります。 そこで、Fivetran を業務データベースに接続し、Amazon S3 上に Iceberg 形式でデータを蓄積するパイプラインを構築します。これにより、業務システムの OLTP ワークロードと分析の OLAP ワークロードを分離しつつ、両者を継続的に連携できます。S3 に書き込まれた Iceberg テーブルのメタデータは AWS Glue Data Catalog に登録されるため、Amazon Athena から即座にクエリが可能です。 今回の構成は以下の通りです。 ソース: PostgreSQL データベース CDC 処理・データレイク管理: Fivetran MDLS ターゲット: Amazon S3 + AWS Glue Data Catalog(Apache Iceberg 形式) クエリエンジン: Amazon Athena Iceberg 形式のデータは、Amazon Athena 以外にも Amazon Redshift や Apache Spark、Trino など Iceberg をサポートする様々なクエリエンジンからデータをコピーすることなく参照できます。要件の変化に応じて最適なツールを使い分けることが可能です。 サンプルデータ 今回のウォークスルーでは、業務システムを模した以下の 2 つのテーブルを使用します。 orders テーブル(受注データ)は、日々の受注を記録するトランザクションテーブルです。Fivetran MDLS による通常の CDC で連携し、INSERT/UPDATE/DELETE がそのまま Iceberg テーブルに反映される様子を確認します。 カラム名 型 説明 id SERIAL (PK) 受注ID product_id INTEGER 商品ID quantity INTEGER 数量 total_price NUMERIC(10,2) 合計金額 status VARCHAR(20) ステータス(pending / confirmed / shipped / cancelled) ordered_at TIMESTAMP 受注日時 初期データとして、以下の 5 件の受注が登録されています。 id product_id quantity total_price status 1 1 1 128,000 confirmed 2 2 2 90,000 shipped 3 3 1 18,000 pending 4 5 3 10,500 confirmed 5 4 2 17,800 pending products テーブル(商品マスタ)は、商品の基本情報を管理するマスタテーブルです。Fivetran MDLS の SCD Type 2 を使った連携方式を使用し、価格改定などの更新が行われた際に変更前のレコードが履歴として保持される様子を確認します。 カラム名 型 説明 id SERIAL (PK) 商品ID name VARCHAR(100) 商品名 category VARCHAR(50) カテゴリ unit_price NUMERIC(10,2) 単価 is_active BOOLEAN 販売中フラグ updated_at TIMESTAMP 更新日時 初期データとして、以下の 5 商品が登録されています。 id name category unit_price 1 ノートPC 14インチ PC 128,000 2 モニター 27インチ 周辺機器 45,000 3 メカニカルキーボード 周辺機器 18,000 4 ワイヤレスマウス 周辺機器 8,900 5 USBハブ 7ポート アクセサリ 3,500 セットアップ手順 ここからは、実際に環境を構築しながら手順を説明します。全体の流れは以下の通りです。 AWS 側の準備(S3 バケット、IAM ロール、Glue データカタログ) Fivetran のデスティネーション(データレイク)設定 ソースデータベース(Aurora PostgreSQL)の準備 Fivetran のコネクター設定と CDC 連携の開始 AWS 側の準備 S3 バケットの作成 Iceberg テーブルのデータファイルとメタデータを格納する S3 バケットを作成します。詳細は Amazon S3 の開始方法 を参照してください。 IAM ロールの作成 Fivetran が S3 バケットへの書き込みと Glue Data Catalog の操作を行うための IAM ロールを作成します。必要な IAM ポリシーや信頼ポリシーの設定手順は、Fivetran の Managed Data Lake Service セットアップガイド に記載されています。 Fivetran のデスティネーション設定 Fivetran のダッシュボードから、データの書き込み先となるデスティネーションを設定します。今回は S3 Data Lake を選択し、作成した S3 バケットと IAM ロールの情報を入力します。設定の詳細は Fivetran の Managed Data Lake Service セットアップガイド を参照してください。 設定の中で、Update AWS Glue Catalog を有効にすると、Fivetran が Iceberg テーブルのメタデータを Glue Data Catalog に自動登録するようになり、Amazon Athena などからすぐにクエリできる状態になります。 設定が完了すると、以下のようにデスティネーションが登録されます。 ソースデータベースの準備 今回は Amazon Aurora PostgreSQL をソースデータベースとして使用します。論理レプリケーションの有効化やユーザーの作成など、ソース側の設定は Fivetran の Aurora PostgreSQL セットアップガイド に従って進めます。 セットアップガイドに従い、Fivetran 専用のデータベースユーザーの作成と読み取り権限・レプリケーション権限の付与、Publication とレプリケーションスロットの作成を行います。 Fivetran のコネクション設定 Fivetran では、デスティネーションに対してデータソースごとのコネクションを作成することでデータパイプラインを構成します。先ほど作成したデスティネーションに対して、 Amazon Aurora PostgreSQL へのコネクションを追加します。PostgreSQL を選択し、Aurora クラスターのエンドポイントや認証情報を入力します。 データベースへの接続方法は直接接続のほか SSH トンネルや AWS PrivateLink にも対応しています。また、増分同期の方式(Update Method)には Logical Replication と Query-Based の 2 種類があります。Logical Replication は WAL(Write-Ahead Log)から変更を検知する方式で、Aurora PostgreSQL バージョン 10 以降で利用できます。今回はこちらを選択し、先ほど作成した Replication Slot と Publication Name を指定します。 設定が完了すると、以下のようにコネクションが登録されます。 データ連携の設定と同期の開始 コネクションの設定画面では、同期対象のデータや連携方式に関する様々な設定を行うことができます。 コネクションの Schema タブでは、同期対象のテーブルやカラムを個別に選択できます。不要なテーブルを除外したり、機密性の高いカラムを連携対象から外すといった制御が可能です。 また、ソース側でテーブルやカラムが追加された場合の挙動を Schema Change Handling で制御できます。すべて自動で同期する(Allow all)、既存テーブルへのカラム追加のみ同期する(Allow columns)、すべてブロックする(Block all)の 3 つのオプションから選択できます。 「Sync Mode」により、テーブルへの変更履歴の反映方法を設定できます。ソースの変更をそのまま反映したい場合は、「Soft delete mode」(デフォルト)を選択します。SCD Type 2 でデータを連携したい場合は、「History mode」を選択します。 今回は products テーブル の Sync Mode を History mode に変更し、SCD Type 2 での履歴管理を有効にしています。これにより、レコードの変更時に変更前の状態が履歴として保持されます。 同期の頻度は Sync frequency で設定します。プランに応じて最短 1 分間隔から選択できます。 これらの設定を行った上で Start Initial Sync をクリックすると、初回のフルロードが開始されます。ソーステーブルの既存データがすべて Iceberg テーブルに転送されます。 データ連携の確認 初回同期の確認 AWS マネージメントコンソール からGlue カタログを確認してみると、テーブルが連携されていることがわかります。 連携先の Iceberg テーブルは Amazon Athena や AWS Glue、Amazon Redshift などさまざまなエンジンからクエリすることが可能です。Iceberg テーブルへのクエリに対応している 3rd party の製品からのクエリももちろん可能です。 今回は、 Amazon SageMaker Unified Studio の AI エージェントが組み込まれたノートブック から Amazon Athena でクエリを行ってみました。以下の通り、連携された Iceberg テーブルを簡単にクエリすることができました。 ソーステーブルのカラムに加えて、Fivetran が自動的に付与するメタデータカラムが確認できます。 orders テーブル(通常の CDC)では、以下のメタデータカラムが追加されています。 _fivetran_deleted : ソース側で削除されたレコードを示すフラグ。削除が検知されると true になる _fivetran_synced : Fivetran がレコードを同期した日時 products テーブル(SCD Type 2)では、上記に加えて履歴管理のためのカラムが追加されています。 _fivetran_start : そのレコードが有効になった日時 _fivetran_end : そのレコードが無効になった日時。現在有効なレコードは 9999-12-31T23:59:59.999Z _fivetran_active : 現在有効なレコードかどうかを示すフラグ 現時点ではすべてのレコードが _fivetran_active = true で、初回同期時点のスナップショットが格納されている状態です。ここからソースデータベースに変更を加え、CDC による差分連携と SCD Type 2 の履歴管理の動作を確認していきます。 CDC による差分連携の確認 初回同期の完了後、ソースデータベースに対して INSERT、UPDATE、DELETE を実行し、変更が Iceberg テーブルに反映されることを確認します。 -- 新しい受注の追加 INSERT INTO orders (product_id, quantity, total_price, status, ordered_at) VALUES (1, 2, 256000, 'pending', NOW()); -- 受注ステータスの更新 UPDATE orders SET status = 'shipped' WHERE id = 3; -- 受注のキャンセル(削除) DELETE FROM orders WHERE id = 5; Fivetran の次回同期が実行された後、Athena で再度クエリを実行すると、これらの変更が反映されていることを確認できます。 id=6 として新しいレコードが追加されている(INSERT の反映) id=3 の status が pending から shipped に変更されている(UPDATE の反映) id=5 の _fivetran_deleted が true になっている(DELETE の反映) DELETE されたレコードはテーブルから物理的に削除されるのではなく、 _fivetran_deleted = true のフラグで論理削除として管理されます。これにより、削除の履歴を保持しつつ、分析時には WHERE _fivetran_deleted = false でフィルタすることで最新の有効データのみを参照できます。 SCD Type 2 による履歴管理の確認 products テーブルで商品の価格改定と販売終了を行い、SCD Type 2 による履歴管理を確認します。 -- 商品の価格改定 UPDATE products SET unit_price = 138000, updated_at = NOW() WHERE id = 1; -- 商品の販売終了 UPDATE products SET is_active = false, updated_at = NOW() WHERE id = 5; Fivetran の同期後、Amazon Athena で products テーブルをクエリすると、変更前と変更後の両方のレコードが保持されていることを確認できます。 たとえば id=1(ノートPC 14インチ)では、価格改定前の unit_price=128,000 のレコードが _fivetran_active = false として残り、改定後の unit_price=138,000 のレコードが _fivetran_active = true として追加されます。同様に id=5(USBハブ 7ポート)では、is_active が true だった時点のレコードと false に変更された後のレコードがそれぞれ保持されます。 このように、ソース側では単純な UPDATE であっても、 _fivetran_active = false のレコードも含めて参照することで「いつ、どのような値だったか」の履歴を分析できます。また、 _fivetran_active = true のレコードのみを対象にクエリすることで、テーブルの最新の状態を参照することもできます。 以上のウォークスルーで確認した通り、Fivetran MDLS を使うことで Aurora PostgreSQL から Iceberg テーブルへの CDC パイプラインを、コードを書くことなく構築できました。通常の CDC による INSERT/UPDATE/DELETE の即時反映に加え、SCD Type 2 による変更履歴の自動蓄積、テーブル・カラム単位の同期制御やスキーマ変更への対応など、運用に必要な機能が設定画面上で完結しています。連携されたデータは Glue Data Catalog を通じて Athena からすぐにクエリでき、分析基盤としてすぐに活用を開始できる状態になります。 まとめ 本記事では、Fivetran Managed Data Lake Service 及び CDC 機能を活用し、業務システムの RDBMS から Amazon S3 上の Apache Iceberg テーブルへリアルタイムにデータを連携する構成を紹介しました。Fivetran の Binary Log Reader による低負荷な変更データ取得と、AWS Glue データカタログへの自動メタデータ同期により、OLTP/OLAP の分離やバッチ処理のオフロードといったユースケースをシンプルな構成で実現が可能となります。
本記事は 2026 年 3 月 24 日に公開された Cristian Graziano の「 Amazon CloudFront flat-rate pricing plans: new features and expanded capabilities 」を翻訳したものです。 2025 年 11 月、 Amazon CloudFront  の 定額料金プランをリリース しました。リリース以降、お客様からいただいたフィードバックをもとに新しい機能を追加してきました。この記事では、  Lambda@Edge のサポート、 CAPTCHA 、相互 TLS (mTLS) 、そして AI ボットやエージェントのトラフィックを可視化する AI アクティビティダッシュボードなど、最新の追加機能をご紹介します。また、使用量の上限を超えたトラフィックの扱いについても明確化しています。 定額料金プランとは 定額料金プランは、トラフィックのスパイクや攻撃に関係なく、月額固定料金で Web サイトやアプリケーションの配信と保護に必要なすべてを提供します。超過料金は発生しません。 CloudFront CDN 、  AWS WAF  、分散型サービス拒否 (DDoS) 対策、ボット管理、  Amazon Route 53  DNS 、  Amazon CloudWatch  Logs へのログ取り込み、サーバーレスエッジコンピューティング、  Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)  のストレージクレジットを、選択したプランティアに応じた月額料金で提供します。 プランは Free ($0/ 月 ) 、 Pro ($15/ 月 ) 、 Business ($200/ 月 ) 、 Premium ($1,000/ 月 )の 4 つのティアで提供されています。各ティアで利用できる機能が異なり、想定されるトラフィック量も異なります。いつでもアップグレードでき、年間契約は不要です。 新機能と対応機能の拡大 プランのリリースから 4 か月で、数十万のお客様がこれらのプランを利用して、予測可能な料金で Web サイトのセキュリティ強化と高速化を実現しています。 AWS のあらゆる機能やサービスと同様に、お客様の声に耳を傾け、新しい機能強化を導入しています。たとえば、定額料金プランに期待しているものの、プランがまだサポートしていない機能を既存の設定で使用しているため導入できないというお客様の声がありました。アプリケーションの動作を変更することなく、予測可能な月額料金を利用したいというご要望です。こうしたお客様のニーズに応えるため、新しい機能を追加しました。 AI アクティビティダッシュボード 。 AWS WAF の新しい AI アクティビティダッシュボードは、アプリケーションに到達する AI ボットやエージェントのトラフィックを可視化します。トラフィックの推移を時系列で確認したり、もっともアクティブなボットや頻繁にアクセスされるパスを特定したり、ボットのカテゴリや検証ステータスごとにリクエストを分析したりできます。このダッシュボードは、 Pro ティア以上のすべての有料プランに含まれています。 AI ボットのトラフィックに対してアクションを実行できるボット管理コントロールは、 Business ティア以上で  AWS WAF Bot Control  を通じて利用できます。 Lambda@Edge と CAPTCHA のサポート 。 Lambda@Edge や AWS WAF ルールで CAPTCHA を使用しているお客様も、定額料金プランを利用できるようになりました。以前は、これらの機能を使用しているディストリビューションはプランに加入できず、プランに加入しているディストリビューションでこれらの機能を有効にすることができませんでした。 AWS WAF ルールで設定した CAPTCHA レスポンスはプラン料金に含まれます。 Lambda@Edge はすべてのプランティアでサポートされるようになり、呼び出しはプラン料金に加えて標準の従量課金制で請求されます。 相互 TLS(mTLS) 。定額料金プランに mTLS のサポートを追加しました。 Business ティア以上で利用できるオリジン mTLS は、許可された CloudFront ディストリビューションのみがアプリケーションに接続できるようにします。これは、署名検証によりアプリケーションへのアクセスを制限する  オリジンアクセスコントロール (OAC)  や、アプリケーションをプライベートサブネットに配置して CloudFront 経由でのみアクセス可能にしパブリックインターネットに公開しない  VPC オリジン  といった既存のセキュリティオプションに加わるものです。これらの機能を組み合わせることで、すべてのトラフィックが CloudFront と AWS WAF のセキュリティルールを経由してからアプリケーションに到達するようにできます。 Premium ティアで利用できるビューワー mTLS では、クライアントがアプリケーションに接続する前に有効な証明書の提示を要求できます。 使用量の上限を超えたトラフィックの扱い 定額料金プランは、超過料金のない月額固定料金を提供します。トラフィックのスパイクが発生しても追加料金は発生せず、コンテンツが拡散した瞬間に請求の心配をする必要もなく、サービスのローンチが成功しても課金のペナルティはありません。各プランには、そのティアで最適なパフォーマンスを発揮するための使用量の上限が設定されています。使用上限はハード制限ではありません。予測可能な料金と安定したパフォーマンスが得られます。使用量が上限の 50% 、80% 、100% に近づくと通知が届き、コンソールからいつでも使用状況を確認できます。 リリース後、月間の使用量の上限を超えたトラフィックがどのように扱われるのか、より明確な説明を求めるお客様の声がありました。上限を超えたトラフィックの扱いについて、以下のように明確化しました。 月間使用量の上限を初めて超えた場合、上限の最大 3 倍までのトラフィックはその月内において問題なく処理されます。それを超える場合には、超過使用量は複数月にわたって評価されます。使用量の上限を大幅かつ長期間にわたって超過した場合にのみ、トラフィックの配信方法が調整される場合があります。ほとんどのお客様はパフォーマンスの調整を経験することはありませんし、いずれの場合においても超過料金は発生しません。また、いつでも上位ティアにアップグレードできます。 既存のディストリビューションを定額料金プランに変更する場合やプランティアを変更する場合、 CloudFront コンソールに各プランティアの使用量の上限に対する過去の使用状況が表示されるため、プランの選択が容易になります。 詳細は 毎月の使用上限 をご覧ください。 はじめ方 新しいアプリケーションを構築する場合でも、すでに  Amazon Web Services (AWS)  上で運用している場合でも、定額料金プランをすぐに利用開始できます。  CloudFront コンソール にアクセスして、新規または既存のディストリビューションをプランに登録してください。定額料金プランと従量課金制を異なるディストリビューションで組み合わせて使用できるため、アプリケーションごとに最適な料金モデルを柔軟に選択できます。 詳細は プランと機能 、または CloudFront デベロッパーガイド をご覧ください。 著者紹介 Cristian Graziano Cristian Graziano は、シアトルを拠点とする Amazon CloudFront のプリンシパルプロダクトマネージャーです。プロダクト、エンジニアリング、 UX の各チームと連携し、初めて AWS を利用するお客様から経験豊富なお客様まで、あらゆる規模のお客様が Amazon CloudFront および関連する AWS サービスを迅速にオンボーディング、設定、管理できるよう支援しています。 翻訳はプロフェッショナルサービスの鈴木 ( 隆 ) が担当しました。
2025 年 8 月に、 AWS User Experience Customization (UXC) 機能を導入しました。これにより、お客様の特定のニーズに合わせてユーザーインターフェイス (UI) を調整し、タスクを効率的に完了できるようになりました。この機能を使用すると、アカウント管理者は AWS マネジメントコンソール の一部の UI コンポーネントをカスタマイズできます。例えば、 AWS アカウントに色を割り当て 識別しやすくすることが可能です。 2026 年 3 月 26 日、UXC に追加されたカスタマイズ機能を発表いたしました。これによりチームメンバー向けに、関連する AWS リージョンとサービスを選択的に表示できるようになりました。未使用のリージョンとサービスを非表示にすることで、認知的な負荷を軽減し、不要なクリックやスクロールを排除できるため、集中力を高め、作業時間を短縮できます。 今回のリリースにより、アカウントの色、リージョン、サービスの表示を一括してカスタマイズできるようになりました。 アカウントを色で分類 アカウントの色を設定して、視覚的に区別できます。開始するには、 AWS マネジメントコンソール にサインインして、ナビゲーションバーでアカウント名を選択します。アカウントの色はまだ設定されていません。色を設定するには、 [アカウント] を選択します。 [アカウント表示設定] で、希望するアカウントの色を選択し、 [更新] を選択します。選択した色がナビゲーションバーに表示されます。 アカウントの色を変更すると、アカウントの目的を明確に区別できます。例えば、開発アカウントにはオレンジ、テストアカウントには水色、本番稼働アカウントには赤を使用できます。 リージョンとサービスの可視性をカスタマイズ リージョンセレクターに表示する AWS リージョン、またはコンソールナビゲーションに表示する AWS サービスを制御できます。つまり、アカウントに関連するリージョンとサービスのみを表示するように設定できます。 はじめに、ナビゲーションバーの歯車アイコンを選択し、 [すべてのユーザー設定を表示] を選択します。管理者ロールの場合は、統合設定に新しい [アカウント設定] タブが表示されます。設定を行っていない場合、すべてのリージョンとサービスが表示されます。 表示されるリージョンを設定するには、 [表示されるリージョン] セクションの [編集] を選択します。表示されているリージョンを選択して [すべての利用可能なリージョン] または [リージョンを選択] を選択し、リストを設定します。 [変更を保存] をクリックします。 表示されるリージョン設定を設定すると、コンソールのナビゲーションバーのリージョンセレクターに選択したリージョンのみが表示されます。 同じ方法で、表示されるサービスを設定することもできます。カテゴリからサービスを検索または選択します。ここでは [人気のサービス] カテゴリを使用してお気に入りを選択しました。選択が終了したら、 [変更を保存] を選択します。 表示されるサービス設定を設定すると、ナビゲーションバーの [すべてのサービス] メニューに選択したサービスのみが表示されます。 検索バーでサービス名を検索する場合、選択できるのは選択されたサービスのみです。 リージョンとサービスの表示設定は、コンソールでのサービスとリージョンの表示のみを制御します。 AWS コマンドラインインターフェイス (AWS CLI) 、 AWS SDK 、AWS API、または Amazon Q Developer を通じたアクセスは制限されません。 新しい visibleServices パラメータおよび visibleRegions パラメータを使用して、これらのアカウントカスタマイズ設定をプログラムで管理することもできます。例えば、 AWS CloudFormation サンプルテンプレートを使用できます。 AWSTemplateFormatVersion: "2010-09-09" Description: Customize AWS Console appearance for this account Resources: AccountCustomization: Type: AWS::UXC::AccountCustomization Properties: AccountColor: red VisibleServices: - s3 - ec2 - lambda VisibleRegions: - us-east-1 - us-west-2 また、Cloudformation テンプレートをデプロイすることもできます。 $ aws cloudformation deploy \ --template-file account-customization.yaml \ --stack-name my-account-customization 詳細については、「 AWS ユーザーエクスペリエンスのカスタマイズ API リファレンス 」と「 AWS CloudFormation テンプレートリファレンス 」を参照してください。 今すぐ AWS マネジメントコンソール で試し、コンソールの下部にある フィードバック リンクを選択するか、 AWS マネジメントコンソールの AWS re:Post フォーラム に投稿するか、AWS サポートの連絡先にフィードバックをお寄せください。 – Channy 原文は こちら です。
みなさん、こんにちは。AWS ソリューションアーキテクトの木村です。 関東では先週から桜が咲いていてとても癒されています。 そんな先週の 3 月 26 日には、 Amazon Quick が東京リージョンにて一般提供開始されました。日本のお客様がより便利に使えるようになりましたので、ぜひお試しいただければと思います。 「 AWS ジャパン生成 AI 実用化推進プログラム 」も引き続き募集中ですのでよろしくお願いします。 それでは、3 月 23 日週の生成 AI with AWS界隈のニュースを見ていきましょう。 さまざまなニュース AWS 生成 AI 国内事例ブログ「キヤノン株式会社イメージング事業本部様にて生成 AI ハッカソンを開催!生成 AI をフル活用し社内課題を解決する 5 つのシステムを開発」を公開 キヤノン株式会社イメージング事業本部様と AWS が共同で生成 AI ハッカソンを実施しました。約 20 名のエンジニアが 5 チームに分かれ、Amazon Bedrock や Amazon Q Developer を活用して社内業務の課題を解決するプロトタイプを開発した取り組みと成果を紹介しています。 AWS 生成 AI 国内事例ブログ「AI 時代に組織はどう変わるか — Jeff Barr が語る開発チームの未来と、三菱電機の挑戦」を公開 三菱電機グループの社内 AWS ユーザーグループ「MAWS」シリーズ第 3 弾です。755 名に成長した MAWS のリーダーたちと AWS VP / Chief Evangelist の Jeff Barr とのセッションを通じて、AI 時代における「2 Pizza チームから 1 Pizza チームへ」の組織変化、生産性向上に伴うダウンストリームのボトルネック、「High Judgment」を軸とした人材育成など、開発組織の未来について議論した内容をレポートしています。 ブログ記事「AWS Security Agent 徹底解説: 自動ペネトレーションテストのためのマルチエージェントアーキテクチャ」を公開 AWS Security Agent に組み込まれた自動ペネトレーションテストコンポーネントのアーキテクチャを技術的に解説しています。専門化された複数の AI エージェントが連携し、認証・ベースラインスキャン・多段階探索・検証という一連のワークフローで脆弱性を検出するマルチエージェントシステムの仕組みや、CVE Bench ベンチマークでの評価結果を紹介しています。 ブログ記事「Kiro で Amazon Connect AI エージェント開発を加速」を公開 AI コーディングアシスタント Kiro を使って、15 のバックエンド API を備えた Amazon Connect AI エージェントをわずか 3 日間で構築した事例を紹介しています。仕様駆動設計、高速なコード生成、CloudWatch Logs の自動分析による 10〜20 分のイテレーションサイクルなど、従来 2〜3 週間かかる開発を大幅に短縮した方法を解説しています。 ブログ記事「エージェンティック AI と AWS Transform でメインフレームアプリケーションを再構想 (reimagine) する」を公開 AWS Transform for mainframe と Kiro を活用し、レガシー COBOL アプリケーションをモダンなクラウドネイティブのマイクロサービスに変換する reimagine パターンを解説しています。リバースエンジニアリング、フォワードエンジニアリング、デプロイとテストの 3 フェーズによるモダナイゼーションアプローチと、Strangler fig パターンによる段階的な移行方法を紹介しています。 ブログ記事「Amazon Quick が AWS アジアパシフィック (東京) リージョンで利用可能になりました」を公開 AI ベースのデジタルワークスペース Amazon Quick が東京リージョンで利用可能になりました。Quick Index、Quick Research、Quick Sight、Quick Flows、Quick Automate の 5 つの機能により、データからのインサイト取得、ダッシュボード生成、ワークフロー自動化を 1 つのプラットフォームで実現します。お客様はデータを日本国内にとどめつつ、低レイテンシ―で AI 分析や自動化機能を利用可能になりました。 ブログ記事「AWS DevOps Agent を本番環境にデプロイするためのベストプラクティス」を公開 AWS DevOps Agent の効果を最大化するための Agent Space の設計・実装に関するベストプラクティスを紹介しています。オンコールの責任範囲に基づいた Agent Space の境界設計、IAM ロールの設定、オブザーバビリティツールとの統合、IaC を活用したデプロイの効率化など、調査能力と運用効率のバランスを取るための実践的なガイダンスを提供しています。 ブログ記事「Claude Code on Amazon Bedrock のデプロイパターンとベストプラクティス」を公開 Claude Code を Amazon Bedrock でエンタープライズ規模にデプロイするための方法を解説しています。認証方式(API キー、SSO、直接の IdP 統合)の比較、専用 AWS アカウントの推奨、OpenTelemetry によるモニタリング戦略、CloudWatch ダッシュボードや分析スタックによるコスト可視化など、安全かつ効率的に運用するためのノウハウを紹介しています。 サービスアップデート Agent Plugin for AWS Serverless で AI 支援開発を加速 AWS が Agent Plugin for AWS Serverless を発表しました。この Plugin により、Claude Code や Cursor などの AI コーディングアシスタントを使って、サーバーレスアプリケーションの開発が格段に簡単になります。従来は手動で行っていた Lambda 関数の作成や EventBridge との連携などの各種サーバーレスサービスの設定が、AI の支援で自動化されます。さらに SAM や CDK を使った Infrastructure as Code の実装、API Gateway の設計まで、ベストプラクティスに従った開発を AI がサポートしてくれます。詳細は こちらの GitHu b をご参照ください。 Writer の Palmyra Vision 7B が Amazon Bedrock で利用可能に Amazon Bedrock で Writer の Palmyra Vision 7B モデルが利用開始されました。このモデルは画像を理解してテキストを生成する AI で、文書分析やチャート解釈、手書き文字の抽出などが可能です。これまで画像内容を理解するには別のツールが必要でしたが、Bedrock 上で簡単に画像理解機能を組み込めるようになります。詳細は こちらのドキュメント をご参照ください。 Amazon Bedrock AgentCore Runtime が永続的なエージェントファイルシステム状態のためのマネージドセッションストレージをサポート開始 (プレビュー) Amazon Bedrock AgentCore Runtime で、エージェントのファイルシステム状態を永続化できる機能がプレビュー開始されました。これまで AI エージェントがコードを書いたりパッケージをインストールしても、セッション終了時に全て失われていました。新機能により、エージェントが作成したファイルやインストールしたパッケージが自動的に保存され、次回のセッションでも継続して作業できるようになります。最大 1GB まで、14 日間データを保持します。詳細は こちらのドキュメント をご参照ください。 AWS Step Functions が Amazon Bedrock AgentCore を含む 28 の新しいサービス統合を追加 AWS Step Functions が 28 の新サービス統合を追加し、Amazon Bedrock AgentCore や Amazon S3 Vectors など 1,100 以上の新 API アクションが利用可能になりました。これにより複雑な統合コードを書かずに、AI エージェントの並列実行やドキュメント取り込みパイプラインの自動化などが簡単に構築できます。詳細は こちらの開発者ガイド をご参照ください。 Amazon SageMaker HyperPod が Slurm オーケストレーションクラスターの継続プロビジョニングをサポート Amazon SageMaker HyperPod の Slurm 環境で連続プロビジョニング機能が利用可能になりました。従来は一部のインスタンスグループでプロビジョニングが失敗すると、クラスター全体の作成や拡張が失敗してロールバックされていました。今回のアップデートにより、利用可能なインスタンスで即座に AI/ML トレーニングを開始でき、バックグラウンドで残りの容量を自動的にプロビジョニングします。失敗したノードは非同期で再試行され、複数のインスタンスグループでの同時スケーリングも可能です。CreateCluster API で NodeProvisioningMode を Continuous に設定することで有効化できます。詳細は こちらのドキュメント をご参照ください。 Amazon SageMaker AI が 12 の追加モデルに対してサーバーレス強化学習ファインチューニングをサポート Amazon SageMaker AI で 12 の新しいモデルに対してサーバーレス強化学習ファインチューニングが利用可能になりました。これまではインフラの準備や管理が必要でしたが、今回のアップデートにより Qwen や DeepSeek シリーズなどの最新モデルを手軽にカスタマイズできます。特にコード生成や数学的推論など、従来の教師あり学習では難しかった複雑なタスクに対応可能で、従量課金制のため小規模な実験からでも始められます。バージニア北部、オレゴン、東京、アイルランドリージョンで提供中です。 Amazon SageMaker Studio が Kiro と Cursor IDE をリモート IDE としてサポート開始 Amazon SageMaker Studio で Kiro と Cursor IDE のリモート接続がサポートされました。データサイエンティストや ML エンジニアが、普段使い慣れた Kiro や Cursor IDE の環境を維持しながら、SageMaker Studio のクラウド計算リソースにアクセスできます。AWS Toolkit 拡張機能を使って簡単に接続でき、ローカル IDE とクラウド間のコンテキストスイッチを排除して開発効率が向上します。詳細は こちらのドキュメント をご参照ください。 今週は以上です。それでは、また来週お会いしましょう! 著者について 木村 直登(Naoto Kimura) AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、製造業のお客様に対しクラウド活用の技術支援を行なっています。最近は AI Agent と毎日戯れており、AI Agent 無しでは生きていけなくなっています。好きなうどんは’かけ’です。
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの戸塚です。今週も 週刊AWS をお届けします。 だんだんと春めいてきて、花粉症に悩まされている方も多いのではないでしょうか。私はというと、今年はなぜか症状がほとんど出ず、久しぶりに快適に仕事ができています。 NRF 2026 で注目されたリテール AI の最新動向を扱う流通・小売・消費財むけイベントを 4月20日 に開催します。 「リテールの現場では「AIエージェントが“主”、人間が“従”」に AWSジャパン・五十嵐氏に聞く小売業界におけるマルチエージェントの台頭」 こちらの記事 をご参照いただき、AWS メンバーへ気軽にお声がけください。 それでは、先週の主なアップデートについて振り返っていきましょう。 2026年3月23日週の主要なアップデート 3/25(水) Amazon Bedrock AgentCore Runtime が永続的なエージェントファイルシステム状態のためのマネージドセッションストレージをサポート開始 (プレビュー) Amazon Bedrock AgentCore Runtime で、エージェントのファイルシステム状態を永続化できる機能がプレビュー開始されました。これまで AI エージェントがコードを書いたりパッケージをインストールしても、セッション終了時に全て失われていました。新機能により、エージェントが作成したファイルやインストールしたパッケージが自動的に保存され、次回のセッションでも継続して作業できるようになります。最大 1GB まで、14 日間データを保持します。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 Amazon SageMaker HyperPod が Slurm オーケストレーションクラスターの継続プロビジョニングをサポート Amazon SageMaker HyperPod の Slurm 環境で連続プロビジョニング機能が利用可能になりました。従来は一部のインスタンスグループでプロビジョニングが失敗すると、クラスター全体の作成や拡張が失敗してロールバックされていました。今回のアップデートにより、利用可能なインスタンスで即座に AI/ML トレーニングを開始でき、バックグラウンドで残りの容量を自動的にプロビジョニングします。失敗したノードは非同期で再試行され、複数のインスタンスグループでの同時スケーリングも可能です。CreateCluster API で NodeProvisioningMode を Continuous に設定することで有効化できます。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 P6-B300 と Slurm 25.11 をサポートした AWS ParallelCluster 3.15 AWS ParallelCluster 3.15 が一般提供開始となり、最新の NVIDIA Blackwell GPU を搭載した P6-B300 インスタンスと Slurm 25.11 をサポートしました。これにより AI/ML や高性能コンピューティング (HPC) ワークロードをより高性能な環境で実行できるようになります。EFA ネットワーク設定の改善や大規模クラスターでの密結合ワークロードの性能向上も実現し、科学技術計算がより効率的に処理できます。詳細は こちらのリリースノートをご参照ください。 AWS Transfer Family Applicability Statement 2 (AS2) が MDN の非同期受信をサポート AWS Transfer Family の AS2 で、非同期での MDN (Message Disposition Notifications) 受信がサポートされました。従来は同期のみでしたが、取引先の処理時間やネットワーク遅延に関係なく AS2 ワークフローを移行できます。ヘルスケアや製造業などでパートナーとの安全なデータ交換が可能になります。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 Amazon SageMaker AI が 12 の追加モデルに対してサーバーレス強化学習ファインチューニングをサポート Amazon SageMaker AI で 12 の新しいモデルに対してサーバーレス強化学習ファインチューニングが利用可能になりました。これまではインフラの準備や管理が必要でしたが、今回のアップデートにより Qwen や DeepSeek シリーズなどの最新モデルを手軽にカスタマイズできます。特にコード生成や数学的推論など、従来の教師あり学習では難しかった複雑なタスクに対応可能で、従量課金制のため小規模な実験からでも始められます。バージニア北部、オレゴン、東京、アイルランドリージョンで提供中です。 Amazon Aurora PostgreSQL が数秒でのデータベース作成と接続をサポート Amazon Aurora PostgreSQL で Express Configuration という新機能が登場し、サーバーレスデータベースを数秒で作成・接続できるようになりました。従来は VPC やネットワーク設定に時間がかかっていましたが、事前設定済みの構成により初期セットアップが大幅に高速化されています。インターネットアクセスゲートウェイが自動で設定され、 VPN や AWS Direct Connect なしで開発ツールから直接接続可能です。また IAM 認証がデフォルトで有効化されるため、パスワード不要でセキュアにアクセスできます。 AWS Free Tier でも利用可能なので、 PostgreSQL を手軽に試したい開発者には最適です。詳細は こちらの Blog 記事をご参照ください。 Amazon Aurora PostgreSQL が AWS 無料利用枠で利用可能になりました Amazon Aurora PostgreSQL が AWS 無料枠で利用可能になりました。新規ユーザーはサインアップ時に 100 ドルのクレジットを取得でき、追加で 100 ドルのクレジットも獲得できます。従来は有料プランでしか利用できなかった高性能な PostgreSQL データベースを、無料で試すことができるようになったのが大きなメリットです。express configuration を使えば数秒でデータベースを作成・クエリ実行が可能で、学習コストを大幅に削減できます。詳細は こちらをご参照ください。 Amazon Route 53 Profiles がリソースと VPC 関連付けに対する詳細な IAM 権限をサポート Amazon Route 53 Profiles で細かい IAM 権限設定が可能になりました。これまでは Profile 全体への権限管理でしたが、今回のアップデートでプライベートホストゾーンや DNS Firewall ルールなど、特定のリソースタイプごとに権限を制御できます。例えば、特定の VPC への関連付け操作のみを許可したり、特定のドメイン名のルールだけ編集権限を与えるといった細かな権限設定が実現できます。組織内で DNS 管理の責任を分散させつつ、セキュリティを保てるため大規模な環境での運用が格段に楽になります。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 3/26(木) AWS Advanced JDBC Wrapper が Valkey による自動クエリキャッシュをサポート AWS Advanced JDBC Wrapper が Valkey を使った自動クエリキャッシュ機能をサポートしました。従来は JDBC クエリの結果をキャッシュするために、開発者が手動でコードを書く必要がありましたが、今回のアップデートで数ステップの簡単な設定だけで自動化できるようになりました。Aurora や RDS の PostgreSQL、MySQL、MariaDB データベースのクエリ結果を Amazon ElastiCache for Valkey に保存し、頻繁にアクセスするデータの読み取り遅延を削減できます。これによりデータベースへの読み取り回数が減り、パフォーマンス向上とコスト削減を実現できます。Hibernate や Spring Data といった人気フレームワークにも対応しているため、既存のアプリケーションへの導入も簡単です。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 AWS AppConfig がフィーチャーフラグロールアウト中の拡張ターゲティングを追加 AWS AppConfig にフィーチャーフラグの段階的ロールアウト中に特定のユーザーやセグメントをターゲットできる新機能が追加されました。従来は段階的デプロイメント中に特定のユーザーグループだけに絞って配信することが難しかったのですが、今回のアップデートにより個別の ユーザー ID やセグメント単位での細かい制御が可能になります。これにより新機能のリリース時のリスクを大幅に削減でき、A/B テストや段階的な機能展開がより安全に実施できるようになります。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 Writer の Palmyra Vision 7B が Amazon Bedrock で利用可能に Amazon Bedrock で Writer の Palmyra Vision 7B モデルが利用開始されました。このモデルは画像を理解してテキストを生成する AI で、文書分析やチャート解釈、手書き文字の抽出などが可能です。これまで画像内容を理解するには別のツールが必要でしたが、Bedrock 上で簡単に画像理解機能を組み込めるようになります。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 3/27(金) Amazon GameLift Servers が次世代 EC2 インスタンスファミリーでインスタンスサポートを拡張 Amazon GameLift Servers が EC2 第 5 ~ 8 世代インスタンスに対応しました。これまでより新しい世代の EC2 インスタンスを利用できるようになり、ゲームサーバーのホスティングにおいて価格性能比の向上と効率性が実現されます。汎用 (M シリーズ)、コンピューティング最適化 (C シリーズ)、メモリ最適化 (R シリーズ) の 3 つのインスタンスファミリーから、ゲームの負荷特性に応じて最適な選択が可能です。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 AWS Management Console でサービスとリージョンの表示を制御する設定をサポート開始 AWS Management Console で、表示するサービスとリージョンを制御できる設定が一般提供開始されました。これまで全てのサービスやリージョンが表示されていましたが、必要なもののみを表示することでナビゲーションが簡素化され、チームメンバーが利用可能なリソースを素早く特定できます。アカウント設定の Unified Settings から設定でき、CLI や SDK からのプログラム設定にも対応しています。詳細は こちらのドキュメント をご参照ください。 AWS Lambda が Lambda マネージドインスタンスで最大 32 GB のメモリと 16 vCPU をサポート AWS Lambda Managed Instances で最大 32 GB のメモリと 16 vCPU がサポートされるようになりました。これまでは 10 GB メモリと約 6 vCPU が上限でしたが、大規模なデータ処理やメディア変換などの計算集約的なワークロードも実行可能になります。メモリ対 vCPU の比率 (2:1、4:1、8:1) も選択でき、ワークロードの特性に合わせて最適なリソース配分を設定できます。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 Amazon CloudWatch Logs が Infrequent Access 取り込みクラスでデータ保護、OpenSearch PPL、OpenSearch SQL をサポート開始 Amazon CloudWatch Logs の Infrequent Access (IA) クラスで、データ保護機能と OpenSearch PPL / SQL クエリがサポートされました。従来は Logs Insights のみでしたが、今回のアップデートにより SQL ベースの高度な分析が可能になります。また、ログ内の機密情報を自動検出・マスキングできるため、セキュリティ要件を満たしながらコスト効率的にログを統合できます。詳細は こちらのドキュメントをご参照ください。 今週はアップデートの内容に少し偏りがあり、月・火は落ち着いていた一方で、週の後半に多くの更新が集中しました。 Bedrock まわりのアップデートが引き続き活発に行われる中、Webアプリ構築でよく使う基本サービスにも多くの改良がありました。特に、Amazon Aurora PostgreSQL がついに無料利用枠で使えるようになったのは大きな変化で、今後は Aurora を活用したアプリ開発がさらに進みそうだと感じています。 それでは、また来週お会いしましょう! 著者について 戸塚 智哉(Tomoya Tozuka) / @tottu22 飲食やフィットネス、ホテル業界全般のお客様をご支援しているソリューション アーキテクトで、AI/ML、IoT を得意としています。最近では AWS を活用したサステナビリティについてお客様に訴求することが多いです。 趣味は、パデルというスペイン発祥のスポーツで、休日は仲間とよく大会に出ています。
この記事は 2026 年 3 月 3 日に公開された “The Hidden Price Tag: Uncovering Hidden Costs in Cloud Architectures with the AWS Well-Architected Framework | Amazon Web Services” を翻訳したものです。 AWS とクラウドコンピューティングは、企業の業務運営のあり方を変革しました。組織はクラウド上で大規模にデータを保存、処理、管理できるようになり、コンピューティングリソースをユーティリティとして扱えるようになりました。クラウドアーキテクチャの設計では、それぞれの要件に適したソリューションを見つけるためにトレードオフを検討する必要があります。クラウドアーキテクチャ設計においてベストプラクティスに従わない場合、望ましくない結果や、セキュリティイベントや可用性イベントに伴うコストなどの隠れたコストが発生する可能性があります。 アーキテクチャに関する意思決定の影響は、技術面だけでなく、企業の評判、規制コンプライアンス、市場機会にまで及びます。 IBM と Ponemon Institute の調査 によると、クラウドの設定ミスに関するリスクは過去 10 年間で重要なセキュリティ上の考慮事項として浮上しており、クラウドインフラストラクチャの重要性の高まりを反映しています。このレポートでは、AI の導入が急速に進んでおり、セキュリティとガバナンスのフレームワークを強化する新たな機会が生まれていることが強調されています。調査結果は、AI システムが堅牢なアーキテクチャとガバナンスの実践に基づいて実装された場合に、組織が最も大きな恩恵を受けることを示しています。 クラウドへの移行に際しては、クラウドアーキテクチャのベストプラクティスを優先してください。この記事では、 AWS Cloud Adoption Framework (AWS CAF)と AWS Well-Architected Framework に従うことで、AWS のガイダンスとベストプラクティスを適切に実装し、これらのリスクを軽減する方法について説明します。また、リソースの制約、トレードオフの評価、相反するビジネス上の優先事項など、組織がこれらのベストプラクティスを実装する際に直面する課題についても取り扱います。 背景 AWS CAF は、変革の機会を特定し、クラウドへの準備状況を評価し、AWS のベストプラクティスを活用して変革のロードマップを構築するのに役立ちます。 AWS Well-Architected Framework は、クラウドアーキテクトがアプリケーション向けに安全で高パフォーマンス、回復力があり、効率的で持続可能なインフラストラクチャを構築するのを支援します。このフレームワークは、運用上の優秀性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化、持続可能性の 6 つの柱に基づくガイダンスを提供します。AWS Well-Architected Framework を活用することで、クラウドでのワークロードのアーキテクチャ設計に関する戦略とベストプラクティスを学び、これらのベストプラクティスに照らしてアーキテクチャを評価し、特定された問題の修正を通じてアーキテクチャを改善できます。 AWS Well-Architected Tool で特定される高リスク問題(HRI)は、お客様のビジネスに重大な悪影響を及ぼす可能性があると AWS が判断したアーキテクチャおよび運用上の選択です。これらの HRI は、組織の運営、資産、個人に影響を与える可能性があります。中リスク問題(MRI)もビジネスに悪影響を及ぼす可能性がありますが、その程度は低くなります。これらの問題は、AWS Well-Architected Tool でのお客様の回答に基づいています。低リスク問題(LRI)は、継続的な監視と評価が必要です。クラウド環境は動的であり、今日低リスクであるものが、アーキテクチャ、アプリケーション、または脅威の状況の変化により、明日にはより高いリスクになる可能性があります。重要なのは、クラウドアーキテクチャを常にレビューし改善して、低リスクプロファイルを維持し、AWS クラウドのメリットを最大化することです。 AWS Well-Architected Lenses は、AWS Well-Architected Framework が提供するガイダンスを、生成 AI などの特定の業界やテクノロジードメインに拡張します。生成 AI は、実験的なプロジェクトからミッションクリティカルなエンタープライズアプリケーションへと急速に進化しています。しかし、多くの組織は大きな課題に直面しています。それは、生成 AI のプロトタイプを、実際のビジネスに大きな価値をもたらす堅牢な本番システムへと移行することです。組織が AI の活用機会を模索する中で、包括的な Well-Architected ガイダンスに基づいた 、安全でコンプライアンスに準拠し、コスト効率の高いソリューションを設計することが、本番環境での成功に不可欠になります。 AWS Generative AI Lens は、AWS 上で 生成 AI ワークロードを設計・運用するためのアーキテクチャのベストプラクティスを提供します。 最適化されていないアーキテクチャが隠れたコストを生み出す 3 つの領域、セキュリティ、可用性、リソース効率について見ていきましょう。 最適化されていないクラウドアーキテクチャの隠れたコスト:セキュリティ、可用性、コスト クラウドセキュリティは資産を保護し、競争上の優位性を生み出します。堅牢なセキュリティアーキテクチャは、ビジネス目標、収益、評判に影響を与える可能性のあるインシデントのリスクを軽減します。データと知的財産を保護し、さまざまな規制要件へのコンプライアンスの強化につながります。この強固なセキュリティ体制は、ビジネス機会を直接的に改善し、セキュリティインシデントに関連する隠れたコストのリスクを軽減します。 適切に設計されたクラウドアーキテクチャは、サービスの信頼性を確保し、中断やダウンタイムのリスクを軽減するのに役立ちます。ダウンタイムに関連する一般的なコストには、生産性と収益の損失、お客様に対するサービスレベルアグリーメント(SLA)の未達成などがあります。可用性の中断は、従業員が業務に必要なシステムやツールにアクセスできなくなるため、生産性の低下につながる可能性があります。これらの懸念は、ビジネスの成果と収益に直接影響を与える可能性があります。SLA を満たせない場合、ペナルティや外部コンサルタントの雇用、新しいインフラの導入といったコストが発生するだけでなく、顧客の不満にもつながる可能性があります。 クラウドプロバイダーは、ストレージ、CPU、メモリリソースなど、幅広いサービスを提供しています。パフォーマンスの問題を回避するためにクラウドリソースを過剰にプロビジョニングすると、不要なコストが発生することがよくあります。ハードウェアの制限がワークロードのパフォーマンスに影響を与えるリスクを軽減できる可能性がありますが、過剰な割り当てにはそれ自体の財務的なデメリットがあります。リソースの需要はワークロードによって大きく異なります。多くのアプリケーションは 24 時間 365 日の継続的な稼働を必要としません。週末は休止状態のものもあれば、月に数日しかアクティブにならないものもあります。季節的なパターンに従い、年間を通じてリソースのニーズが変動するワークロードもあります。クラウド環境における効率的なリソース配分とコスト管理には、これらの多様な使用パターンを理解することが不可欠です。 AWS Well-Architected Framework が不要なコストの回避にどのように役立つか AWS Well-Architected Framework は、安全で信頼性が高く、コスト効率の良いクラウドインフラストラクチャを構築するための堅牢なガイドラインを提供します。フレームワークのベストプラクティスとアーキテクチャパターンに従うことで、組織はセキュリティイベント、可用性の中断、非効率なリソース利用に関連するリスクとコストを最小限に抑え、より成功した収益性の高いクラウドデプロイメントを実現できます。 AWS Well-Architected Framework によるセキュリティリスクの軽減 AWS Well-Architected Framework はセキュリティを重視 しており、6 つの柱の 1 つとして位置付けています。フレームワークに記載されているベストプラクティスに従うことで、ワークロードのセキュリティ体制を改善し、インシデントのリスクとそれに伴う潜在的な隠れたコストを軽減できます。以下にセキュリティのベストプラクティスをいくつか紹介します。 ID とアクセス管理 – フレームワークは、最小権限の原則、多要素認証、アクセスポリシーの定期的な監査など、強力な ID とアクセス管理の実践を推奨しており、クラウドリソースへの不正アクセスの防止に役立ちます。 データ保護 – フレームワークは、保存時および転送時のデータ暗号化の使用を推奨し、機密情報の安全性を確保して不正アクセスや意図しないアクセスのリスクを軽減します。また、 データへの直接アクセスを制限する メカニズムの構築も推奨しています。 インフラストラクチャの保護 – フレームワークのガイドラインに従い、ネットワークセグメンテーション、侵入検知・防止システム、自動パッチ管理を実装して、潜在的なイベントからクラウドインフラストラクチャを保護できます。 モニタリングとインシデント対応 – フレームワークは、AWS 環境の継続的なモニタリング、自動化されたセキュリティアラート、効果的なインシデント対応計画を推奨し、潜在的なセキュリティイベントを迅速に検出して軽減します。 AWS Well-Architected Framework によるダウンタイムの最小化 AWS Well-Architected Framework の信頼性の柱 は、ビジネスのダウンタイムとそれに関連するコストを最小限に抑えるのに役立ちます。例えば: 耐障害性と高可用性 – フレームワークは、冗長性、自動フェイルオーバー、分散システムアーキテクチャなどの手法を使用して、コンポーネントの障害や停止時でも継続的な運用を確保する、耐障害性と高可用性を備えたシステムの設計を推奨しています。 スケーラビリティ – フレームワークは、需要に基づいて自動的にスケールするシステムの設計を推奨しており、ビジネスがピーク負荷に対応し、最適なパフォーマンスを維持できるようにします。 バックアップとディザスタリカバリ – フレームワークは、データ損失やインフラストラクチャ障害から迅速に復旧するために、定期的なデータバックアップと堅牢なディザスタリカバリ計画の実装を推奨しています。バックアップとリカバリ計画の定期的なテストも推奨事項に含まれています。 モニタリングとパフォーマンス管理 – フレームワークは、システムパフォーマンスの モニタリングとオブザーバビリティ 、およびプロアクティブなパフォーマンス管理手法の使用を推奨し、ダウンタイムにつながる前に潜在的な問題を特定して解決します。 AWS Well-Architected Framework による運用コストの最適化 AWS Well-Architected Framework のコスト最適化の柱 は、運用費用を抑えとクラウド投資の効果を最大化します。以下はその例の一部です。 リソース効率 – フレームワークは、クラウドリソースの適正化と統合を推奨し、必要なリソースに対してのみ料金を支払うようにします。 コストを意識したアーキテクチャ – フレームワークは、アーキテクチャの決定がコストにもたらす影響を意識するよう推奨し、パフォーマンスやセキュリティを損なうことなくコスト効率の高いソリューションを特定するのに役立ちます。 モニタリングとコスト管理 – フレームワークは、クラウド支出の定期的なモニタリングと分析を推奨し、無駄な支出を特定・削減してコストを最適化するのに役立ちます。 料金モデルの理解 – フレームワークは、特定のニーズに基づいてコストを最適化するために設計されたさまざまなクラウド料金モデルを理解し活用することを推奨しています。これには、オンデマンド、リザーブドインスタンス、Savings Plans、スポットインスタンスが含まれ、それぞれに独自の利点と理想的なユースケースがあります。これらのモデルとその違いを理解することは、AWS クラウドにおける効果的なコスト最適化に不可欠です。 まとめ 組織は、人的ミス、システムの設定ミス、自然災害、インフラの問題、サイバー攻撃など、さまざまな原因によるサービス中断のリスクに常にさらされています。ビジネス、テクノロジー、セキュリティの各リーダーは、セキュリティ対策を強化し、リソースをより効果的に配分し、 障害に強いシステムを構築する ことで、サービス中断や最適化されていないクラウドアーキテクチャによるリスクを減らすことができます。効果的なクラウド設計と最適化は、コスト削減だけでなく、それ以上の価値をもたらします。例えば: 節約したリソースを再投資することで、イノベーションを加速 セキュリティと運用効率の向上 ビジネスニーズに合わせて拡張・対応できる能力の向上 より良い顧客体験と市場投入までの時間の短縮 Well-Architected の各柱のトレードオフを考慮して、適切なアーキテクチャを判断する能力 障害や需要の急増に自動で対処する仕組みを構築し、エンドユーザーに影響が及ぶ前に中断やレイテンシーの問題を防ぐ クラウド最適化の取り組みを加速するために、AWS はいくつかのツールとリソースを提供しています。 AWS Cloud Adoption Framework – クラウド導入への準備状況を評価 AWS Well-Architected Framework – 6 つの柱すべてにわたる詳細なガイダンス AWS Well-Architected Tool – AWS のベストプラクティスに照らしてワークロードを評価 AWS Well-Architected Lenses – Generative AI Lens といった、特定の業界やテクノロジー領域に対応した AWS Well-Architected の拡張機能 AWS Health – AWS リソースのパフォーマンスと、AWS サービス・アカウントの可用性を可視化して向上 AWS Trusted Advisor – コスト最適化、パフォーマンス改善、セキュリティギャップへの対応 Well-Architected IAC (Infrastructure as Code) Analyzer ツール – AWS CloudFormation や Terraform などの Infrastructure as Code(IaC)テンプレートを AWS Well-Architected Framework に照らして自動評価 AWS では、お客様のクラウドジャーニーの最適化を支援しています。AWS CAF と AWS Well-Architected Framework に記載されているこれらの戦略とベストプラクティスを実践することで、セキュリティと運用上の優秀性を維持しながら、クラウドの可能性を最大限に引き出し、イノベーションと成長を推進できます。 まず、ワークロードに対して AWS Well-Architected Framework Review を実施することから始めましょう。AWS ソリューションアーキテクト、テクニカルアカウントマネージャー、および AWS Well-Architected パートナー のネットワークの活用をご検討ください。これらの専門家が AWS CAF レビューと Well-Architected Framework Review を実施を支援します。これらの専門知識と AWS の柔軟なインフラストラクチャを組み合わせることで、効果的にスケールし、デジタル時代における持続可能な成長のための強固なクラウド基盤を構築できます。 本ブログはテクニカルアカウントマネージャーの井上が翻訳しました。原文は こちら です。 Ryan Dsouza Ryan Dsouza は、AWS の Cloud Optimization 組織に所属する Principal Guidance Lead Solutions Architect です。ニューヨーク市を拠点とし、AWS の幅広い機能を活用して、お客様がより安全でスケーラブル、かつ革新的なソリューションを設計、開発、運用し、測定可能なビジネス成果を達成できるよう支援しています。AWS Cloud Adoption Framework と AWS Well-Architected Framework に準拠し、パフォーマンス、コスト効率、セキュリティ、レジリエンス、運用上の優秀性を最適化するクラウドソリューションのアーキテクチャを支援するための戦略、ガイダンス、ツールの開発に積極的に取り組んでいます。LinkedIn プロフィール: https://www.linkedin.com/in/ryandsouzaaws/ Bradley Acar Bradley Acar は、IT 分野で 20 年以上の経験を持ち、そのうち約 10 年を AWS で過ごしています。お客様がレジリエントでスケーラブルなシステムを設計するのを支援してきた豊富な経験を持ち、技術的な実装とビジネス成果の橋渡しに注力しています。AWS のベストプラクティス、新興テクノロジー、デジタルトランスフォーメーション戦略に関する知見を定期的に発信し、組織がクラウド投資を最大限に活用できるよう支援しています。
2026 年 3 月 24 日に公開された “ Building a modern network for your VMware workloads using Amazon Elastic VMware Service ” を翻訳したものです。 組織がクラウド移行を加速させようとする中で、多くのお客様は既存の VMware ワークロードを Amazon Web Services (AWS) にリフトアンドシフトする方法を求めており、アプリケーションのリファクタリングやスタッフの再トレーニングのオーバーヘッドを避けたいと考えています。 Amazon Elastic VMware service (Amazon EVS) は、VMware Cloud Foundation (VCF) を Amazon Virtual Private Cloud (VPC) 内で直接実行でき、VMware ワークロードを AWS で移行・運用するための最も迅速な方法を提供します。 VMware ワークロードを AWS に移行する際にお客様が課題として挙げるのが、クラウドでのネットワーク接続とアーキテクチャ設計です。Amazon EVS のネットワークモデルは、一般的なオンプレミスの VMware デプロイメントとはいくつかの違いがあります。本稿では、Amazon EVS のネットワークモデルを解説し、実証済みのアーキテクチャパターンをご紹介し、Amazon EVS の計画と導入を成功させるための重要な考慮事項をご説明します。 Amazon EVS ネットワークコンポーネント Amazon EVS は、図 1 に示すように、AWS インフラストラクチャ上で VCF ワークロードをデプロイし、運用するために構築された AWS マネージド自動化フレームワークです。Amazon EVS は、VCF の Software-Defined Data Center (SDDC) スタック (vSphere, vSAN, NSX) を Amazon VPC に完全に統合し、VMware ツールと API を保持しながら、シームレスなハイブリッドクラウド運用を可能にします。Amazon EVS ネットワークは、Amazon VPC ネットワークを分離する 2 層モデルに従い、お客様が VMware NSX Software-Defined Networking を使用できるようにします。 アンダーレイ層 (VPC infrastructure) : Amazon VPC, サブネット, ルートテーブル, およびお客様が選択したサブネット内で実行される ENI 接続 ESXi ホストで構成されます。この層はホストマネジメントトラフィック (vSphere, vSAN) を処理し、デフォルトまたはメイン VPC ルートテーブルを通じて IP 接続を実現します。 オーバーレイ層 (NSX Software-Defined Networking) : NSX Manager はマネジメントワークロードドメイン内にデプロイされ、ロジカルスイッチ (セグメント), T0/T1 ゲートウェイ, およびサービス (NAT, Load Balancing, DHCP) をオーケストレーションします。NSX マイクロセグメンテーションとポータブルネットワークポリシーが有効化され、アンダーレイ VPC ネットワークから抽象化し、お客様のワークロードはオーバーレイセグメント上でのみ実行されます。 図 1: ルートサーバーエンドポイントを使用した Amazon EVS と Amazon VPC の統合 主要コンポーネントの詳細 vSphere クラスター: Amazon EVS は統合された VCF アーキテクチャ (vCenter, NSX Manager, vSAN) をデプロイし、お客様が 1 つ以上のワークロードドメインを作成できるようにします。ESXi ホストは、お客様所有の VPC とサブネット内で Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) ベアメタルインスタンス (例: i4i.metal) として起動されます。SDDC Manager と vCenter は、SDDC と vSphere クラスターコンポーネントの管理を担います。これらのコンポーネントは、管理ドメインとも呼ばれる最初の SDDC クラスター内で実行されます。さらに、3 つのクラスター化された NSX Manager が SDDC クラスター内で実行され、一元化されたネットワークポリシーオーケストレーションを可能にします。コントロールプレーンは、オーバーレイトランスポートゾーン、セグメントプロファイル、ゲートウェイファイアウォールルールを設定します。 NSX Edge ノード: 2 つの Edge ノードが最初のクラスターまたは管理ドメイン内の Edge クラスターにデプロイされます。T0 Gateway は各 AWS アベイラビリティーゾーン (AZ) サブネット内の VPC ルートサーバーエンドポイントと eBGP ピアリングを確立し、オーバーレイ CIDR をアドバタイズします。T1 Gateway (テナント/ワークロードごとに 1 つ) はセグメントを接続し、ステートフルサービスを提供します。NSX Edge はレジリエンシーのためにアクティブ-スタンバイ構成です。 VPC ルートサーバーエンドポイントと BGP ピアリング: Amazon EVS は Amazon VPC ルートサーバー をアンダーレイ BGP ネイバーとして使用します。各 T0 Edge は VPC ルートサーバーエンドポイントに接続し、アンダーレイ ENI 上で eBGP セッションを確立します。VPC のデフォルトまたはメインルートテーブルのみが変更されます。Amazon EVS はアウトバウンドトラフィック用に T0 ENI を指す 0.0.0.0/0 を注入し、オーバーレイプレフィックスをインバウンドに伝播します。この設計により、カスタムルートテーブルの拡散が排除され、自動化が合理化されます。 ネットワークアーキテクチャの計画 Amazon EVS の導入を成功させるには、導入前のネットワーク計画が重要です。特に CIDR 割り当て、サブネット分離、DNS 解決に関する計画が必要です。Amazon EVS では、運用の安定性、スケーラビリティ、他の AWS サービスとの統合を提供するための厳格な制約があります。これらの領域での設定ミスは、導入失敗の主要な原因となっています。 CIDR の計画と制約 Amazon EVS では、インフラストラクチャとワークロードのネットワークに専用の重複しない CIDR ブロックが必要です。AWS では、この情報をまとめるためのツールをお客様に提供しています。 このツール は、アカウント、VPC、CIDR、DNS の情報を含むスプレッドシートで、オンボーディング中の計画に使用し、プロビジョニング前の実現可能性を検証します。 VCF では、図 2 に示すように、用途毎 (マネジメント, vSAN, NSX インターフェース, アプライアンスなど) に異なるサブネットを使用します。Amazon EVS では、適切なサブネットデプロイメントを提供するオーケストレーションを提供します。アンダーレイインフラストラクチャには VPC あたり最小 /24 CIDR が必要で、Amazon EVS マネジメントサブネットではお客様のワークロード (踏み台ホストや監視エージェントを含む) を起動することはできません。これらは VCF コンポーネント専用です。 VCF 以外のサブネットは、同じ VPC 内にデプロイして使用できます。Amazon EVS VPC に他のワークロードを追加する際には、 AWS Well-Architected のベストプラクティスを考慮してください。 Amazon EVS のサブネットの最大サイズは /24 です。host-vtep ネットワークはホストあたり 2 つのアドレスを消費するため、/24 では最大 112 台のホストをホストできます。 図 2: オーバーレイネットワーク用の EVS VLAN サブネット オーバーレイセグメント設計と VM ネットワーク: これらはオーバーレイセグメントに階層的に CIDR を割り当てます (例:アプリケーションティアごとに /24)。成長とワークロード数の増加を想定し、ルートテーブルの効率化のために、ルート集約を検討してください。 CIDR が重複しないこと: すべてのオーバーレイ CIDR は以下と重複してはいけません。 VPC プライマリ CIDR オンプレミスネットワーク ( AWS Direct Connect と AWS Transit Gateway 用) 同じ AWS アカウント内の他の Amazon EVS ワークロードドメイン。Amazon EVS は BGP プレフィックスアドバタイズメントを使用し、重複はサイレントトラフィックブラックホールを引き起こします。 NSX ネットワークセグメント内での重複サブネットは、テスト目的のワークロードを隔離するのに良い方法です。 DNS DNS 解決は Amazon EVS のデプロイメント前に設定と検証を行う必要があります。DNS 解決が適切に行われていない場合やタイプミスがある場合、Amazon EVS (VCF) のデプロイメントは失敗します。 Amazon EVS は DNS 解決に Amazon Route 53 Resolver を使用できます。vCenter と NSX Manager アプライアンスには DNS フォワーダーが事前設定されており、Route 53 Resolver インバウンドエンドポイント (VPC にデプロイ) にクエリを送信できます。 Amazon EVS は Microsoft DNS、Infoblox、その他のサードパーティソリューションなど、他の DNS サービスも使用できます。 Amazon EVS の起動前に外部ホストから nslookup や dig -x でテストを行うことで、時間のかかる潜在的にコストの高いデプロイメント失敗を防ぐことができます。 前提条件 この 前提条件チェックリスト を参照して、デプロイメントを成功させるための情報収集と整理を行ってください。これは、前述した スプレッドシート と併用できます。適切な事前計画により、Amazon EVS ネットワークデプロイメントの問題の 90% を解決できます。このチェックリストでは、以下の項目について触れています。 VPC CIDR Amazon EVS (VCF) サブネット Route 53 Resolver エンドツーエンドで検証された正引き / 逆引き DNS 一般的なネットワークパターン このセクションでは、デプロイメントで検討すべき一般的なアーキテクチャについて説明します。 パターン 1: Transit Gateway と AWS Cloud WAN を使用した Amazon EVS VPC から他の VPC およびオンプレミスネットワークへの接続 図 3: Transit Gateway を使用した Amazon EVS VPC から他のネットワークへの接続 図 3 に示すこのパターンは、Amazon EVS オーバーレイセグメントから複数の VPC、オンプレミス/外部ネットワーク、および他の AWS リージョンへの一貫性のあるスケーラブルな接続が必要な場合に使用します。 このパターンでは以下の点が重要です: 本稿の執筆時点 (2026/3) では、VPC ピアリングはサポートされていません。Amazon EVS VPC から他の VPC への接続には Transit Gateway や AWS Cloud WAN が必要です。 Transit VIF を使用した Direct Connect や AWS Site-to-Site VPN は、Amazon EVS アンダーレイ VPC ではなく、Transit Gateway / AWS Cloud WAN で終端する必要があります。Amazon EVS は Private VIF や VGW ベースの Site-to-Site VPN をサポートしていません。 NSX オーバーレイプレフィックスは BGP を通じて VPC ルートサーバーによって学習され、VPC ルートテーブルに伝播されますが、Transit Gateway と AWS Cloud WAN はこれらのルートを自動的にインポートしません。そのため、各 NSX オーバーレイ CIDR 範囲について、Amazon EVS VPC アタッチメントを指す静的ルートを Transit Gateway/AWS Cloud WAN ルートテーブルに追加する必要があります (図 3 参照)。AWS Cloud WAN の場合、これらの静的ルートはコアネットワークポリシーで設定します。 より多くの AWS リージョンに拡張する際は、モダンなポリシー駆動型のグローバルネットワークを提供するAWS Cloud WAN を検討してください。これにより、手動での Transit Gateway ピアリングが不要になり、AWS リージョンと VPC 間の動的ルーティングが可能になります。 パターン 2: AWS PrivateLink を使用した Amazon EVS から AWS および非 AWS サービスへのプライベート接続 図 4: Amazon EVS VPC から AWS および非 AWS サービスへのプライベート接続 NSX オーバーレイセグメント上のワークロードが、インターネットを経由することなく、AWS サービス ( Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) や Amazon DynamoDB など)、お客様が管理するサービス、またはサードパーティ ISV サービスをプライベートに利用する必要があるパターンです。 インターフェースエンドポイント : AWS サービスへの接続には、インターフェース VPC エンドポイントを使用します。インターフェースエンドポイントは、Amazon EVS VPC 内の非 Amazon EVS サブネットに配置するか、 Transit Gateway / AWS Cloud WAN 経由でアクセス可能な別の共有サービス VPC に配置 します。Amazon EVS オーバーレイから T0 を通じてエンドポイントへトラフィックをルーティングします。2026/3 時点では、S3 ゲートウェイエンドポイントは Amazon EVS でサポートされていません。Amazon EVS ワークロードからの Amazon S3 アクセスには、インターフェースエンドポイントを使用する必要があります。 プライベート DNS : VPC DNS 属性を有効にする必要があります。プライベート DNS でインターフェースエンドポイントを使用する場合は、スプリットホライズン DNS シナリオに対して適切な Route 53 Resolver 転送ルールを設定します。 サービスネットワークエンドポイントとリソースエンドポイント : サービス間またはリソース接続でゼロトラストな接続に VPC Lattice を使用したい場合は、サービスネットワークエンドポイントまたはリソースエンドポイントを使用できます。Lattice サービスネットワークエンドポイントとリソースエンドポイントは、T0 を通じて VPC への NSX オーバーレイネットワークからアクセスできます。2026/3 時点では、Lattice サービスネットワーク関連付けは Amazon EVS でサポートされておらず、接続にはエンドポイントの使用が必要です。 ベストプラクティス: Amazon EVS 専用の VPC Amazon EVS VPC は Amazon EVS リソース専用とすることを検討してください。共有サービスやその他の Amazon EVS 以外のワークロードは、Transit Gateway または AWS Cloud WAN を通じて接続された VPC に配置します。このアプローチにより、より明確な障害範囲の境界、より良いコスト配分とチャージバック、コンプライアンスとセキュリティ監査が提供されます。 セキュリティポリシーの適用 Amazon EVS におけるセキュリティには多層防御アプローチが必要で、複数のレイヤーでポリシーを適用します。 NSX Distributed Firewall (DFW) vDefend の DFW は、ハイパーバイザーカーネル内の VM のネットワークインターフェースに直接適用される L2 – L7 ファイアウォール機能を提供します。また、DFW はマイクロセグメンテーションを可能にし、以下のような機能を持っています。 NSX 論理セグメント間の East-West トラフィック制御 タグベースの動的セキュリティグループ vDefend を通じた IDS/IPS 機能や、アプリケーション対応フィルタリングなどのその他のセキュリティ機能 現在の VCF NSX ライセンスオプションについては、Broadcom VMware アカウントチームにご相談ください。 AWS セキュリティコントロール AWS セキュリティグループは Amazon EVS VLAN サブネット上の Amazon EVS ENI には適用されません。ただし、セキュリティグループを使用して、インターフェースエンドポイントや Amazon EVS 以外のサブネット内の他のワークロードへのトラフィックを制御できます。 Amazon EVS VLAN サブネット上でアンダーレイのアクセス制御においては Network ACL (NACL) を使用して、DNS, SSH, オンプレミスへのハイブリッド接続用の Hybrid Cloud Extension (HCX), VPC ルートサーバーピアリング用の BGP などのプロトコルのトラフィックを許可することができます。 以下の用途で、VPC の Ingress / Egress ポイントに AWS Network Firewall またはパートナーファイアウォールソリューション ( Gateway Load Balancer 経由) の導入を検討してください。 North-South トラフィックの検査・制御 Amazon EVS 環境に出入りするトラフィックの IDS/IPS URL フィルタリング, 脅威インテリジェンス, コンプライアンス・監査ログなどのセキュリティ機能 モニタリング VPC Flow logs などの AWS モニタリングサービスは、Amazon EVS ENI のアンダーレイトラフィックのみを確認でき、NSX オーバーレイトラフィックは確認できません。オーバーレイのモニタリングは、Aria operations for Networks、NSX Traceflow などの VMware ツールを使用してください。 考慮事項 NSX トランスポート MTU 設定が Amazon EC2/VPC アンダーレイ機能と一致していることを確認してください。現世代の EC2 インスタンスは最大 9001 バイトのジャンボフレームをサポートし、Transit Gateway は最大 8500 バイト、Direct Connect は Transit VIF で最大 8500 バイトをサポートします。NSX 内の MTU 制限を考慮してください。 NSX Edge T0 ゲートウェイは、サイズが不十分な場合にスループットのボトルネックになる可能性があります。NSX Edge データパスメトリクスを監視し、Edge のサイジングとチューニングに関する VMware のパフォーマンスガイダンスに従ってください。 Amazon EVS では、同一アベイラビリティーゾーン内でのレジリエンシーのために 2 つの VPC ルートサーバーエンドポイントが必要です。2 つの NSX Edge T0 ノードは Active/Standby モードで動作し、各エッジは 1 つの VPC ルートサーバーエンドポイントとピアリングします。 アクティブな T0 エッジがすべての North-South トラフィックを処理します。フェイルオーバー時間を監視し、障害シナリオをテストして、アプリケーションが Edge ノードフェイルオーバーイベントに対応できることを確認してください。 Amazon EVS は IPv4 のみをサポートします。執筆時点 (2026/3) では IPv6 は利用できません。 Amazon EVS は、ピアの生存確認にデフォルトの BGP キープアライブメカニズムをサポートします。Multi-hop Bidirectional Forwarding Detection (BFD) はサポートされていません。 作成時、VLAN サブネットは VPC のメインルートテーブルに暗黙的に関連付けられます。デプロイ後、Amazon EVS VLAN サブネットをカスタムルートテーブルに明示的に関連付けることができます。NSX 接続用にカスタムルートテーブルを作成することをお勧めします。 セキュリティグループは Amazon EVS ENI には適用されません。アンダーレイのアクセス制御には NACL を使用してください。Amazon EVS ワークロードにステートフルなセキュリティポリシーを提供するために、より多くの NSX セキュリティオプションを検討してください。 本稿の情報は、今後の Amazon EVS サービスのアップデートにより変更される可能性があります。 まとめ Amazon Elastic VMware Service (Amazon EVS) は、VMware Cloud Foundation スタックを VPC 内に直接配置し、AWS での VMware テクノロジーの制御と柔軟性を提供します。デプロイメントを成功させるには、事前に十分な計画を立て、適切なルーティングパターンを選択し、適切なレイヤーでセキュリティを実装してください。これらの原則に従うことで、VMware ワークロードを AWS インフラストラクチャ上で実行し、確立されたネットワーク、セキュリティ、運用パターンを適用し、モダナイゼーションとイノベーションのための幅広い AWS サービスを活用することができます。 著者について Victor Babasanmi Victor は AWS のシニアネットワークスペシャリストソリューションアーキテクトです。彼はベストプラクティスを使用したソリューションの計画と構築に関する技術的なガイダンスをお客様に提供し, AWS 環境を運用面で健全に保つことに積極的に取り組んでいます。仕事以外では、サッカーやワークアウト、新しいことに取り組んでいます。 Craig Herring Craig Herring は AWS でシニアスペシャリストソリューションアーキテクトを務めており、インフラストラクチャの移行とモダナイゼーションを専門としています。2021 年に入社して以来、Craig は 35 年にわたる豊富な業界経験を活かして、お客様が AWS ソリューションへの移行とその効果の最大化を支援しています。仕事以外では、Craig は妻の Lindy と 8 人の子供と 3 人の大家族との時間を大切にしています。個人的な興味は友人との交流、ドライブ、アクティブなライフスタイルの維持、オーディオ機器の製作など多岐にわたります。 翻訳はソリューションアーキテクト齋藤が担当しました。原文は こちら です。
本稿は、2025 年 11 月 19 日に AWS Machine Learning Blog で公開された “ Claude Code deployment patterns and best practices with Amazon Bedrock ” を翻訳したものです。 Claude Code は、Anthropic が提供する AI 駆動のコーディングアシスタントで、自然言語による対話を通じて開発者がコードの作成、レビュー、修正を行うのを支援します。 Amazon Bedrock は、主要な AI 企業の基盤モデルに単一の API からアクセスできるフルマネージドサービスです。本記事では、 Claude Code を Amazon Bedrock でデプロイする方法を解説します。認証方式、インフラの選択、モニタリング戦略など、エンタープライズ規模で安全にデプロイするためのノウハウを紹介します。 ほとんどの企業への推奨事項 guidance-for-claude-code-with-amazon-bedrock の利用を推奨します。これは数時間以内にデプロイ可能な実績あるパターンです。 推奨されるスタック構成 認証: AWS IAM フェデレーションを使用した直接の IdP 統合 インフラストラクチャ: 専用 AWS アカウント と Amazon Bedrock のパブリックエンドポイント モニタリング: OpenTelemetry 、 CloudWatch ダッシュボード 、 分析 このアーキテクチャは、ユーザー属性の特定、キャパシティ管理、コストおよび開発者の生産性の可視性を備えた安全なアクセスを提供します。 認証方法 Claude Code のデプロイは、Amazon Bedrock への認証から始まります。認証方法の選択は、セキュリティ、モニタリング、運用、および開発者体験に影響を与えます。 認証方式の比較 機能 Amazon Bedrock API キー      aws login IAM Identity Center による SSO 直接の IdP 統合     セッション期間 無期限 設定可能 (最大12時間) 設定可能 (最大12時間) 設定可能 (最大12時間) セットアップ時間 数分 数分 数時間 数時間 セキュリティリスク 高 低 低 低 ユーザー属性特定 なし 基本的 基本的 完全 MFA サポート なし あり あり あり OpenTelemetry 統合 なし 限定的 限定的 完全 コスト配分 なし 限定的 限定的 完全 運用オーバーヘッド 高 中 中 低 ユースケース 短期テスト テストと限定的なデプロイ 迅速な SSO デプロイ 本番環境デプロイ 以下では、上記の表に示されたトレードオフと実装上の考慮事項について説明します。 Amazon Bedrock API キー Amazon Bedrock は、概念実証(PoC)への最短パスとして API キー をサポートしています。短期(12 時間)および長期(1 日から 1 年、または無期限)の両方のキーを、 AWS Management Console 、 AWS CLI 、または SDK を通じて生成できます。 ただし、API キーは、MFA なしの永続的なアクセス、手動配布の必要性、リポジトリへの誤コミットのリスクなどによりセキュリティの脆弱性を生み出します。コスト配分やモニタリングのためのユーザー特定もできません。Amazon Bedrock の API Key は検証時のご利用を推奨します。 コンソール認証 (aws login) aws login コマンド は、 ブラウザベースの認証フロー を通じてAWS Management Console の認証情報を Amazon Bedrock へのアクセスに使用します。API キーなしで迅速なセットアップをサポートし、テストや小規模なデプロイに推奨されています。 シングルサインオン (IAM Identity Center による SSO) AWS IAM Identity Center は、 OpenID Connect (OIDC)を通じてエンタープライズ ID プロバイダーと統合します。OIDC は、ID プロバイダーがユーザー ID を検証し、アプリケーションと認証情報を共有できるようにする認証プロトコルで、シングルサインオンを可能にします。この統合により、開発者は API キーを配布することなく、企業の認証情報を使用して Amazon Bedrock にアクセスできます。 開発者は aws sso login コマンドを使用して AWS IAM Identity Center で認証を行い、セッション期間を設定可能な一時認証情報を取得します。この認証情報は自動更新されるため、認証情報管理の運用負荷を軽減しつつ、一時的なアクセス権限によってセキュリティを向上させます。 aws sso login --profile=your-profile-name export CLAUDE_CODE_USE_BEDROCK=1 export AWS_PROFILE=your-profile-name AWS アクセスに IAM Identity Center を使用している組織は、このパターンを Claude Code にも拡張できます。ただし、OpenTelemetry の属性抽出のための OIDC JWT トークンを公開していないため、詳細なユーザーレベルのモニタリングは制限されます。 この認証方法は、詳細なモニタリングよりも迅速な SSO デプロイを優先する組織や、包括的なメトリクスがまだ必要とされない初期展開に適しています。 ID プロバイダーとの連携ソリューション ( 直接の IdP 統合 ) 本番環境での Claude Code デプロイメントには、ID プロバイダー(Okta、Azure AD、Auth0、または AWS Cognito User Pools )との直接的な OIDC 連携を推奨します。 guidance-for-claude-code-with-amazon-bedrock というソリューションでは、企業の ID プロバイダーを AWS IAM と直接連携し、モニタリングのためのユーザーコンテキストを含む一時的な認証情報を生成します。 ソリューションの詳細を一部紹介すると、 プロセス認証情報プロバイダー は、認可コードの傍受を防ぐセキュリティ拡張機能である PKCE を利用した OAuth 2.0 のフローをオーケストレーションします。開発者はブラウザで認証を行い、OIDC トークンを AWS の一時的な認証情報と交換します。ヘルパースクリプトは AWS Security Token Service (STS)のの AssumeRoleWithWebIdentity を使用して、Amazon Bedrock を利用するための InvokeModel と InvokeModelWithStreaming の認証情報を持つロールを引き受けます。直接の IAM フェデレーションは最大 12 時間のセッション期間をサポートし、JWT トークンはセッション全体を通じてアクセス可能なままであるため、OpenTelemetry を通じたモニタリングによってメールアドレス、部署、チームなどのユーザー属性を追跡できます。 本ソリューションでは、Cognito Identity Pool と 直接の IAM フェデレーションの両方のパターンを実装していますが、シンプルさの観点から直接の IAM フェデレーションを推奨しています。このソリューションは、OIDC プロバイダーの統合設定、必要な IAM インフラストラクチャのデプロイ、Windows、macOS、Linux 用の配布パッケージをビルドする対話型セットアップウィザードを提供します。 開発者は、認証情報プロセスを使用するように AWS CLI プロファイルを設定するインストールパッケージを受け取ります。認証は企業の認証情報を通じて行われ、認証情報を更新するためにブラウザが自動的に開きます。認証プロセスはトークンのキャッシュ、認証情報の更新、およびエラーリカバリを処理します。 詳細な使用状況のモニタリング、開発者ごとのコスト配分、および包括的な監査証跡を必要とする組織にとって、IAM フェデレーションを通じた直接の IdP 統合は、後述する高度なモニタリング機能の基盤となります。 導入時の検討事項 認証以外にも、アーキテクチャの決定が Claude Code の AWS インフラストラクチャとの統合方法を形成します。これらの選択は、運用の複雑さ、コスト管理、使用ポリシーの実施に影響します。 パブリックエンドポイント Amazon Bedrock は、最小限の運用オーバーヘッドで利用可能な、管理された パブリック API エンドポイント を複数の AWS リージョンで提供しています。インフラ、スケーリング、可用性、セキュリティパッチはAWSが管理します。開発者は AWS CLI プロファイルまたは環境変数を通じて標準的な AWS 認証情報を使用します。直接の IdP 統合による OpenTelemetry メトリクスと組み合わせることで、パブリックエンドポイントを通じて個々の開発者、部門、またはコストセンターごとに使用状況を追跡でき、AWS IAM レベルで制御できます。例えば、開発者ごとのレート制限を実装するには、CloudWatch メトリクスや CloudTrail ログを監視し、自動的にアクションを実行するインフラストラクチャが必要です。カスタムビジネスロジックに基づいてリクエストレベルで即座にブロックする必要がある組織では、LLM(大規模言語モデル)ゲートウェイパターンなどの追加コンポーネントが必要になる場合があります。Amazon Bedrock のパブリックエンドポイントは、シンプルさ、AWS マネージドの信頼性、コストアラート、適切な制御メカニズムのバランスを提供するため、ほとんどの組織にとって十分です。 LLM ゲートウェイ LLM ゲートウェイは、開発者と Amazon Bedrock の間に中間アプリケーション層を導入し、カスタムインフラを通じてリクエストをルーティングします。 Guidance for Multi-Provider Generative AI Gateway on AWS では、このパターンを説明しており、ロードバランシングと一元化された認証情報管理を備えたコンテナ化されたプロキシサービスをデプロイします。 このアーキテクチャは以下の場合に最適です。 マルチプロバイダーサポート :可用性、コスト、または機能に基づいて Amazon Bedrock、OpenAI、Azure OpenAI 間でルーティングする場合 カスタムミドルウェア :リクエストレベルでの独自のプロンプトエンジニアリング、コンテンツフィルタリング、またはプロンプトインジェクション検知を行う場合 リクエストレベルのポリシー適用 :IAM の機能を超えたカスタムビジネスロジックに基づいて、リクエストを即座にブロックする場合 ゲートウェイは統一された API とリアルタイム追跡を提供しますが、運用オーバーヘッドが追加されます。 Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) / Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) インフラストラクチャ、 Elastic Load Balancing (ELB) Application Load Balancer 、 Amazon ElastiCache 、 Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) の管理、レイテンシーの増加、そしてゲートウェイの問題が Claude Code の使用をブロックする新たな障害点が発生します。LLM ゲートウェイは、LLM にプログラム的に呼び出しを行うアプリケーションにおいて、一元的なモニタリング、ユーザーごとの可視性、統一されたアクセス制御を提供するのに優れています。 従来の API アクセスシナリオでは、組織はモニタリングとユーザー帰属の機能を得るためにゲートウェイをデプロイできます。しかし、Claude Code ガイダンスソリューションには、直接の IdP 認証、OpenTelemetry メトリクス、IAM ポリシー、CloudWatch ダッシュボードを通じたモニタリングと属性特定機能が既に含まれています。ガイダンスソリューションに LLM ゲートウェイを追加すると、既存の機能と重複します。マルチプロバイダーサポート、カスタムミドルウェア、または IAM を超えたリクエストレベルのポリシー制御が必要な場合にのみ、ゲートウェイの使用を検討してください。 専用 AWS アカウント実装 コーディングアシスタントの推論は、開発環境や本番環境のワークロードとは別の単一の専用アカウントに集約することを推奨します。このアプローチには 5 つの主要なメリットがあります。 運用の簡素化:  複数のアカウントにわたって追跡する代わりに、統合されたダッシュボードを通じてクォータを管理し、使用状況をモニタリングできます。クォータの引き上げ要求はアカウントごとではなく一度で済みます。 明確なコスト可視性:   AWS Cost Explorer と コストと使用状況レポート は、複雑なタグ付けなしで Claude Code の料金を直接表示します。OpenTelemetry メトリクスにより、部門やチームレベルの配分が可能になります。 一元化されたセキュリティ: CloudTrail ログはモニタリングとコンプライアンスのために一箇所に集約されます。モニタリングスタックを一度デプロイするだけで、開発者からのメトリクスを収集できます。 本番環境の保護: アカウントレベルの分離により、Claude Code の使用がクォータを使い果たし、本番アプリケーションのスロットリングを引き起こすことを防ぎます。また、本番トラフィックの急増が開発者の生産性に影響を与えません。 実装: クロスアカウントでの IAM 設定により、開発者は制限されたロールにフェデレーションする ID プロバイダーを通じて認証を行い、適切なガードレールを備えたモデル呼び出し権限のみを付与されます。 この戦略は、直接の IdP 認証と OpenTelemetry モニタリングと統合されています。ID プロバイダーは認証を処理し、専用アカウントが推論を処理し、開発アカウントはアプリケーションに集中します。 推論プロファイル Amazon Bedrock 推論プロファイル はリソースへのタグ付けを通じてコスト追跡を提供しますが、開発者ごとの粒度にはスケールしません。コスト配分のためのアプリケーションプロファイルを作成できますが、1000 人以上の個々の開発者のプロファイル管理は運用上の負担となります。推論プロファイルは、10 〜 50 程度の個別のチームで隔離されたコスト追跡を必要とする組織や、マネージドに AWS リージョン間でリクエストを分散するクロスリージョン推論を使用する場合に最適です。包括的なモニタリングよりも、基本的なコスト配分を必要とするシナリオに理想的です。 システム定義のクロスリージョン推論プロファイルは、複数の AWS リージョン間でリクエストを自動的にルーティングし、より高いスループットと可用性のために負荷を分散します。クロスリージョンプロファイル(例: us.anthropic.claude-sonnet-4 )を呼び出すと、Amazon Bedrock はリクエストを処理するために利用可能なリージョンを選択します。 アプリケーション推論プロファイルは、アカウントで明示的に作成するプロファイルであり、通常はシステム定義のプロファイルやリージョン内の特定のモデルをラップしたものです。アプリケーションプロファイルには team:data-science や project:fraud-detection といったカスタムキーバリューペアをタグ付けでき、これらはコスト配分分析のために AWS コストと使用状況レポートに反映されます。アプリケーションプロファイルを作成するには、以下のコマンドを実行します。 aws bedrock create-inference-profile \ --inference-profile-name team-data-science \ --model-source arn:aws:bedrock:us-west-2::foundation-model/anthropic.claude-sonnet-4 \ --tags team=data-science costcenter=engineering タグはコストと使用状況レポートに表示されるため、次のようなクエリが可能です。 "What did the data-science team spend on Amazon Bedrock last month?" 各プロファイルは API 呼び出しで明示的に参照する必要があり、開発者の認証情報設定は共有エンドポイントではなく、独自のプロファイルを指定する必要があります。 推論プロファイルの詳細については、 Amazon Bedrock 推論プロファイルのドキュメント をご覧ください。 モニタリング 効果的なモニタリング戦略は、使用状況、コスト、影響を追跡することで、Claude Code を単なる生産性ツールから測定可能な投資へと変革します。 段階的な拡張パス モニタリングのレイヤーは補完的なものです。組織は通常、基本的な可視性から始め、ROI の要件が追加のインフラストラクチャを正当化するにつれて機能を追加していきます。 各レベルと、それがデプロイに適している状況を見ていきましょう。 注意: インフラコストは段階的に増加します。各レベルは前のレイヤーを維持しながら新しいコンポーネントを追加します。 CloudWatch Amazon Bedrock は自動的にメトリクスを Amazon CloudWatch に発行し、呼び出し回数、スロットリングエラー、レイテンシーを追跡します。CloudWatch グラフは、リクエスト総数、平均レイテンシー、クォータ使用率などの集計傾向を最小限のデプロイ作業で表示します。このベースラインモニタリングは CloudWatch の標準料金に含まれています。呼び出しレートが急増したり、エラー率が閾値を超えたり、レイテンシが悪化したりしたときに通知する CloudWatch アラームを作成できます。 呼び出しログ記録 Amazon Bedrock 呼び出しログ記録は、各 API 呼び出しに関する詳細情報を Amazon S3 または CloudWatch Logs にキャプチャし、呼び出しメタデータと完全なリクエスト / レスポンスデータを含む個々のリクエストレコードを保存します。 Amazon Athena でログを処理したり、データウェアハウスにロードしたり、カスタムツールで分析したりできます。ログには使用パターン、モデルごとの呼び出し、ピーク時の利用状況、および Amazon Bedrock アクセスの監査証跡が表示されます。 OpenTelemetry Claude Code は、アプリケーションテレメトリデータを収集するためのオープンソースオブザーバビリティフレームワークである OpenTelemetry をサポート しています。OpenTelemetry コレクターエンドポイントを設定すると、Claude Code は Amazon Bedrock API 呼び出しと、より高レベルの開発アクティビティの両方について、詳細なメトリクスを出力します。 テレメトリは、Amazon Bedrock のデフォルトログに含まれていない詳細なコードレベルのメトリクスをキャプチャします。これには、追加 / 削除されたコード行数、修正されたファイル、使用されたプログラミング言語、Claude の提案に対する開発者の受け入れ率などが含まれます。また、ファイル編集、コード検索、ドキュメントリクエスト、リファクタリングタスクなどの主な操作も追跡します。 ガイダンスソリューション は Amazon ECS Fargate 上に OpenTelemetry インフラストラクチャをデプロイします。Application Load Balancer が HTTP(S) 経由でテレメトリを受信し、OpenTelemetry コレクターにメトリクスを転送します。コレクターは Amazon CloudWatch と Amazon S3 にデータをエクスポートします。 ダッシュボード ガイダンスソリューション には、主要メトリクスを継続的に表示する CloudWatch ダッシュボードが含まれており、時間、日、週ごとのアクティブユーザーを追跡して、ユーザーごとのコスト計算を可能にする採用と使用の傾向を明らかにします。トークン消費は入力、出力、キャッシュされたトークンに分類され、高いキャッシュヒット率は効率的なコンテキスト再利用を示し、ユーザーごとのビューはヘビーユーザーを特定します。コードアクティビティメトリクスは、追加および削除された行を追跡し、トークン使用量と相関させて効率性と使用パターンを示します。 操作の内訳にはファイルの編集、コード検索、ドキュメントリクエストの分布が表示され、ユーザーリーダーボードにはトークン、コード行数、またはセッション時間ごとのトップ消費者が表示されます。 ダッシュボードはほぼリアルタイムで更新され、メトリクスがしきい値を超えたときに通知をトリガーする CloudWatch アラームと統合されています。ガイダンスソリューションは、複雑な集計のためのカスタム Lambda 関数を備えた CloudFormation を通じてデプロイされます。 分析 ダッシュボードはリアルタイムモニタリングに優れていますが、長期的なトレンドと複雑なユーザー行動分析には分析ツールが必要です。 ガイダンスソリューション のオプションの分析スタックは、 Amazon Data Firehose を使用してメトリクスを Amazon S3 にストリーミングします。 AWS Glue Data Catalog がスキーマを定義し、Amazon Athena を通じてデータをクエリ可能にします。 分析レイヤーは、部門別の月間トークン消費量、プログラミング言語ごとのコード受け入れ率、チーム間のトークン効率のばらつきなどのクエリをサポートします。コスト分析は、トークンメトリクスと Amazon Bedrock の価格を結合してユーザーごとの正確なコストを計算し、部門レベルの課金配賦用に集計することで、コスト分析が高度になります。時系列分析は、予算予測のためにチームの成長に伴うコストの拡大を示します。SQL インターフェイスはビジネスインテリジェンスツールと統合でき、スプレッドシート、機械学習モデル、またはプロジェクト管理システムへのエクスポートを可能にします。 例えば、部署ごとの月次コスト分析を確認するには、以下のようなクエリを使用します。 SELECT department, SUM(input_tokens) * 0.003 / 1000 as input_cost, SUM(output_tokens) * 0.015 / 1000 as output_cost, COUNT(DISTINCT user_email) as active_users FROM claude_code_metrics WHERE year = 2024 AND month = 1 GROUP BY department ORDER BY (input_cost + output_cost) DESC; このインフラストラクチャには、追加コストが発生します。Data Firehose はデータ取り込み、S3 はデータ保存、Athena はスキャンデータのクエリごとにそれぞれ課金されます。 履歴分析、複雑なクエリ、またはビジネスインテリジェンスツールとの統合が必要な場合は分析を有効にしてください。小規模な導入や、主にリアルタイム監視に重点を置く組織であればダッシュボードだけで十分な場合もありますが、Claude Code に本格的な投資を行う企業は、分析レイヤーを実装すべきです。これにより、投資対効果 (ROI) を実証し、長期的に利用を最適化するために必要な可視性が得られます。 クォータ ガイダンスソリューションのクォータを利用すると、個々の開発者やチームに使用制限を設定し、組織としてトークン消費を制御・管理できます。クォータを実装する前に、まずはモニタリングを有効にして、通常の使用パターンを理解することを推奨します。使用状況データからは通常、トークン消費量が多いほど生産性が高くなる傾向があり、ヘビーユーザーがそれに見合った価値を提供していることを示唆しています。 クォータシステムは、以下のような形式で制限値を DynamoDB に保存します。 { "userId": "jane@example.com", "monthlyLimit": 1000000, "currentUsage": 750000, "resetDate": "2025-02-01" } CloudWatch Events によってトリガーされる Lambda 関数が 15 分ごとにトークン消費を集計し、DynamoDB を更新するとともに、しきい値を超えた場合に SNS へ通知を発行します。 モニタリング比較 以下の表は、各モニタリング手法におけるトレードオフをまとめたものです。 機能 CloudWatch 呼び出しログ記録 OpenTelemetry ダッシュボードと分析 セットアップの複雑さ なし 低 中 中 ユーザー属性 なし IAM Identity 完全 完全 リアルタイムメトリクス あり なし あり あり コードレベルのメトリクス なし なし あり あり 履歴分析 限定的 あり あり あり コスト配分 アカウントレベル アカウントレベル ユーザー、チーム、部門 ユーザー、チーム、部門 トークン追跡 集計値のみ リクエストごと ユーザーごと トレンドを含むユーザーごと クォータ適用 手動 手動 可能 可能 運用オーバーヘッド 最小 低 中 中 コスト 最小 低 中 中 ユースケース POC 基本的な監査 本番環境 ROI を重視する企業 実装のまとめ このセクションでは、認証方法、組織アーキテクチャ、およびモニタリング戦略を推奨されるデプロイパターンに統合し、デプロイの成熟度に合わせた実装の優先順位についてのガイダンスを提供します。このアーキテクチャは、セキュリティ、運用のシンプルさ、そして包括的な可視性のバランスをとっています。開発者は企業の認証情報で 1 日 1 回認証を行い、管理者はダッシュボードでリアルタイムの使用状況を確認し、セキュリティチームは CloudTrail の監査ログと OpenTelemetry を通じた包括的なユーザー属性付きメトリクスを取得します。 実装パス このガイダンスソリューションは、インタラクティブなセットアッププロセスを通じて迅速なデプロイをサポートしており、数時間以内に認証とモニタリングを稼働させることができます。まずはパイロットグループにフルスタックをデプロイし、実際の使用データを収集してから、検証されたパターンに基づいて拡大してください。 デプロイ – Guidance for Claude Code with Amazon Bedrock リポジトリをクローンし、対話型の poetry run ccwb init ウィザードを実行します。このウィザードは ID プロバイダー、フェデレーションタイプ、AWS リージョン、およびオプションのモニタリングを設定します。CloudFormation スタックをデプロイし(通常 15 〜 30 分)、配布パッケージをビルドして、ユーザーに配布する前にローカルで認証をテストします。 配布 – 異なるチームから 5 〜 20 人の開発者をパイロットグループとして選定します。このグループが認証、モニタリングを検証し、本格展開の計画に必要な使用データを提供します。モニタリングを有効にしている場合、CloudWatch ダッシュボードにアクティビティが即座に表示されます。トークン消費量、コード採用率、操作タイプを監視することで、必要なキャパシティ要件の見積もり、トレーニングニーズの特定、より広範な展開に向けた価値の実証を行うことができます。 拡大 –  Claude Code の検証が完了したら、チームまたは部門単位で採用を拡大します。履歴トレンド分析のために分析スタックを追加(通常 1 〜 2 時間)し、採用率、高パフォーマンスなチーム、およびコスト予測を確認します。 最適化 – 開発リーダーシップとの定期的なレビューサイクルを通じて、監視データを継続的な改善に活用します。監視データは、価値の実証、トレーニングニーズの特定、キャパシティ調整のガイドに役立ちます。 推奨パターンから逸脱する場合 上記のアーキテクチャは多くのエンタープライズ展開に適していますが、特定の状況下では異なるアプローチが正当化される場合があります。 LLM ゲートウェイの検討 – Amazon Bedrock 以外の複数の LLM プロバイダーが必要な場合、プロンプト処理やレスポンスフィルタリング用のカスタムミドルウェアが必要な場合、またはAWS IAM 機能を超えたリクエストレベルのポリシー適用を必要とする規制環境で運用している場合。 推論プロファイルの検討 – 個別のコスト追跡を必要とするチームが 50 未満であり、テレメトリメトリクスよりも AWS ネイティブの請求配分を好む場合。推論プロファイルはプロジェクトベースのコスト配分には適していますが、開発者ごとの追跡にはスケールしません。 モニタリングなしでの開始を検討 – 10 人未満の開発者による期間限定のパイロット運用で、基本的な CloudWatch メトリクスで十分な場合。スケールさせる前にモニタリングを追加することを計画してください。後からの追加には開発者へのパッケージの再配布が必要になるためです。 API キーの検討 – セキュリティリスクが許容される期間を限定したテスト(1 週間未満)の場合のみ。 結論 Amazon Bedrock で Claude Code をエンタープライズ規模でデプロイするには、認証、アーキテクチャ、およびモニタリングについて慎重な判断が必要です。本番環境に対応したデプロイは明確なパターンに従います。直接の IdP 統合により、ユーザー属性が紐づいた安全なアクセスを提供し、専用の AWS アカウントによりキャパシティ管理を簡素化します。そして OpenTelemetry による監視が、コストと開発者の生産性に対する可視性を提供します。 guidance-for-claude-code-with-amazon-bedrock は、これらのパターンをデプロイ可能なソリューションとして実装しています。まずは認証と基本的なモニタリングから始め、スケールに合わせて機能を追加していってください。 AI 駆動の開発ツールが業界標準になるにつれて、デプロイメントにおいてセキュリティ、モニタリング、運用の優秀さを優先する組織は持続的な優位性を得ることになります。このガイドは、企業全体で Claude Code の可能性を最大化するための包括的なフレームワークを提供します。 開始するには、 guidance-for-claude-code-with-amazon-bedrock  リポジトリにアクセスしてください。 著者について Court Schuett :プリンシパル・スペシャリスト・ソリューションアーキテクト – GenAI として、AI コーディングアシスタントを活用して他の人々がそれらを最大限に活用できるよう支援する業務に従事しています。仕事以外では、旅行、音楽鑑賞、木工を楽しんでいます。 Jawhny Cooke :AWSにおける Anthropic の Claude Code のグローバルテックリードであり、エンタープライズがエージェンティックコーディングを大規模に運用するのを支援する専門家です。彼は顧客やパートナーと協力して、自律的コーディングワークフローの設計からマルチエージェントシステムのオーケストレーション、AWS インフラでの運用最適化まで、AI 支援開発の複雑な本番課題を解決しています。彼の仕事は最先端の AI 機能とエンタープライズグレードの信頼性を橋渡しし、組織が本番環境で Claude Code を自信を持って採用できるよう支援しています。 Karan Lakhwani :Amazon Web Services のシニアカスタマーソリューションマネージャーです。生成 AI テクノロジーを専門とし、AWS Golden Jacket 受賞者でもあります。仕事以外では、新しいレストランの開拓やスキーを楽しんでいます。 Gabe Levy :ニューヨークを拠点とする AWS のアソシエイトデリバリーコンサルタントで、主にクラウドでのアプリケーション開発に焦点を当てています。Gabe は人工知能と機械学習の副専門を持っています。AWS の顧客との仕事以外では、運動、読書、家族や友人との時間を楽しんでいます。 Gabriel Velazquez Lopez :AWS の GenAI プロダクトリーダーであり、Anthropic とのパートナーシップで AWS 上 のClaude の戦略、市場投入、製品ローンチを主導しています。 翻訳者について 山澤 良介 :ソリューションアーキテクトとして、業種業態を問わず様々なお客様を支援させて頂いています。前職では主にネットワーク案件を担当していました。好きなサービスは、Amazon Bedrock と AWS Transit Gateway です。休日はスノーボードが大好きなので、シーズン中は毎週スキー場に行っております。
re:Invent 2025 において、AWS の Vice President of Databases である Colin Lazier は、アイデアのスピードで構築することの重要性を強調しました。これは、コンセプトから稼働中のアプリケーションまでの道のりを迅速に進めることを可能にするものです。お客様は既に、本番対応の Amazon DynamoDB テーブルと Amazon Aurora DSQL データベースを数秒で作成できます。Colin は、同じスピードで Amazon Aurora サーバーレス データベースを作成できることを 事前公開 し、その後、お客様からこの機能への迅速なアクセスとスピードを求める声が寄せられました。 2025 年 3 月 25 日、Amazon Aurora PostgreSQL 向けの新しいエクスプレス設定の一般提供の開始をお知らせします。これは、数秒で使用を開始するのに役立つよう設計された事前設定済みのデフォルト設定を備えた、合理化されたデータベース作成エクスペリエンスです。 わずか 2 回クリックするだけで、Aurora PostgreSQL サーバーレスデータベースを使用する準備が数秒で整います。新しい設定では、データベースの作成中および作成後に、特定の設定を柔軟に変更できます。例えば、作成時にサーバーレスインスタンスのキャパシティ範囲を変更したり、リードレプリカを追加したり、データベースが作成された後にパラメータグループを変更したりできます。 エクスプレス設定を備えた Aurora クラスターは、 Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) ネットワークなしで作成され、お気に入りの開発ツールからのセキュアな接続のためのインターネットアクセスゲートウェイを含みます。VPN や AWS Direct Connect は不要です。また、エクスプレス設定では、管理者ユーザーのために AWS Identity and Access Management (IAM) 認証がデフォルトでセットアップされるため、追加設定なしで最初からパスワードレスデータベース認証が有効になります。 作成後、高可用性や自動フェイルオーバー機能のための追加のリードレプリカのデプロイなど、Aurora PostgreSQL サーバーレスで使用可能な機能にアクセスできます。今回のリリースでは、Aurora 向けの新しいインターネットアクセスゲートウェイルーティングレイヤーも導入されました。新しいサーバーレスインスタンスでは、この機能はデフォルトで有効になっています。これにより、幅広い開発ツールから PostgreSQL ワイヤプロトコルを使用して、世界中のどこからでも、アプリケーションがインターネット経由でセキュアに接続できます。このゲートウェイは複数のアベイラビリティゾーンに分散されており、Aurora クラスターと同等の高可用性を提供します。 Aurora の作成と接続が数秒で完了するということは、Aurora の利用を開始する方法は根本的に変わります。弊社は、Aurora を利用したアプリケーションのオンボーディングと実行をサポートするために、連携して動作する複数の機能をリリースしました。Aurora は AWS 無料利用枠 で現在利用可能です。これにより、初期費用なしで Aurora を実際に体験できます。作成後、 AWS CloudShell で Aurora データベースを直接クエリしたり、Aurora 用の新しいインターネットアクセス可能なルーティングコンポーネントを介してプログラミング言語やデベロッパーツールを使用したりできます。 Vercel の v0 などの統合により、自然言語を使用して、Aurora の機能とメリットを活用したアプリケーションの構築を開始できます。 Aurora PostgreSQL サーバーレスデータベースを数秒で作成 利用を開始するには、 Aurora および RDS コンソール にアクセスし、ナビゲーションペインで [ダッシュボード] を選択します。その後、ロケットアイコンの付いた [作成] を選択します。 [エクスプレス設定で作成] ダイアログボックスで、事前構成済みの設定を確認します。必要に応じて、DB クラスター識別子またはキャパシティ範囲を変更できます。 [データベースを作成] を選択します。 また、パラメータ --express-configuration を設定して AWS コマンドラインインターフェイス (AWS CLI) または AWS SDK を使用することで、単一の API コールでクラスターとクラスター内のインスタンスの両方を作成できます。これにより、数秒でクエリを実行できる状態になります。詳細については、「 Creating an Aurora PostgreSQL DB cluster with express configuration 」にアクセスしてください。 クラスターを作成するための CLI コマンドを次に示します: $ aws rds create-db-cluster --db-cluster-identifier channy-express-db \ --engine aurora-postgresql \ –with-express-configuration Aurora PostgreSQL サーバーレスデータベースは数秒で準備完了となります。作成が完了すると成功バナーが表示され、データベースのステータスが [使用可能] に変わります。 データベースの準備が完了したら、 [接続とセキュリティ] タブに移動して、3 つの接続オプションにアクセスします。SDK、API、またはエージェントなどのサードパーティーツール経由で接続する場合は、 [コードスニペット] を選択します。.NET、Golang、JDBC、Node.js、PHP、PSQL、Python、TypeScript など、さまざまなプログラミング言語を選択できます。各ステップのコードをツールに貼り付けてコマンドを実行できます。 例えば、次の Python コードは認証設定を反映するために動的に生成されます: import psycopg2 import boto3 auth_token = boto3.client('rds', region_name='ap-south-1').generate_db_auth_token(DBHostname='channy-express-db-instance-1.abcdef.ap-south-1.rds.amazonaws.com', Port=5432, DBUsername='postgres', Region='ap-south-1') conn = None try: conn = psycopg2.connect( host='channy-express-db-instance-1.abcdef.ap-south-1.rds.amazonaws.com', port=5432, database='postgres', user='postgres', password=auth_token, sslmode='require' ) cur = conn.cursor() cur.execute('SELECT version();') print(cur.fetchone()[0]) cur.close() except Exception as e: print(f"Database error: {e}") raise finally: if conn: conn.close() const { Client } = require('pg'); const AWS = require('aws-sdk'); AWS.config.update({ region: 'ap-south-1' }); async function main() { let password = ''; const signer = new AWS.RDS.Signer({ region: 'ap-south-1', hostname: 'channy-express-db-instance-1.abcdef.ap-south-1.rds.amazonaws.com', port: 5432, username: 'postgres' }); password = signer.getAuthToken({}); const client = new Client({ host: 'channy-express-db-instance-1.abcdef.ap-south-1.rds.amazonaws.com', port: 5432, database: 'postgres', user: 'postgres', password, ssl: { rejectUnauthorized: false } }); try { await client.connect(); const res = await client.query('SELECT version()'); console.log(res.rows[0].version); } catch (error) { console.error('Database error:', error); throw error; } finally { await client.end(); } } main().catch(console.error); コンソールから直接起動する AWS CLI に迅速にアクセスするには、 [CloudShell] を選択します。[ CloudShell を起動] を選択すると、特定のクラスターに接続するための関連情報がコマンドに事前に入力されていることが確認できます。シェルに接続すると、SQL コマンドを実行するための psql login と postgres => prompt が表示されます。 pgAdmin など、ユーザー名とパスワードの認証情報のみをサポートするツールを使用する場合は、 [エンドポイント] を選択することもできます。 [トークンを取得] を選択すると、ユーティリティによって生成された AWS Identity and Access Management (IAM) 認証トークンがパスワードフィールドに使用されます。このトークンは、データベースの作成時にセットアップするマスターユーザー名について生成されます。トークンは 1 回につき 15 分間有効です。使用しているツールが接続を終了した場合、トークンを再生成する必要があります。 Aurora データベースを利用してアプリケーションをより迅速に構築 re:Invent 2025 では、 AWS 無料利用枠プログラムの強化を発表し 、AWS サービス全体で使用できる最大 200 USD 相当の AWS クレジットを提供しました。サインアップ時に 100 USD 相当の AWS クレジットが付与され、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)、AWS Lambda、Amazon Bedrock などのサービスを利用することで、さらに 100 USD 相当のクレジットを獲得できます。さらに、Amazon Aurora は、対象となる一連の幅広い 無料利用枠データベースサービス でご利用いただけるようになりました。 デベロッパーは、自然言語だけで本番対応のアプリケーションを構築できる Vercel などのプラットフォームを採用しています。弊社は、 Vercel Marketplace との統合を発表しました 。これにより、Vercel から AWS データベースを数秒で直接作成して接続できるようになります。また、AI を利用したツールである Vercel の v0 との統合も発表しました。v0 は、数分でアイデアを本番対応のフルスタックウェブアプリケーションに変換します。これには、Aurora PostgreSQL、Aurora DSQL、DynamoDB データベースが含まれています。また、Vercel を利用してエクスプレス設定を通じて作成した既存のデータベースも接続できます。詳細については、「 AWS for Vercel 」にアクセスしてください。 Vercel と同様に、当社はデータベースをそれらのエクスペリエンスとシームレスに統合し、広く普及しているフレームワーク、AI アシスタントコーディングツール、環境、デベロッパーツールと直接統合して、アイデアのスピードで開発を進めることを可能にしています。 さらに、 Kiro powers との Aurora PostgreSQL 統合 も導入しました。デベロッパーはこれを利用して、 Kiro を通じた AI エージェント支援開発を活用することで、Aurora PostgreSQL を利用するアプリケーションをより迅速に構築できます。Aurora PostgreSQL 向けの Kiro power は、 Kiro IDE 内で、または Kiro powers のウェブページ から、ワンクリックでインストールして使用できます。この Kiro Power の詳細については、「 Introducing Amazon Aurora powers for Kiro 」および「 Amazon Aurora Postgres MCP Server 」をお読みください。 今すぐご利用いただけます Aurora PostgreSQL サーバーレスデータベースは、すべての AWS 商用リージョンで数秒で今すぐ作成できます。リージョンごとの利用可否と今後のロードマップについては、「 AWS Capabilities by Region 」にアクセスしてください。 お支払いいただくのは、Aurora Capacity Units (ACU) に基づいて消費したキャパシティについての料金のみであり、キャパシティがゼロの状態から秒単位で課金されます。アプリケーションのニーズに基づいて、キャパシティが自動的に起動、シャットダウン、スケールアップ、スケールダウンされます。詳細については、 Amazon Aurora の料金ページ にアクセスしてください。 Aurora および RDS コンソール でお試しいただき、 AWS re:Post for Aurora PostgreSQL に、または通常の AWS サポート担当者を通じて、フィードバックをお寄せください。 – Channy 原文は こちら です。
インシデント発生時の根本原因分析は、クラウドアプリケーション運用において最も時間がかかり、ストレスの大きい作業の一つです。エンジニアは複数のサービスにまたがるテレメトリデータを迅速に相関づけ、デプロイ履歴を確認し、複雑なアプリケーションの依存関係を把握しなければなりません。しかもそのすべてを、サービス復旧というプレッシャーの中で行う必要があります。AWS DevOps Agent は、運用チームに自律的な調査能力をもたらすことでこのパラダイムを変革し、平均復旧時間 (MTTR) を数時間から数分に短縮します。 ただし、AWS DevOps Agent の効果は、リソースアクセスの境界を制御する Agent Space の設定に大きく左右されます。Agent Space の範囲が狭すぎると、調査中に重要なコンテキストを見逃してしまいます。逆に広すぎると、パフォーマンスのオーバーヘッドや複雑さが増大します。本記事では、調査能力と運用効率のバランスを取る Agent Space のセットアップに関するベストプラクティスを、早期に導入いただいたお客様のオンボーディングや社内チームでの DevOps Agent 活用経験をもとに紹介します。 本記事を読み終えると、最適な調査精度を実現するための Agent Space の構成方法、適切なリソースアクセス範囲の決定方法、そして Infrastructure as Code (IaC) を活用したデプロイの効率化について理解できるようになります。まずは、これらすべてを可能にする基本概念である Agent Space そのものについて理解しましょう。 Agent Space とは何か、なぜ重要なのか Agent Space は、AWS DevOps Agent がアクセスおよび調査できる範囲を定義する論理的なコンテナです。エージェントの運用範囲と考えてください。どのクラウドアカウントをエージェントがクエリできるか、どのサードパーティ統合が利用可能か、誰が調査に関与できるかを決定します。 Agent Space が重要なのは、AWS DevOps Agent が正確な根本原因分析を行うために十分なコンテキストを必要とするからです。 インシデントが発生すると、エージェントは以下の処理を実行します。 アカウント全体のリソースとその関係性を学習します。 ログ、メトリクス、トレースからテレメトリデータを相関分析します。 デプロイや設定変更を含む最近の変更をレビューします。 追加のデータソースにクエリを行い、仮説を生成・検証します。 図1: Agent Space トポロジー Agent Space に重要なアカウントや統合へのアクセスが含まれていない場合、エージェントは根本原因を完全に見逃す可能性があります。逆に、Agent Space が広すぎる場合、調査中にエージェントがより多くのリソースの組み合わせを考慮するため、パフォーマンス上の課題が生じます。 スコープとパフォーマンスのトレードオフを理解することが不可欠です。問いはこうなります。“自組織の運用モデルに適した境界をどのように決めれば良いのでしょうか?“ パート1:Agent Space アーキテクチャの設計 Agent Space の境界は、オンコールの責任範囲と同じように考えることを推奨します。アプリケーションに関連するアカウントへのアクセスを付与しつつ、本番環境と非本番環境は分離します。 このアプローチには以下のメリットがあります。 理解しやすい考え方: 運用チームはすでにオンコールの境界を理解しています。 適切な調査スコープ: 人間のエンジニアがインシデントを調査する方法を反映しています。 Two-way door (可逆的) な決定: 必要に応じて Agent Space のスコープを拡大・縮小できます。 パフォーマンスのバランス: エージェントに過剰な情報を与えることなく、十分なコンテキストを提供します。 Agent Space の境界を決定する まず、アプリケーションアーキテクチャを Agent Space の境界にマッピングし、以下の質問を検討します。 何をもって 1 つの論理的なアプリケーションと見なすか? チームが複数の独立したアプリケーションを所有している場合は、別々の Agent Space を作成します。ただし、アプリケーションが密結合(例:相互依存するマイクロサービス)で、単一のリゾルバーグループ(オンコール担当グループ)にマッピングされる場合は、グループごとに1つの Agent Space を検討します。 複数のアカウントにまたがるモノリスの場合は、クロスアカウントアクセスを持つ1つの Agent Space が適切です。 オンコールローテーションはどのように編成されているか? 本番と非本番で別々のチームがある場合は、別々の Agent Space を推奨します。 1つのチームがすべての環境を担当する場合は、アプリケーションごとに1つの Agent Space で対応できます。 調査パターンはどうなっているか? 本番インシデントで他のアカウントの依存サービスへのクエリが必要な場合は、それらのアカウントを含めます。 環境が完全に分離されている場合は、Agent Space も分離します。 決定ツリーの例: アプリケーション:Eコマースプラットフォーム ├── 本番環境 │ ├── アカウント 111111111111(フロントエンド) │ ├── アカウント 222222222222(API Gateway + Lambda) │ └── アカウント 333333333333(RDS + DynamoDB) ├── ステージング環境 │ └── アカウント 444444444444(全リソース) └── 開発環境 └── アカウント 555555555555(全リソース) 推奨 Agent Space: → "EcommerceProd"(アカウント 111111111111, 222222222222, 333333333333) → "EcommerceNonProd"(アカウント 444444444444, 555555555555) 図2. Agent Spaceの境界はオンコールチームの責任範囲を反映する 一般的な Agent Space パターンと判断ポイント 基本的な単一アプリケーションパターン以外にも、慎重な検討が必要なより複雑なシナリオがあります。以下は、お客様が実際に採用して成功しているパターンです。 パターン1: 複数チームにまたがる調査 大規模な組織で複数のチーム(例:100以上の本番アカウントを管理する3チーム)がある場合、チームAのインフラストラクチャで問題が発生しても、根本原因がチームBのサービスにあるという状況が発生します。問題は、Agent Space 間のコラボレーションをどのように実現するかです。 推奨アプローチ: 共有リソースアカウント(依存先など)への読み取り専用アクセスを含むアプリケーション固有の Agent Space を作成します。明確なオンコールエスカレーション手順を確立し ランブック として追加します。これは根本原因がチームにまたがる場合、効率的なコミュニケーション(例: Slack )に有用です。共有サービスチームのリソースには、どのアプリケーションが使用しているかを識別するタグ(例: app-id: ecommerce-frontend )を設定します。一貫したタグ付け戦略に従うことで、明確なリソース所有権を維持しながら、共有リソースの調査コンテキストを提供できます。 パターン2: 共有サービスとネットワークオペレーションセンター (NOC) チーム 一部の組織には、組織全体の複数のアプリケーションで使用される共有インフラストラクチャサービス(データベース、ネットワーク、モニタリング、セキュリティ)を提供・サポートする集中型チームがあります。これらの NOC や中央運用チームは、すべてのアプリケーションの Agent Space にアクセスすることなく、自分たちのサービスへの可視性を必要とします。 推奨アプローチ: 共有サービスチーム専用の Agent Space を作成し、チームのインフラストラクチャと運用責任をスコープに設定します: 共有データベース、ネットワークインフラストラクチャ、集中ログ、モニタリングシステムを含む AWS アカウントを含めます。 チームがサポートする特定のリソースへの読み取り専用アクセスを提供する IAM ロールを設定します。 共有サービス固有のランブックと運用手順を含めます。 これは、アプリケーション固有の Agent Space と同じ原則に従います。Agent Space がスコープとして複数のアプリケーションにまたがる場合でも、オンコールチームごとに1つの Agent Space です。 パターン3: 多数のアプリケーションを管理する中央運用チーム 共有サービスチームが特定のインフラストラクチャドメインを管理する一方で、SRE チームはさらに大きな課題に直面することがあります。エンタープライズ規模で数百から数千のアプリケーションに対する運用責任です。運用ツールを担当する中央運用チームは、Infrastructure as Code を使用して Agent Space を大規模に効率的に管理できます。 推奨アプローチ: 出発点として、AWS CDK または Terraform のサンプルを使用します。これらのサンプルにより、チームは以下が可能になります。 組織で必要な IAM ロール、統合、リソース境界を含む標準化された Agent Space テンプレートを定義できます。 アプリケーションオンボーディングワークフローの一部として Agent Space をプログラムでデプロイできます。 AWS Config ルールやサービスコントロールポリシーを通じてコンプライアンスを強制できます。 統合された請求とタグ付け(application-id、team、cost-center、environment)を通じてすべての Agent Space を追跡できます。 中央運用チームがテンプレートとガバナンスポリシーを管理し、アプリケーションチームはそのガードレール内で運用します。このアプローチは、一貫した設定と自動デプロイにより、数千のアプリケーションにスケールします。AWS DevOps Agent は、 AWS アカウント内のエージェントアクセスの制限 と、チームが大規模に Agent Space アクセスを管理するためのオペレーターコンソールへの アクセス制御 を可能にします。 図3: Infrastructure as Code を使用したエンタープライズスケールパターン Agent Space の境界をチーム構造とスケール要件に合わせて設計する方法を理解したところで、これらのアーキテクチャパターンを実現するための実践的な実装手順を見ていきましょう。 パート2: Agent Space アーキテクチャの実装 このセクションでは、最初の Agent Space を作成するための実践的な手順を説明します。前提条件の確認、アカウント間の IAM ロール設定、オブザーバビリティツールの統合、アクセス制御の設定、そして調査に必要なコンテキストが確保されていることを確認するためのテストまでを網羅します。 ステップ1: Agent Space の前提条件 最初の Agent Space をセットアップする前に、以下を確認してください。 AWS アカウント: アプリケーションリソースが稼働する AWS アカウントが少なくとも1つ必要です。 IAM 権限: アカウント間で IAM ロールとポリシーを作成するための十分なアクセス権。AWS DevOps Agent には2つの異なる IAM 権限セットが必要です。 Agent Space ロール権限: AWS DevOps Agent が AWS リソースのクエリ、CloudWatch Logs へのアクセス、トポロジーの検出のために引き受ける IAM ロール。このロールには AIOpsAssistantPolicy マネージドポリシーに加え、AWS Support と拡張機能のための追加権限が必要です。完全なロール設定については CLI オンボーディングガイド を参照してください。 オペレーターアプリロール権限: 人間のオペレーターが AWS DevOps Agent Web アプリケーションで実行できる操作(調査の開始、結果の表示、AWS Support ケースの作成など)を制御する IAM ロール。このロールはエージェントの調査権限とは別です。 サービスコントロールポリシー (SCP): 組織の SCP が AWS DevOps Agent の API アクションを許可していることを確認してください。よくあるトラブルとして、チームが Agent Space のセットアップを完了しても、SCP が aidevops:* アクションや bedrock:InvokeModel アクションをブロックしているために調査が失敗するケースがあります。AWS Organization の SCP を確認し、必要に応じて DevOps Agent の例外を追加してください。なお、DevOps Agent と Amazon Bedrock の推論は、お客様のコンテンツを特定の AWS リージョンに制限するポリシーの影響を受けません。Bedrock は米国東部(バージニア北部)以外の米国リージョンをステートレス推論に使用する場合があります。 オブザーバビリティツール: 最低限、Amazon CloudWatch (IAM ロールが適切に設定されていれば自動的に利用可能) と Amazon CloudTrail を利用します。包括的な調査のためには、Datadog、Dynatrace、New Relic、Grafana、Splunk などのアプリケーションパフォーマンスモニタリングツールを統合してください。サポートされている統合については テレメトリソースの接続 を参照してください。 サードパーティ統合設定の理解: 一部のサードパーティツールには2段階の設定プロセスが必要です。 アカウントレベルの登録 : OAuth を使用するツール(GitHub、Dynatrace など)は、まず DevOps Agent コンソールを通じて AWS アカウントレベルで登録する必要があります。これにより、アカウント内のすべての Agent Space で共有される OAuth 認証情報が確立されます。 Agent Space レベルの関連付け: 登録後、各 Agent Space はそのツールから使用するリソースを個別に指定します。例えば、GitHub を一度登録した後、Agent Space「EcommerceProd」には本番リポジトリのみを関連付ける一方、Agent Space「EcommerceNonProd」には開発リポジトリを関連付ける、ということが可能です。Datadog、New Relic、Splunk などの他のツールは、API キーやトークンを使用して、別途アカウントレベルの登録なしに Agent Space に直接関連付けることができます。CloudWatch は IAM ロール以外の追加設定は不要です。 ソースコントロール: コードコンテキストとデプロイの相関分析のための GitHub または GitLab リポジトリアクセスを推奨します (オプションだが強く推奨)。 IaC ツール: Agent Space デプロイ用の AWS CDK(TypeScript/Python)、Terraform、AWS CLI、または AWS マネジメントコンソール。 前提条件の確認が完了したら、Agent Space を作成し、調査を可能にする IAM 信頼関係を確立する準備が整います。 ステップ2: Agent Space の作成 AWS DevOps Agent は、Agent Space の境界内にある各 AWS アカウントに IAM ロールを必要とします。エージェントはこれらのロールを引き受けて、CloudWatch Logs のクエリ、リソース情報の取得、アプリケーショントポロジーの構築を行います。 AWS DevOps Agent は、設定された Agent Space 内でアクセスを許可したすべての AWS アカウントの複数の AWS リージョンから運用データを取得するように設計されており、地理的なデプロイ場所に関係なく、分散インフラストラクチャとアプリケーションへの包括的な可視性を実現します。複数アカウントのサポートは、セカンダリアカウントで適切な信頼ポリシーと権限を持つ IAM ロールを作成する設定プロセスを通じて行われます。 オプション A: AWS コンソールウィザードを使用する AWS DevOps Agent コンソール に移動し、「Agent Space の作成」を選択して、ガイド付きセットアップに従い、各ターゲットアカウントに IAM ロールを作成します。 図4: コンソールでの Agent Space の作成 セットアップウィザードは、クロスアカウント信頼関係の設定を支援します。 図5: Agent Space の複数アカウント設定 オプション B: Infrastructure as Code を使用する(推奨) Agent Space の作成と複数アカウントへの IAM ロールのデプロイを自動化する CDK および Terraform のサンプルテンプレートを提供しています。 AWS CDK の例(TypeScript): // 多数のアカウントがある場合はループを使用: const accounts = [ { id: '111111111111', name: 'Prod', role: prodRole, stage: 'prod' }, { id: '222222222222', name: 'Dev', role: devRole, stage: 'dev' }, { id: '333333333333', name: 'Test', role: testRole, stage: 'test' }, ]; accounts.forEach(account => { const association = new devopsagent.CfnAssociation(this, `${account.name}Association`, { agentSpaceId: agentSpace.ref, serviceId: 'aws', configuration: { aws: { assumableRoleArn: account.role.roleArn, accountId: account.id, accountType: 'monitor' } } }); association.addDependency(agentSpace); cdk.Tags.of(association).add('stage', account.stage); }); アカウント間の IAM ロールと権限の設定に関する詳細な手順については、 CLI オンボーディングガイド を参照してください。 Agent Space が作成され、AWS アカウントへのアクセスが確保されたら、次の重要なステップはAWS ネイティブサービス以外の調査コンテキストを提供するオブザーバビリティツールと開発ツールとの接続です。 ステップ3:統合の設定 AWS DevOps Agent は、複数のソースからのデータを相関分析してインシデントを調査します。利用可能なコンテキストが多いほど、根本原因分析の精度が向上します。 推奨される統合 (優先度順) Amazon CloudWatch: AWS サービスからのログ、メトリクス、トレースを提供します。エージェントは調査中に CloudWatch Logs Insights を自動的にクエリします。IAM ロールが適切に設定されていれば、追加の設定は不要です。 オブザーバビリティツール: Datadog、Dynatrace、New Relic、Splunk は、分散トレーシング、ログ、メトリクス、アプリケーションレベルのコンテキストを提供します。AWS コンソールの Agent Space 統合から設定します。 コードリポジトリ: GitHub または GitLab の統合により、エージェントは最近のデプロイとコード変更をレビューできます。OAuth またはパーソナルアクセストークンが必要です。 CI/CD パイプライン: GitHub Actions または GitLab ワークフローにより、エージェントはインシデントとデプロイのタイミングを相関分析できます。コードリポジトリ統合と併せて設定します。 コミュニケーションチャネル: Slack と ServiceNow の統合により、DevOps Agent はチームチャネルにリアルタイムの調査アップデートを投稿し、調査ライフサイクル全体を通じて、調査結果、根本原因分析、推奨される緩和策でインシデントチケットを自動的に更新できます。 高度な統合 組み込みの統合に加えて、AWS DevOps Agent は Webhook トリガーによる調査とカスタム MCP (Model Context Protocol) サーバーをサポートしており、独自のオブザーバビリティツールを持ち込むことができます。 調査トリガーのための Webhook 設定 Webhook により、外部システム (Grafana、Prometheus、PagerDuty、カスタムモニタリングツール) がインシデント発生時に DevOps Agent の調査を自動的にトリガーできます。各 Agent Space は、インシデントを記述する JSON ペイロードを受け付ける一意の Webhook URL を受け取ります。 よくある設定の落とし穴: Webhook 認証: Webhook はセキュリティのために HMAC 署名を使用します。Webhook シークレットは AWS Secrets Manager に保存し、セキュリティポリシーに従ってローテーションしてください。 ペイロード形式: モニタリングツールがタイムスタンプ、影響を受けるリソース、症状の説明を含むインシデントコンテキストを送信するようにしてください。より豊富なコンテキストにより、より正確な調査が可能になります。 Webhook の詳細なセットアップについては、 Webhook を通じた DevOps Agent の呼び出し を参照してください。 独自の MCP サーバーの持ち込み 組み込みの統合以外のオブザーバビリティツール (Grafana、Prometheus、カスタムテレメトリシステム) を使用している場合、MCP サーバーを介して接続できます。MCP サーバーは、DevOps Agent が調査中にクエリする標準化されたプロトコルを通じてツールのデータを公開します。 MCP サーバーの主な要件: パブリックにアクセス可能な HTTPS エンドポイント: MCP サーバーはパブリックインターネットから到達可能である必要があります。VPC でホストされたサーバーは現在サポートされていません。 読み取り専用ツールのみ: セキュリティのため、読み取り操作を実行する MCP ツールのみを公開してください。書き込み操作はプロンプトインジェクションのリスクをもたらします。 ツールの許可リスト: MCP サーバーをアカウントレベルで登録し、Agent Space ごとに特定のツールを選択的に有効にします。すべてのツールへのアクセスを付与せず、調査に関連するもののみを選択してください。 よくある MCP セットアップエラー: 認証の設定ミス: MCP サーバーは OAuth 2.0 または API キー認証をサポートしています。OAuth クライアント認証情報が正しいこと、およびトークン交換 URL が AWS インフラストラクチャからアクセス可能であることを確認してください。 ツール名の長さ: MCP ツール名の最大長は64文字です。それより長い名前は登録に失敗します。 エンドポイント URL の形式: パスを含む完全な HTTPS URL を使用してください。例: https://mcp.example.com/v1/mcp(mcp.example.com だけではありません)。 認証設定を含む包括的な MCP サーバーセットアップについては、 MCP サーバーの接続 を参照してください。 統合のテスト: Webhook または MCP サーバーを設定した後、テスト調査をトリガーして接続性を確認します。 Webhook の場合: モニタリングツールからテストペイロードを送信し、DevOps Agent Web アプリで調査が開始されることを確認します。 MCP サーバーの場合: 手動で調査を開始し、エージェントジャーナル (調査記録)を確認して MCP ツールが正常に呼び出されたことを確認します。 AWS CloudTrail ログでエラーを確認します。CloudTrail は統合の試行を含むすべての DevOps Agent API コールをキャプチャします。 データソースが接続されたら、セキュリティ境界を維持しながら、適切な人が調査に適切にアクセスできるようにする必要があります。 ステップ4: アクセス制御の設定 Agent Space は、認可されたチームメンバーのみが調査に関与できるよう、きめ細かなアクセス制御をサポートしています。 アクセス制御の検討事項: 誰が調査を閲覧すべきか? 通常はオンコールエンジニア、SRE、DevOps エンジニアです。セキュリティ関連のインシデントにはセキュリティチームの参加も検討してください。 誰が AWS Support ケースを作成すべきか? 通常はオンコールリードとシニアエンジニアです。過度なケース作成を防ぐため、この権限は制限してください。 誰が Agent Space の設定を変更すべきか? 通常は中央運用チームまたはインフラストラクチャチームです。日常の調査アクセスとは分離してください。 IAM ベースのアクセス制御: AWS DevOps Agent は、Agent Space へのアクセスを制御するために IAM ポリシーを使用します。IAM ユーザー、グループ、またはロールにポリシーをアタッチします。 { "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Effect": "Allow", "Action": [ "devopsagent:GetAgentSpace", "devopsagent:StartInvestigation", "devopsagent:GetInvestigation", "devopsagent:ListInvestigations" ], "Resource": "arn:aws:devopsagent:us-east-1:123456789012:agentspace/EcommerceProd" } ] } AWS DevOps Agent は、複数のアカウントにまたがる運用データへの特権アクセスを持つ AWS 環境内で動作します。一般的なセキュリティの基盤は適用されますが、Agent Space の設定には固有の考慮事項があります。包括的なセキュリティガイダンスについては、 AWS DevOps Agent セキュリティ のドキュメントを参照してください。 アクセス制御が整ったら、Agent Space の設定が必要な調査カバレッジを提供していることを検証する時です。 ステップ5: テストと反復 Agent Space の設定は後から変更可能です。焦点を絞ったスコープから始め、調査結果に基づいて拡大します。 Agent Space のテスト AWS DevOps Agent Web アプリを使用してテスト調査をトリガーします。 調査を開始し、「/api/checkout エンドポイントの高レイテンシー」などの症状を提供します。 エージェントがどのリソースにクエリするかを観察します。 調査の完全性をレビューします。エージェントは根本原因を特定できましたか? 調査から欠落しているアカウントやサービスはありませんでしたか? エージェントは十分なテレメトリデータを持っていましたか? 結果に基づいて Agent Space の境界を調整します。 調査にコンテキストが不足している場合はアカウントを追加します。 テレメトリのギャップがある場合は統合を追加します。 パフォーマンスが低下する場合はスコープを縮小します。 まとめ AWS DevOps Agent は、インシデント対応を手動で時間のかかるプロセスから、自律的でデータ駆動型の調査へと変革します。ただし、エージェントの効果は適切な Agent Space の設定に依存します。オンコールベースのアプローチ(本番環境と非本番環境を分離しつつ、アプリケーションに関連するアカウントへのアクセスを付与する)に従うことで、不必要な複雑さを導入することなく、正確な根本原因分析のための十分なコンテキストを提供できます。 主なポイント オンコールの境界で考える: Agent Space のスコープは、チームがインシデントを調査する方法を反映すべきです。 Infrastructure as Code を使用する: CDK と Terraform のテンプレートにより、一貫性のある再現可能なデプロイを実現できます。 オブザーバビリティツールを統合する: データソースが多いほど、調査の精度が向上します。 結果に基づいて反復する: 調査パターンの出現に応じて Agent Space のスコープを拡大・縮小してください。 次のステップ 最初の Agent Space を作成しましょう。 AWS DevOps Agent の導入をより容易にし、お客様の問題解決の精度を向上させることに取り組んでいます。Agent Space のセットアップは、迅速で信頼性の高いインシデント解決を実現するための基盤です。ご質問やフィードバックがあれば、以下にコメントをお寄せください。 著者 Tipu Qureshi Tipu Qureshi は AWS Agentic AI のシニアプリンシパルテクノロジストで、運用の卓越性とインシデント対応の自動化に注力しています。AWS のお客様と協力して、回復力があり観測可能なクラウドアプリケーションと自律的な運用システムを設計しています。 Bill Fine Bill Fine は AWS の Agentic AI プロダクトマネジメントリーダーで、AWS DevOps Agent の製品戦略と顧客エンゲージメントをリードしています。 Greg Eppel Greg Eppel は DevOps Agent のプリンシパルスペシャリストで、過去数年間クラウドオペレーションに注力し、AWS のお客様のクラウドジャーニーを支援しています。 本記事は、 Best Practices for Deploying AWS DevOps Agent in Production を翻訳したものです。翻訳は Technical Account Manager の 日平 が担当しました。
本投稿は、 Sagar Desarda と Yutaka Okaによる記事 「 Amazon CloudFront now supports mTLS authentication to origins 」を翻訳したものです。  Amazon CloudFront  は相互TLS(mTLS)機能をカスタマーオリジンに拡張しました。これにより、ビューワーからカスタマーオリジンまでの接続パス全体を通じた、真のエンドツーエンド認証が可能になります。CloudFront はこれまで、ビューワーと CloudFront 間のビューワー mTLS をサポートしており、トラフィックが境界に入る前にクライアントを強力に認証することができました。今回のリリースにより、同じトラフィックが CloudFront からオリジンへも mTLS 経由で継続できるようになり、すべてのホップにわたって暗号化されたアイデンティティと信頼が維持されます。その結果、完全に認証されたリクエストパスが実現し、暗黙の信頼を排除し、エッジでのパフォーマンスを犠牲にすることなくゼロトラストの多層防御アーキテクチャを実現します。 CloudFront とオリジン間の mTLS が重要な理由 エッジからオリジンへ mTLS を拡張することで、リクエストライフサイクル全体にわたって、信頼を境界ベースからアイデンティティベースへと移行させます。お客様はビューワー mTLS とオリジン mTLS を CloudFront で有効にすることで、各層の間の暗黙の信頼を排除し、オリジンで最小権限アクセスを強制できます。これは規制対象および高リスクのワークロードにおいて重要です。そのような環境では、オリジンへのアクセスは検証なしに信頼するのではなく、明示的に認証され、監査可能でなければなりません。ビューワー mTLS で導入された多くの業界固有のメリットが、エンドツーエンドで適用されるようになりました。これには、API の強力なクライアントアイデンティティ、デバイス認証、規制コンプライアンスが含まれ、エンドユーザーから CloudFront を経由してオリジンまでの相互認証によって実現されます。これらのユースケースの業界別の詳細については、ビューワー mTLS に関する以前の ブログ記事 を参照してください。この記事は、エンドツーエンド mTLS がゼロトラスト原則をエッジの先にどのように拡張するかを理解するための前提知識となります。 mTLS の仕組み 標準的な TLS では、証明書管理は一方向です。サーバーが証明書を提示し、クライアントが信頼された認証局(CA)に対してそれを検証する一方、クライアントはトランスポート層では認証されません。運用上、これにより証明書管理はシンプルに保たれます。チームはサーバーの証明書のみをプロビジョニング、ローテーション、監視し、多くの場合、自動化ツールと公的に信頼された CA を使用します。クライアントのアイデンティティが必要な場合は、API キー、OAuth トークン、ヘッダーなどのアプリケーション層のメカニズムに委ねられます。 mTLS はこのモデルを根本的に変更し、双方向認証を導入します。クライアントとサーバーの両方が有効な証明書を提示し、信頼された CA に対してそれらを検証する必要があります。そのため、証明書管理は、小規模で明確に定義されたサーバー証明書のセットの管理から、大規模になりうるクライアント証明書群の管理へと拡大します。これにより、新たな運用上の考慮事項が生じます:証明書の発行と失効、ライフサイクルの自動化、CA 信頼の配布、証明書の侵害やローテーションが必要な場合の影響の局所化です。 mTLS が CloudFront エッジで終端される場合、CloudFront はクライアント認証の証明書検証の実施ポイントとして機能することで、この運用上の複雑さの多くを吸収します。お客様は信頼されたルート証明書とクライアントポリシーを管理し、CloudFront が検証処理をスケーラブルに行います。mTLS がオリジンに拡張された場合も、証明書管理はこのモデルに沿ったままです:CloudFront は独自のクライアント証明書をオリジンに提示し、オリジンの証明書を検証します。これにより、オリジンがすべてのエンドユーザーの証明書を直接管理または信頼する必要なく、相互認証が維持されます。 前提条件 この機能を有効にするには、以下の前提条件があります: ・拡張キー使用法(clientAuth)を持つ X.509v3 クライアント証明書( PEM 形式)を準備 ・mTLS 認証を要求し、クライアント証明書を検証するように構成されたオリジンサーバー ・ AWS Certificate Manager (ACM)で米国東部(us-east-1)AWS リージョンを選択 設定手順 CloudFront とオリジン間の mTLS 認証の実装には、3つの主要なステップがあります:ACM を通じたクライアント証明書の取得、オリジンサーバーの構成、CloudFront ディストリビューションでの mTLS の有効化です。 ステップ 1:クライアント証明書の構成 CloudFront は2つのソースからのクライアント証明書の導入をサポートしており、それぞれ異なる運用ニーズに適しています: AWS Private Certificate Authority  とサードパーティ CA です。 AWS Private Certificate Authority(推奨) AWS Private Certificate Authority は、ACM とのシームレスな統合による、完全マネージドの証明書ライフサイクルを提供します。このアプローチにより、手動の証明書管理のオーバーヘッドが排除されます。 証明書をリクエストするには: 1. ACM コンソールを開き、米国東部(バージニア北部)リージョンにいることを確認 2. 「証明書のリクエスト」>「プライベート証明書のリクエスト」を選択 3. CA を選択し、ドメイン名を入力 4. 希望するキーアルゴリズムを選択し、更新権限を確認 5. 「リクエスト」を押下 図 1: AWS Certificate Manager からAWS Private Certificate Authorityへの新しい SSL/TLS 証明書リクエストの開始 サードパーティ CA  既存のプライベート CA インフラストラクチャから証明書をインポートして、現在の証明書管理プロセスを維持しながら CloudFront mTLS 機能を利用できます(図2参照) 証明書をインポートするには: 1. ACM コンソールで「証明書のインポート」を選択 2. 証明書本文、秘密鍵、証明書チェーン(すべて PEM 形式)を入力 3. 「証明書をインポート」を押下 クライアント証明書には、mTLS 認証のための拡張キー使用法(clientAuth)が含まれている必要があります。 図 2:AWS Certificate Manager に既存のクライアント証明書と秘密鍵をアップロードして、AWS での mTLS 認証に使用される証明書を登録する画面 ステップ 2:オリジン設定で mTLS を有効化  証明書ベースの検証を必要とする各オリジンに対して mTLS 認証を構成します(図3参照): 1. CloudFront コンソールで、ディストリビューションの「オリジン」タブに移動 2. 構成するオリジンを選択し、「編集」を選択します。 3. オリジン設定で、「Enable origin mutual TLS」を「オン」に切り替えます。 4. ドロップダウンメニューからクライアント証明書を選択します。 5. 変更を保存します。 図 3:オリジンリクエストに対する mTLS 認証を有効にする CloudFront 設定。CloudFront がオリジンで証明書ベースの認証を強制できるようにします オリジンごとの設定の柔軟性 mTLS はオリジンレベルで構成されるため、同じディストリビューション内の異なるオリジンに異なる証明書を割り当てることができます。これにより、オリジンごとに異なるセキュリティポリシーを適用できます。例えば、API エンドポイントには mTLS を使用し、静的コンテンツ配信オリジンには標準認証を適用できます(図4参照)。 図 4:CloudFront がオリジンとの相互 TLS を確立し、エッジからバックエンドサービスまでリクエストが認証・暗号化される構成 エンドツーエンド mTLS によるセキュリティとパフォーマンスのバランス エンドツーエンド mTLS(エンドユーザーから CloudFront、CloudFront からオリジン)を有効にすると、接続確立時にいくらかのオーバーヘッドが発生します。これは、各セグメントで両者を認証するための証明書検証と暗号化処理が必要なためです。ただし、このオーバーヘッドは主にハンドシェイクフェーズに限定され、その後のアプリケーションデータの転送には影響しません。コネクションプーリングや持続的なキープアライブ接続などのコネクション再利用メカニズムにより、多くのエンドユーザーリクエストにわたってこのコストが削減されます。これにより、ほとんどのワークロードでレイテンシーとスループットへの影響が最小限に抑えられます。CloudFront はトラフィックの大部分をエッジでキャッシュするため、大半のリクエストはオリジンに到達せず、相対的なパフォーマンスへの影響がさらに軽減されます。TLS 1.3 と適切な証明書管理により、わずかに高い接続セットアップコストと強力なエンドツーエンド認証のトレードオフは十分に見合うものです。CloudFront を通じて配信されるアプリケーショントラフィックのセキュリティをさらに強化したい場合は、mTLS の実装が有効な選択肢となります。 証明書管理については、AWS Private CA が完全に自動化されたライフサイクル処理と、45 日、30 日、15 日、7 日、1 日前の更新通知によりプロセスを効率化します。サードパーティの証明書を使用している場合は、mTLS 接続の中断を避けるために、タイムリーな手動更新のプロセスを整備してください。 まとめ Amazon CloudFront とオリジン間の mTLS は、最新のエッジアーキテクチャで最も見落とされがちな信頼のギャップの1つを解消します。 パート1 ではエンドユーザーと CloudFront 間の強力なアイデンティティと認証を確立しましたが、mTLS をオリジンに拡張することで、リクエストパスのすべてのホップが認証、暗号化、認可されることが保証されます。これにより、セキュリティは IP およびネットワークベースのモデルから暗号化ベースの信頼モデルへと移行し、オリジンは CloudFront を経由したことを証明できるトラフィックのみを処理します。アプリケーションが分散エッジ、プライベート API、ゼロトラスト原則にますます依存するようになるにつれ、CloudFront からオリジンへの mTLS は、オプションのセキュリティ強化策ではなく、基盤となるセキュリティ対策となります。エンドユーザー mTLS とオリジン mTLS を組み合わせることで、真のエンドツーエンドのアイデンティティ保証が提供され、攻撃対象領域の削減、コンプライアンスの効率化、回復力のあるアプリケーション境界の構築が実現します。 著者について Sagar Desarda Sagar Desardaは、データ、分析、Gen AI ISV 向けのテクニカルアカウントマネージャー(TAM)およびビジネス開発(BD)組織の責任者です。Sagarのチームは、お客様と協力して AWS アーキテクチャを最適化し、ビジネスクリティカルなアプリケーションのシームレスな運用を確保し、採用を加速し、北米全体で市場投入の成功を推進します。さらに、Sagar は Edge Networking Services Specialist US チームのリーダーとして、新規ビジネスの成長を推進し、技術的なエンゲージメントを促進し、顧客向けの出版物を執筆しています。 Yutaka Oka Yutaka Oka は、東京を拠点とするシニアエッジスペシャリストソリューションアーキテクトです。彼の主な焦点は、AWS Edge Services を使用してコンテンツ配信を最適化および保護することでお客様を支援することです。
みなさん、こんにちは。ソリューションアーキテクトの稲田です。 本記事は、三菱電機グループの社内 AWS ユーザーグループ「MAWS(Mitsubishi AWS User Group)」シリーズの第 3 弾です。 第 1 弾 では一人のエンジニアの小さな行動から 300 人を超えるコミュニティへと成長した誕生ストーリーを、 第 2 弾 では実務への展開や経営層との対話、次世代への継承といった MAWS の進化をお伝えしました。 2026 年 3 月 6 日、755 名に成長した MAWS のリーダーたちが AWS Tokyo Executive Briefing Center に集まり、AWS VP / Chief Evangelist の Jeff Barr とのセッションが実現しました。Jeff の 23 年間の AWS での経験をもとに、AI 時代における開発組織の変化、生産性のパラダイムシフト、そして人材育成の課題について議論が交わされました。 本記事では、セッションで共有されたインサイトと、MAWS メンバーとの対話から見えてきた AI 時代の組織変革の姿をお伝えします。 コミュニティの原点 — Jeff Barr の原体験 セッションの冒頭、Jeff は自身の原体験を語りました。約 50 年前、Northwest Computer Club というコミュニティに参加していた頃の話です。 そこでは年齢も経歴も関係なく、メンバーとして参加し、つながり、貢献する意志さえあればそれで十分でした。家庭の問題で個人的に困難な時期にあった Jeff にとって、クラブは単なる技術リソースではなく、コミュニティであり、友人そのものだったといいます。 50 年近く経った今も、テクニカルコミュニティの形成と成長を支援することが自身のモチベーションの源泉であり、 JAWS-UG や MAWS を通じた活動に深い感謝を示しました。 「現場」から変革を起こす — MAWS と Serendie® DX イニシアティブ「Serendie」 三菱電機は現在、DX のイニシアティブであるデジタル基盤「Serendie」により、イノベーティブカンパニーへの変革を進めています。従来のビジネスモデルはハードウェア販売によるワンタイムレベニューが中心でしたが、デジタルサービスによるリカーリングレベニューへの転換を推進しています。 この変革には 3 つの挑戦があります。データ活用したサービスの創出を主としたビジネスモデル変革、AI など最新技術をグローバルに展開するためのデジタル基盤強化、そして、課題をクイックに解決するアジャイル開発の加速を主眼としたマインドセット変革です。 重要なのは、この変革がトップダウンだけでなく全メンバーが推進する形で進められている点です。その中で MAWS がキーロールを担っています。 755 名に成長した MAWS 第 1 弾 で 300 名だった MAWS のメンバーは、755 名にまで成長しました。活動拠点は横浜、東京、関西エリアに広がっています。 MAWS のコアパーパスは、異なる事業所・事業部をまたいだクロスチームのつながりを促進することです。「周りに AWS に詳しい人がいない」「ジュニアエンジニアには質問しづらい」といった現場の課題に対し、Viva Engage や Teams 等を活用してボランティアが質問対応からトラブルシューティングまで支援する体制を構築しています。異なる事業部のシニアエンジニアが回答者として参加することで、組織の壁を越えた知識共有が実現しています。 コミュニティの成長サイクル MAWS の運営哲学は、外部コミュニティの「幅広い知識・経験」と社内コミュニティの「メンバーの成長支援」の両方の良いところを組み合わせることにあります。 成長サイクルは明確です。まずエンジニアがコミュニティプログラムに聴講者として参加し、知識と経験を現場に持ち帰る。次のステージでは発表者・登壇者として参加し、その経験を CCoE(Cloud Center of Excellence)に共有する。やがてクラウドアーキテクチャやユースケースを公式組織として事業部門に推奨するようになり、事業部門からさらに多くの人がコミュニティに参加するという好循環が生まれています。 第 2 弾 でもお伝えした通り、2025 年 4 月からは「 DX Innovation Academy(DIA) 」で MAWS メンバーがリードする AWS コースも開講しています。さらに、現場レベルでは AI 駆動開発の実践も加速しており、電力 ICT センターでは Kiro と GitLab を組み合わせた開発ワークフローの標準化 や、 33 名のエンジニアが参加した AI-DLC Unicorn Gym など、コミュニティから生まれた実践的な取り組みが次々と展開されています。 「エンジニアとしてモチベーションを持ち、自分たちが会社を変えるんだという決意。これが我々のスピリットです。」と MAWS メンバーは語ります。 製造業は「現場主義」が根付いた業界です。トップダウンの号令だけでは、15 万人規模の組織は動きません。三菱電機では、経営層による戦略的な方向付けと、MAWS のようなボトムアップの技術コミュニティを組み合わせた「サンドイッチアプローチ」で変革を推進しています。 Jeff はこの取り組みに非常に感銘を受けたと述べ、MAWS の 2 年間での成長を高く評価しました。 AI 時代の開発組織 — Jeff Barr のインサイト 2 Pizza チームから 1 Pizza チームへ Jeff がまず投げかけたのは、「AI ツールで開発者の生産性が上がったとき、組織はどう変わるべきか?」という問いでした。三菱電機のメンバーからは「むしろ対面コミュニケーションの重要性が増している」という声が上がり、Jeff も強く同意しました。 Amazon では長年「2 Pizza Team(ピザ 2 枚で足りる人数のチーム)」が組織設計の原則でした。しかし AI 時代には、より少人数で深い議論と迅速な意思決定ができる「1 Pizza Team」へと進化しつつあるといいます。開発チームのメンバーが同じ場所に、時には同じ部屋にいることの重要性が増しています。理由は明快で、重要な意思決定をより早く、より頻繁に行う必要があるからです。 極端な例としてハッカーハウス(開発者が同じ場所に住み込みで開発する形態)も紹介されましたが、Jeff はこれを「観察であり推奨ではない。ワークライフバランスは重要だ」と冗談交じりに付け加えました。 20 倍のコミット増、そしてボトルネックの移動 生成 AI ツールの活用により、開発者の週次コミット数が最大 20 倍に増加した事例が報告されています。注目すべきは、この変化がマネージャーからのトップダウンではなく、開発者自身のボトムアップによるカルチャーの変化として起きている点です。 しかし、この生産性向上には深刻な副作用があります。コード生産量の急増により、シニア開発者によるコードレビュー、コードのマージ、そして CI/CD パイプライン全体といった下流プロセスにボトルネックが移動しているのです。 Jeff は BMW Group の事例を紹介しました。BMW は CI/CD プロセス全体のシステムを数年かけて再構築し、効率化を実現しています。20 倍の生産性向上を実際に享受するには、ダウンストリームのボトルネック解消が不可欠であり、次のイノベーションの波はマージ、レビュー、テスト、デプロイの効率化から生まれるだろうと Jeff は見ています。 これは三菱電機のような大規模組織にとって特に重要な示唆です。開発者個人の生産性向上だけでなく、組織全体のデリバリーパイプラインを見直す必要があるということです。 76 日間で 2 年分の開発を完了 — Project Mantle Jeff は AWS 社内の事例として「Project Mantle」を紹介しました。これは Amazon Bedrock の推論インフラを刷新するプロジェクトで、急増する AI 推論需要に対応するために立ち上げられました。 Mantle は Bedrock の全モデルのホスティングと推論リクエスト処理を担う重要コンポーネントであり、最もシニアなエンジニアがアサインされました。当初の見積もりは約 2 年。しかしチームが 生成 AI の活用を実験した結果、11 人のチームがコードゼロからデプロイまでわずか 76 日で完了させました。 「AI が実装・テストし、人間がレビューする」というサイクルを 1 時間以内で回す体制を構築し、個々の開発者の生産性は 10〜20 倍に向上。同時に「ゼロオペレーターアクセス」——AWS のオペレーターですら顧客データにアクセスできない——という高いセキュリティ基準も達成しています。 この経験はシニア開発者にとっての「目から鱗」のウェイクアップコールとなり、GenAI の正しい活用法を組織全体に示す象徴的な事例となりました。 トークンエコノミクス — 新しい KPI の登場 AI 活用が進む中、企業は「トークン消費量」を新たな KPI として追跡し始めています。トークン使用量を開発者やプロジェクトにマッピングして可視化し、フィードバックして改善を促す取り組みが広がっています。 興味深いのは、トークンコストと開発者コストの比較が、エンジニアのアサイン方針を見直すきっかけになっている点です。AI ツールによって一人あたりの生産性が飛躍的に向上するなら、少数精鋭の内製チームの方が合理的——全体的には自社開発者を持つ方向へのトレンドが見られます。 AI 時代の人材育成 「High Judgment」— シニアとジュニアを分けるもの Amazon/AWS において、シニアエンジニアとジュニアエンジニアの違いは何か。Jeff の答えは明確でした。もはや技術スキルの差ではない。アーキテクチャの深い理解と、困難な状況で質の高い意思決定ができる能力「High Judgment」こそがシニアを定義するものです。 「ジュニアエンジニアはどう育てるべきか」という三菱電機側からの問いに対し、Jeff はこれがグローバル全体で業界が直面している問いだと認めた上で、教えるべきはコーディングスキルだけではなく、コミュニケーション能力、正しい判断を下す力、そしてビジネスの理解だと述べました。 具体的な育成方法としては、シニア開発者が大きな判断をする場面にジュニアを同席させ、困難な意思決定を経験する機会を意図的に与えること。そして成功事例だけでなく失敗事例からも学ばせることが重要だとしました。 セッションでは、三菱電機のメンバーから「冬休みに AI を活用して個人で約 10 万行のビジネスアプリケーションを開発した」という経験が共有されました。Jeff はこれに触れ、今後 10 年以内にユニ・ユニコーン(一人でユニコーン企業(10 億ドル評価)を築く個人)が登場する可能性があると語りました。 20 年で逆転したスキルセット、そして「性格の変化」 Jeff が語った中で最も印象的だったのは、開発者に求められるスキルの逆転現象です。 20 年前は、できるだけ少ないコードで、小さく効率的に、データも最小限にと教えられていました。今は逆です。プロンプトにできるだけ多くの情報を与え、データを最大限に活用することが求められます。かつて開発者は一人で静かに作業できることが美徳でした。今はチームの一員として多くの言葉を発し、頻繁にコミュニケーションを取ることが不可欠です。 「多くの開発者は、一人で静かに働けるからこそこの職業を選んだのです。この変化は技術的な変化というより、性格の変化に近い。これが個人にとっても組織にとっても最も興味深いチャレンジになるだろう。」と Jeff は述べました。 失敗をシステムに帰属させる — Amazon の COE プロセス ジュニアエンジニアの育成に関連して、Jeff は Amazon に長年存在する障害対応プロセス「COE(Correction of Errors)」を紹介しました。 システムやプロセスに障害が発生した際、まず問題を修正し、次に根本原因を深く分析・議論する。その上で、ミリ秒単位で障害の各段階を記録した詳細なドキュメントを作成し、再発防止策を記載します。 核心的な原則は、障害の原因を常にシステムやプロセスに帰属させ、決して個人を責めないことです。すべての COE はナンバリングされアーカイブされ、組織全体の学習資産として機能します。シニアエンジニアは有名な COE を番号で記憶しており、「COE 253 番の教訓を思い出せ」といった会話が日常的に交わされるといいます。運用上の重要なルールとして、COE が発行されたシステムは、問題が解決されるまで新機能の開発が停止されます。特に大きな障害については、シニアエンジニアが社内プレゼンテーションで教訓を共有します。このメカニズムにより、システムは時間の経過とともにより堅牢でレジリエントになっていきます。 Jeff はこれをジュニアエンジニアがシニアに成長するための重要な学習機会としても位置づけました。この「失敗から学ぶ文化」は、MAWS のようなコミュニティが社内で知見を共有する際のモデルケースにもなり得るでしょう。 ディスカッション — ナレッジ共有と組織変革 セッション後半では、三菱電機の現場が直面する課題と、コミュニティの未来について活発な議論が交わされました。 三菱電機側からは、社内に多様なデータが存在するが構造化されておらず、エンジニアがドメインナレッジにアクセスできないという課題が提起されました。Jeff は、社内データと構造を反映した独自モデルを構築し、開発プロセスのコンテキストとして活用することを提案しました。ただし、既存のリポジトリや Wiki を検索するよりも生成 AI で新しいものを作った方が速いケースも出てきており、多くの企業が同様のジレンマに直面しているといいます。「8〜10 時間のフライトに乗ると、着陸した時には世界が変わっているかもしれない。」という Jeff の言葉が、その変化のスピード感を物語っています。 コミュニティのあり方についても議論が深まりました。熱意のある人が集まるコミュニティは、課題に直面しても諦めずに前に進む力がある。単なるプロジェクトメンバーグループではなく、コミュニティとして進化していること自体が強靭性の源泉になっているとの見解が共有されました。Jeff は AWS の誕生ストーリーにも触れ、AWS 以前の Amazon 社内では各チームが同じ基本的な問題を並行して解決しており、サーバー調達にはマネージャー間でスプレッドシートを回覧して翌年の需要を予測するという柔軟性のないプロセスが存在していたと語りました。このプロセスがイノベーションを遅延させていたことが EC2 と S3 のローンチにつながり、今年でローンチから 20 周年を迎えます。 三菱電機の「コミュニティに KPI は必要か」という問いに対しては、Jeff は「KPI は必要だがコミュニティの種類によって大きく異なる」との回答でした。会員数だけでなく、参加頻度、参加の深さ、エンゲージメントの度合いを測定すべきであり、日本国内で同様の社内開発者コミュニティを持つ企業のリーダー同士が集まってベストプラクティスを比較することも Jeff は推奨しました。 おわりに セッションを通じて浮かび上がったのは、AI 時代の変革は技術だけの問題ではないということです。 チームは「2 Pizza」から「1 Pizza」へと小さくなり、対面での密なコミュニケーションと迅速な意思決定がこれまで以上に重要になっています。開発者の生産性は劇的に向上していますが、その恩恵を真に享受するには CI/CD などダウンストリーム全体の最適化が不可欠です。 人材育成の面では、シニアとジュニアの差はもはや技術力ではなく「High Judgment」にあります。20 年前と真逆のスキルセットが求められる時代において、意思決定の経験を意図的に与え、Amazon の COE プロセスのように成功と失敗の両方から組織的に学ぶ仕組みが鍵となります。 そして、751 名規模に成長した MAWS の取り組みが示すように、社内コミュニティは単なる技術リソースではなく、企業文化変革のドライバーそのものです。 製造業の巨人の中で、現場のエンジニアたちが自ら変革を推進する。トップダウンとボトムアップの「サンドイッチアプローチ」は、日本の大企業が DX を実現するための一つの解として、参考になるのではないでしょうか。 今回インタビューをさせて頂いた MAWS の運営メンバーの方々 川口 賢太郎 DXイノベーションセンター・副センター長。AWS認定資格全取得。三菱電機のデジタル基盤 “Serendie” による循環型デジタルエンジニアリング企業への変革を推進。 小川 雄喜 IoT・ライフソリューション新事業推進センター所属。 AWS Top Engineer 2025 、 AWS Community Builders 、Japan AWS All Certifications Engineers 2025 選出。 JAWS-UG 京都 運営メンバー、関西 Jr. Champion 会アドバイザーとして活動。年間 20 件を超える外部登壇を通じて アジャイル や コミュニティのあり方 などを発信中。 辻尾 良太 DX イノベーションセンター所属。 AWS Top Engineer 2025 、Japan AWS All Certifications Engineers 2024 , 2025 選出。三菱電機のデジタル基盤「 Serendie 」の開発に従事。普段は鶏肉とたまごをよく食べますが、野鳥たちとは仲良しのつもりです。 JAWS-UG 横浜支部 や E-JAWS 人材育成・クラウド推進体制分科会の運営メンバーとして社外コミュニティでも活躍。 紅林 俊之 デジタルイノベーション事業本部所属。Japan AWS All Certifications Engineers 2025 選出。三菱電機のクラウドマイグレーションとプラットフォーム再構築を推進する 2 つの大型プロジェクトをリード。MAWS-UG 立ち上げの発起人の一人。 塚田 真規 AI 戦略プロジェクトグループ所属。 AWS Community Builders 2025 、Japan AWS All Certifications Engineers 2024 , 2025 選出。生成 AI 開発基盤整備と LLMOps 推進を担当。JAWS-UG AI/ML 支部でのイベント主催や商業誌出版など多方面で活動。 インタビュアー 稲田 大陸 – いなりく AWS Japan で働く筋トレが趣味のソリューションアーキテクト。2022 年から三菱電機グループをご支援させていただいています。最近は AI 駆動開発ライフサイクル (AI-DLC) の日本のお客様への布教活動もしつつ、 Kiro のブログ などを執筆しています。
こんにちは! 今回初めて AWS Weekly Roundup を担当する Daniel Abib です。私は、生成 AI と Amazon Bedrock を専門とする AWS シニアスペシャリストソリューションアーキテクトです。ソリューションアーキテクチャ、ソフトウェア開発、クラウドアーキテクチャでの経験は 28 年を超え、Amazon Bedrock を使って生成 AI の力を活かせるようにスタートアップとエンタープライズ企業を支援しています。AWS 勤務歴は 6 年半以上で、中南米全域のお客様と密接に連携しています。また、サーバーレステクノロジーにも情熱を持っています。 仕事とエンデュランススポーツ以外では、Cecília (7 才) とRafael (4 才) の父親として全力を注いでいます。子どもたちは、どんな分散システムよりも毎日を忙しく、そして幸せにしてくれます。私の拠点はサンパウロです。 LinkedIn と X (@DCABib) では、生成 AI、Amazon Bedrock、AWSサーバーレスサービスに関する洞察を投稿していますが、アイアンマンの懐かしい思い出を投稿することもたまにあります。 それでは、2026 年 3 月 23 日週の AWS ニュースを見ていきましょう。 2026 年 3 月 16 日週のリリース 2026 年 3 月 16 日週のリリースのうち、私が注目したリリースをいくつかご紹介します。 Amazon Redshift がダッシュボードと ETL ワークロードでの新規クエリのパフォーマンスを最大 7 倍に向上 – ダッシュボードと ETL ワークロードでの新規クエリに対し、Amazon Redshift が最大 7 倍速いパフォーマンスを達成できるようになりました。初めて実行するクエリ (キャッシュされた結果がないもの) の実行速度が大幅に向上するため、インタラクティブなダッシュボードの待機時間短縮と、ETL パイプラインの迅速化が可能になります。これは、キャッシュヒットの頻度が低く、クエリの変動性が高いワークロードに特に大きなインパクトをもたらします。 Amazon Bedrock での NVIDIA Nemotron 3 Super 提供開始 – Amazon Bedrock で NVIDIA Nemotron 3 Super を利用できるようになり、統合 Bedrock API を通じてアクセスできる基盤モデルのラインナップが拡大されました。Nemotron 3 Super は、テキスト生成、複雑な推論、要約、コード生成などのタスク向けに最適化された高性能言語モデルです。これからは、インフラストラクチャを管理しなくても、既存の Bedrock ワークフローで他の基盤モデルとともに Nemotron 3 Super を呼び出すことができるようになります。 エンタープライズ AI 向けに Nova モデルをカスタマイズするためのシームレスな手段、Nova Forge SDK の導入 – Nova Forge SDK は、エンタープライズユースケース向けに Amazon Nova モデルをファインチューニングしてカスタマイズするための効率的な手段を提供します。Nova モデルをドメイン固有のデータに適合させ、Amazon Bedrock 内にそれらを直接デプロイできるため、目的に合わせて AI ソリューションを構築する複雑性が軽減されます。モデルのカスタマイズという面倒な作業は SDK が処理するので、ユーザーは基盤となるインフラストラクチャではなく、ビジネスロジックに集中できます。 Amazon Corretto 26 の一般提供開始 – Amazon Corretto 26 の一般提供が開始されました。これは、OpenJDK の無償/本番環境対応ディストリビューションの最新 LTS (長期サポート) リリースです。Corretto 26 には、最新の Java 言語機能、パフォーマンス改善、セキュリティパッチが含まれており、これらすべてが AWS の長期サポートによって支えられています。Corretto 26 は、Amazon Linux、Windows、macOS、および Docker イメージ上の開発環境と本番環境全体でご利用いただけます。 AWS Lambda がアベイラビリティーゾーンメタデータのサポートを開始 – AWS Lambda が、関数の呼び出しにアベイラビリティーゾーンメタデータを提供するようになりました。Lambda 関数が実行されているアベイラビリティーゾーンを特定できるようになるため、より優れたオブザーバビリティと、より多くの情報に基づいたアーキテクチャ上の判断が可能になるとともに、レイテンシーの影響を受けやすいワークロードとマルチ AZ ワークロードのトラブルシューティングが容易になります。これは特に、Lambda 実行とアーキテクチャ内にある他の AZ アウェアなサービスとの関連付けに便利です。 Amazon CloudWatch Logs が HTTP ベースのプロトコルを使用したログ取り込みのサポートを開始 – Amazon CloudWatch Logs が、HTTP ベースのプロトコルを使用したログの取り込みをサポートするようになり、標準の HTTP エンドポイントを使用するアプリケーションとサービスからのログの送信がよりシンプルになりました。カスタムエージェントや追加の SDK 統合を必要とすることなく CloudWatch Logs にログをルーティングできるようになったため、ワークロード全体でログを一元管理するハードルが低くなります。 Amazon EKS が Provisioned Control Plane クラスターに対する 99.99% のサービスレベルアグリーメントと新しい 8XL スケーリングティアを発表 – Amazon EKS が Provisioned Control Plane で実行されるクラスターに対して 99.99% のサービスレベルアグリーメント (SLA) の提供を開始しました。これは、標準コントロールプレーンで提供される 99.95% の SLA を超えるものです。EKS には、利用可能な Provisioned Control Plane ティアの中でも最も大きい 8XL スケーリングティアも導入されます。このティアの Kubernetes API サーバーリクエスト処理能力は、すぐ下のティアである 4XL ティアの 2 倍であるため、AI/機械学習トレーニング、ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC)、大規模なデータ処理といった大規模ワークロードに最適です。 AWS のその他のニュース こちらは、皆さんが関心を持つと思われる追加の記事とリソースです。 Kiro for students – 学生向けの Kiro の提供が開始され、次世代のビルダーが AI 駆動の開発ツールに無料でアクセスできるようになりました。Swami Sivasubramanian が LinkedIn で共有 したように、「学生は、テクノロジーを形作る未来の意思決定者です」。Kiro は、開発初日から AI を使って構築する実践的な体験を学生に提供します。皆さん自身が学生、または学生である方をご存知なら、Kiro for students は AI 支援の開発で構築を始める絶好の機会です。 Strands Steering Hook が 100% のエージェント精度を達成 – Strands Agents チームは、Steering Hook が 100% のエージェント精度を達成できることを示す結果を発表しました。これは、エージェントの行動を制御するためのプロンプトエンジニアリングとリジッドなワークフローアプローチの両方をしのぐ結果です。Swami が LinkedIn で言及 しているとおり、信頼性のある AI エージェントの構築は、しばしばモデル行動をガイドする方法の見直しを意味します。そんな中、Steering Hook はエージェントの信頼性につながる新しい魅力的な手段を提供します。 AWS Builder Center でのバッジ導入 – AWS Builder Center に、ビルダーコミュニティ内での貢献と成果を評価するためのバッジが登場しました。バッジは、ソリューションの共有、チャレンジへの参加、仲間のビルダーとの交流によって獲得できます。専門知識をアピールし、成長を追跡するためのすばらしい方法です。 共に構築し続ける: コミュニティの力 – AWS エコシステムにおけるコミュニティ主導の学習とコラボレーションの力に関する思慮に富んだ読み物です。AWS を使い始めたばかりであるか、何年も構築してきたかにかかわらず、ビルダーコミュニティは、互いにつながり、知識を共有し、共に成長できる場所です。ビルダーコミュニティをチェックしてみてください。自信を持ってお勧めします。 今後の AWS イベント カレンダーを確認して、近日開催予定の AWS イベントにサインアップしましょう。 AWS Summit – 2026 年の AWS Summit にご参加ください。AWS Summit は、クラウドおよび AI 関連の新興テクノロジーを探求し、ベストプラクティスについて学び、業界の同業者や専門家とつながることができる無料の対面イベントです。近日開催される AWS Summit には、パリ (4 月 1 日)、ロンドン (4 月 22 日)、バンガロール (4 月 23〜24 日)、シンガポール (5 月 6 日)、テルアビブ (5 月 6 日)、ストックホルム (5 月 7 日) などがあります。 AWS Community Day – コミュニティリーダーたちがコンテンツを計画、調達、提供し、テクニカルディスカッション、ワークショップ、ハンズオンラボが行われるコミュニティ主導のカンファレンスです。近日開催されるイベントには、サンフランシスコ (4 月 10 日) およびルーマニア (4 月 23~24 日) があります。 AWSome Women Summit LATAM – 3 月 28 日にメキシコシティで開催されるこのイベントは、中南米全域でクラウドテクノロジーに携わる女性の功績を称え、エンパワーメントを図ることを目的としています。中南米テクノロジーコミュニティのすばらしいイニシアチブです。 AWS Builder Center に参加して、ビルダーとつながり、ソリューションを共有し、開発をサポートするコンテンツにアクセスしましょう。今後開催される AWS 主導の対面および仮想イベント、スタートアップイベント、デベロッパー向けのイベントについては、 AWS イベントとウェビナー をご覧ください。 2026 年 3 月 23 日週のニュースは以上です。2026 年 3 月 30 日週の Weekly Roundup もお楽しみに! この記事は、Weekly Roundup シリーズの一部です。AWS からの興味深いニュースや発表を簡単にまとめて毎週ご紹介します! 原文は こちら です。
本日、 Amazon Quick が AWS アジアパシフィック (東京) リージョンで利用可能になったことをお知らせします。 このローンチにより、日本のお客様は 日本国内でホストされるデータと機械学習モデルを活用しながら Amazon Quick のエージェント型 AI 機能を利用できるようになりました。(注: 本日時点では Web 検索機能のみ日本国外のモデルを利用しています。) Amazon Quick は、一つのUIからデータから迅速に回答を取得し、そのインサイトを業務アクションへとつなげることができる AI ベースのデジタルワークスペース です。 東京リージョンでの提供開始により、日本のお客様は 低レイテンシー、国内データレジデンシー、エンタープライズレベルの AI 機能 を活用できるようになります。 Amazon Quick の概要 Amazon Quick は、 リサーチ、ビジネスインテリジェンス、そして自動化機能を統合したエージェンティック AI ワークスペース を提供します。 従来、ユーザーはデータ収集、分析、業務実行のために複数のアプリケーションを切り替える必要がありました。Quick を利用することで、これらの機能を 1 つのプラットフォーム上で統合的に利用可能 です。 ユーザーは自然言語で質問するだけで、 データからインサイトを取得 ダッシュボードやレポートを生成 アプリケーションや業務システムを横断してワークフローを自動化 することが可能になります。 Amazon Quick の主な機能 Amazon Quick は、次の 5 つの主要機能で構成されています。 Quick Index 組織内のドキュメント、ファイル、アプリケーションデータを横断的に統合し、検索可能なナレッジベースを構築します。 Quick Research 組織内のデータに加え、Web や外部データソースを組み合わせて分析し、インサイトやレポートを生成する AI リサーチエージェントです。 Quick Sight データをダッシュボードや可視化、自然言語による要約へと変換する AI ビジネスインテリジェンス機能です。 Quick Flows 自然言語で日常業務のワークフローを作成し、Web アプリケーションやサービス全体に渡るステップを自動化できる機能です。 Quick Automate 複数の専門的な AI エージェントを活用し、ガバナンスコントロールと人間による承認ステップを備え、複雑な業務プロセスを自動化してエンタープライズシステム全体の高度なオーケストレーションを実現する機能です。 これらの機能により、Amazon Quick は ビジネスユーザーのための AI アシスタント として活用できます。 例えば Quick を使用すると、 社内データと外部情報を横断検索 データから可視化やサマリーを生成 チケット作成や承認ワークフローなどの業務アクションを実行 これらすべてを会話型インターフェースで実現し、組織全体でのAI導入の障壁を下げます。 エンタープライズグレードのセキュリティとデータプライバシー Amazon Quick は、エンタープライズ利用を前提に セキュリティとデータプライバシーを重視して設計 されています。 お客様のデータやクエリは 基盤モデルのトレーニングに使用されることはありません 。組織は、AWS マネジメントコンソールを通じて、 データ、権限、統合を完全に管理が可能 です。 また、東京リージョンで利用することで、 データを日本国内の AWS インフラストラクチャ内に保持することが可能 になります。 日本国内でのサービス提供によるメリット Amazon Quick が東京リージョンで利用可能になったことで、日本のお客様は データを日本国内にとどめつつ、低レイテンシ―で AI 分析や自動化機能を利用可能 です。 国内データレジデンシー データを日本国内の AWS インフラストラクチャに留めることができ、組織が規制や内部ガバナンスの要件を満たすのに役立ちます。 低レイテンシー 日本国内ユーザーのネットワークレイテンシーが改善され、AI 応答やダッシュボード表示、ワークフローの応答などのパフォーマンスが向上します。 高可用性 東京リージョンの複数のアベイラビリティーゾーンをに展開され、高い可用性とレジリエンシ―を提供します。 まとめ Amazon Quick が東京リージョンで利用可能になったことで、日本のお客様は AI を活用した分析、リサーチ、自動化機能を国内インフラ上で利用できるようになりました。 Amazon Quick は、質問からインサイトの取得、そして業務アクションの実行までを 1 つのワークスペースで実現 します。 ぜひ東京リージョンで Amazon Quick をお試しください。 Amazon Quick の開始方法 お客様は、AWS マネジメントコンソールを通じて、 東京リージョン (ap-northeast-1) で今すぐ Amazon Quick を使い始めることが可能です。 始めるには: AWS アカウントで Amazon Quick を有効にします Amazon S3 や Microsoft SharePoint、Slack、その他のビジネスアプリケーションなどのデータソースを接続します Quick Index を設定してナレッジベースを構築します Quick Research 、 Quick Sight 、 Quick Flows を使って洞察を生み出し、ワークフローを自動化します 新規のお客様は、 最大 25 ユーザーまでの 30 日間の無料トライアル も利用可能です。 筆者について 溝渕 匡 (Masa Mizobuchi) AWS Japan のソリューションアーキテクトとして、様々なお客様に日々クラウド活用の技術支援を行なっています。ソフトウェアの設計、開発、データ分析、Scrum などが好きで、Scrum は好きが高じて導入プログラムを開発して複数企業への導入実績があります。趣味はゲームで遊んだりゲームを作ったりすることです。
はじめに ジャパンベストレスキューシステム株式会社 (以下、JBR)は、日本全国で展開する生活救急サービスのリーディングカンパニーです。住宅のカギの紛失や水まわりのトラブル、ガラスの破損など、日常生活で発生する様々な緊急事態に対し、24 時間 365 日体制で駆けつけサービスを提供しています。「困っている人を助ける」という企業理念のもと、生活救急事業を中心に事業を拡大しており、現在では年間約32万件の救急対応実績を誇り、全国 47 都道府県をカバーする約 2,000 の協力事業者ネットワークを構築しています。 このブログでは、JBR がカスタマーサービスの品質向上と業務効率化を実現するために、 Amazon Connect 、 Amazon Lex でセルフサービスを導入し、目標数値の 75% の自動応答化とエージェントの業務時間削減に成功した事例についてご紹介します。 課題背景 JBR では Amazon Connect を活用したコンタクトセンター運営を行ってきましたが、以下のような課題に直面していました : 業務量増加に伴うエージェント対応の維持、拡大 目標応答率の安定的な達成 顧客層により求められるサービスレベルの違い(人による対応重視 vs 受付完了優先) 対応時間の約 40% を占める定型的なお問い合わせ、要件確認の効率化 これらの課題を解決するため、音声ボットの導入を検討することになりました。 ソリューション選定 複数の音声ボットソリューションを比較検討する中で、以下の理由から Amazon Lex の採用を決定しました : 既に運用中である Amazon Connect 環境との統合の容易さ 実環境での検証 (PoC) が可能 クライアント企業への展開を見据えたスケーラビリティ プロジェクト推進と工夫 対象窓口(対象回線)の選定 JBR 様のコンタクトセンターでは、主に一般のお客様からの緊急対応依頼とパートナー店(工務店)や作業員からの業務連絡の 2 つの異なる顧客層からの問い合わせがあります。今回は、業務インパクト、クライアントへの事前周知、エージェントと顧客の会話のパターン化、の観点から業務連絡の窓口を対象としました。 インテント設計 以下は、 Amazon Lex を構成する要素 の一部です : ボット (Bot) : アプリケーションの最上位コンテナで、音声認識と自然言語理解により、ユーザーとテキストや音声で対話します。 インテント (Intent) : ユーザーが実行したい行動や目的を表します。例えば「注文する」「予約する」「問い合わせる」などです。 サンプル発話 (Sample Utterances) : ユーザーがそのインテントを表現する際の典型的な言い回しです。「ピザを注文したい」「大きいピザをお願いします」など、同じ意図でも様々な表現パターンを登録します。 スロット (Slot) : インテントを実行するために必要なパラメータです。注文インテントであれば「商品名」「数量」「配送先」などがスロットになります。 これらの要素を適切に設計することで、ユーザーの意図を正確に理解できるチャットボットを構築できます。 効果的なインテント設計を実現するために、まずエージェントと顧客の過去の会話ログを詳細に分析することからスタートしました。開発部門では会話録音から生成 AI を利用してインテントの候補となるサンプル発話、スロット案を抽出しました。実際のコンタクトセンターオペレーションを担当している CS 部門では、現状の運用業務観点でインテントやスロット案を検討、最終的には両者を統合させてまずはベースとなるインテント、スロット、サンプル発話を決定しました。 表:インテント、スロット、サンプル発話の例 Amazon Lex のテストと品質向上の取り組み 業務連絡用の窓口であっても後続の工程があるため、高い精度と品質が求められました。そこで、評価指標として過去の実績から Amazon Lex による対応で完結する着信を、全体の着信の約 20% と推定して評価を行い、実行テストに力を入れることにしました。まず、Amazon Lex 上で用意されているテスト機能を使用し、各インテント(意図)が最後まで正しく実行されるかを確認しました。このテスト機能はテキスト入力で行うため、想定される入力値と、システムが認識したインテントが合致しているかを視覚的に確認でき、非常に有用でした。このテストでインテントの認識に問題がないことを確認した後、テスト用の電話番号を用意し、実際の電話対応によるテストを実施しました。電話対応でも問題がないことを確認した後、テスト用の電話番号を公開し、案内文言の分かりやすさなど、多角的な視点からフィードバックを集めました。テストでは、 Conversational Analytics with Amazon Connect を有効化し、会話データを収集・分析し、継続的なインテントの改善を行いました。そして、2025 年 9 月にリリースされた Amazon Lex の アシストつきNLR(Assisted NLU) も迅速に設定を適用しました。集めたフィードバックを Amazon Lex のインテントやコールフローに反映して再テストすることで、継続的な精度と品質の向上に注力しました。 また、Coversational Analytics によって文字おこしされた会話データは、以下の「エージェントソフトフォンへの会話要約表示」に活用することでエージェントのオペレーション改善にも繋げることができました。 エージェントソフトフォンへの会話要約表示 継続的なインテントやスロット、サンプル発話の分析のために、Coversational Analytics による会話内容のログ出力を継続しました。以前から CS 部門から会話要約表示機能の実装要望もあったことから、エージェントソフトフォンである CCP への会話要約表示機能の実装を Amazon Lex ボットの実装と並行して実施しました。会話要約は Coversational Analytics の文字起こし機能を利用して音声から文字に変換し、要約表示に必要なフォーマットに変換するために Amazon Bedrock を利用しています。文字起こしの結果は Amazon Bedrock を利用して要約することで、業務要件にあわせたプロンプト設定によって自然で実用的な日本語の要約を実現しました。JBR では通話後にエージェントが通話内容から必要な情報を抽出して、別システムに入力する業務があります。これを CCP に表示された要約内容をそのまま利用することが可能になり、エージェントの後処理時間 (ACW) の短縮にも繋がり、オペレーションの品質向上と正確性の確保も実現することができました。電話応対する現場からは「 受付内容を手動で入力する必要がなく、要約された内容をそのままシステムに転記できるので、作業時間が短縮されました」、「会話中にメモを取ることに集中するあまり、お客様の話を聞き漏らしてしまうケースがありましたが、この機能のおかげで対話に専念できるようになりました」といったフィードバックを得ることができました。 導入成果 初期のリリースでは、対象回線 3 回線、インテント数 19 で開始したところ、約 2,700 から約 4,000 件/月の着信に対して想定したインテントに振り分けられなかった着信が約 46%(エラー率)、Amazon Lex による対応のみで完結した着信が約 7%(ボット率)でした。この結果を受けて、 Coversational Analytics を有効化し、5 月間で約 16,000 件の会話データを収集・分析しました。会話分析では、文字起こしされた会話内容だけでなく、録音された音声データを確認し、通話時のまわりの環境音もインテントの判定に影響を与えているという発見もありました。この分析結果に基づき、うまく振り分けられなかった会話内容や録音を確認して、サンプル発話を追加したり、インテントの追加や集約など地道ながらも継続的な改善を行いました。 結果、初期リリースから 5 ヶ月後には着信数が 4,000 件/月に達するなかでエラー率が約 18%、ボット率が約 15% (評価指標に対して、約75% の達成率) となりました。さらに 3 ヶ月間の継続改善の結果、エラー率が約 2.8% に減りました。 今後の展開 継続的な改善として、Amazon Lex によって想定したインテントに振り分けられなかった着信について会話内容の分析を行なっていくとともに、より柔軟な対応を可能にするため、複数の Amazon Lex ボットを配置することによる用途別対応の検討も進めています。また、エンドユーザー向け窓口への Amazon Lex 展開も計画しています。 JBR  が扱うのは、鍵の紛失や水漏れといった日常生活における緊急事態です。このような状況では、お客様の不安や焦りに寄り添う人間的な対応が不可欠な場面も多く存在します。JBR では、「すべてを自動化する」のではなく、「適切な箇所に、適切なタイミングで、適切な技術を適用する」ことを重視しています。技術による効率化と人間ならではの温かみのある対応を最適にバランスさせることで、真にお客様に価値を提供できるサービスの実現を目指しています。 まとめ JBR の事例は、Amazon Connect と Amazon Lex の組み合わせによって、以下の成果を実現できることを示しています: エージェントのヒアリング業務負荷と ACW の軽減 24 時間 365 日の安定したサービス提供 データ分析に基づく継続的な改善 自動応答割合のコントロールが可能
はじめに Amazon Connect の AI エージェントを構築する際、開発者はお馴染みの課題に直面します。それは、厳しいスケジュールの中で複雑なインテグレーション要件に対応しなければならないことです。複数のバックエンド API の接続、堅牢なエラーハンドリングの実装、リアルなテストデータの生成、複数サービス間のデバッグ、これらすべてをコード品質と一貫性を保ちながら進める必要があります。10〜15 の API を統合する概念実証 (PoC) では、経験豊富なチームでも 2〜3 週間かかることも珍しくありません。バックエンドシステムに直接アクセスできず、リアルに動作するモック実装を作成しなければならない場合では、複雑さはさらに増します。 Kiro はこの状態を変えます。AI コーディングアシスタントの Kiro はシステムアーキテクチャ全体を理解するエキスパートのペアプログラマーとして機能します。 AWS Lambda 関数の本番品質のコード生成、 Amazon DynamoDB スキーマの設計、MCP ツールスキーマの作成、 Amazon CloudWatch Logs の分析による問題特定まで、コードベース全体の一貫性を保ちながら対応します。AI を活用したこのアプローチにより、通常数週間かかる手作業のコーディングを数日に短縮できます。 本記事では、Kiro を使って 15 のバックエンド API を備えた Amazon Connect AI エージェントをわずか 3 日間で構築した方法を紹介します。対話型の開発と、Kiro による CloudWatch ログの自動分析・問題修正の組み合わせで、野心的なスケジュールでどのように高速イテレーションを実現するかを解説します。 課題: API 仕様から動作するエージェントへ このプロジェクトは一般的なシナリオから始まりました。お客様は複雑なカスタマーサービスのワークフローを処理できる Amazon Connect AI エージェントを必要としていたのです。要件は Excel スプレッドシートに記載された 15 の API 仕様として届きました。各行にはエンドポイント、パラメータ、期待されるレスポンス、ビジネスロジックが記述されていました。これらの API は、認証とプロファイル検索、検索と取得操作、予約の変更とキャンセル、支払い処理と検証、ドキュメントの生成と提供、テストとデータ管理のための管理機能など、カスタマーサービス業務の全領域をカバーしていました。 ユースケースは包括的でした。顧客は音声で AI エージェントとやり取りし、エージェントはエンドツーエンドのワークフローを完了するために 15 の API すべてを横断的に呼び出す必要がありました。たとえば、顧客が認証を行い、既存の予約を検索し、予約を変更し、差額を計算し、支払いを処理し、確認書類を要求する、これらすべてを 1 回の会話で行います。AI エージェントはコンテキストを理解し、どの API / ツールをいつ呼び出すかを適切に判断し、エラーを適切に処理し、やり取り全体を通じて自然で有用な応答を提供する必要がありました。 さらに難しかったのは、お客様の開発環境やテスト環境にアクセスできなかったことです。バックエンドシステムはまだ開発中でした。つまり、既存の API に AI エージェントを接続してテストを開始するだけの方法では実現できません。リアルな API 動作をシミュレートし、複数の呼び出しにまたがって状態を維持し、Excel に記述された仕様通りのビジネスロジックを正確に反映し、レスポンスを生成できる、完全なモックバックエンドが必要でした。 タイムラインも厳しいものでした。動作するデモを 3 日間で納品する必要がありました。その間に、モックバックエンドアーキテクチャの設計と実装、15 の API すべての Lambda 関数の作成、リアルなテストデータを含むデータベースの設計と投入、動的なレスポンス生成のための Amazon Bedrock 統合、シームレスな AI エージェント統合のための MCP スキーマの作成、ライブデモでスムーズに動作するようシステム全体のデバッグを完了させる必要がありました。 このシナリオは、現代のソフトウェア開発でよくある課題を反映しています。制約下での高速プロトタイピングです。顧客向けの PoC 構築、ステークホルダーへのコンセプト実証、本格開発前のアーキテクチャ検証など、いずれの場合も同様のプレッシャーがあります。複雑なインテグレーション要件、不完全またはアクセスできないバックエンドシステム、厳しいスケジュール、そして実際の実装に発展できるような本番品質のコードが求められます。 Kiro で Amazon Connect AI エージェント開発を加速する方法 AI を活用した設計 従来のアーキテクチャ設計には、何時間ものリサーチ、設計会議、ドキュメント作成が必要でした。Kiro では異なるアプローチを取りました。AI を活用した仕様駆動設計です。要件 (15 の API、バックエンドアクセスなし、リアルなレスポンスの必要性、Amazon Bedrock AgentCore Gateway 経由の Amazon Connect 統合) を説明すると、Kiro はそれを正式な要件ドキュメントに変換し、次に詳細な設計ドキュメントを作成し、最後に実行可能なタスクリストを生成しました。この仕様駆動ワークフローにより、漏れのない、要件から実装までの明確なトレーサビリティが確保されました。 通常丸 1 日かかるアーキテクチャ設計が、Kiro との 1〜2 時間のインタラクティブな議論で完了し、明確で合理的な設計がすぐに実装可能な状態になりました。 高速なコード生成 アーキテクチャが定まると、Kiro は 15 の Lambda 関数すべてと、関連する Amazon DynamoDB テーブル、 Amazon Bedrock 統合、 AWS IAM 設定を数時間で生成しました。各関数には以下が含まれていました。 – API 仕様の完全な実装 – 構造化されたエラーコードによる適切なエラーハンドリング – 相関 ID トラッキングを含む包括的なログ記録 – 状態管理のための DynamoDB 統合 – リアルなレスポンス生成のための Bedrock 呼び出し – 入力バリデーションと防御的プログラミング コードを素早く開発できただけでなく、さらに Kiro は一貫性の維持にも役立ちました。すべての関数がエラーハンドリング、ログ記録、統合において同一のパターンに従っていました。パターンの調整が必要になった場合 (認証トークンの処理方法の変更やエラーレスポンス形式の修正など)、変更を一度説明するだけで、Kiro が 15 の関数すべてを一貫して更新しました。類似のコンポーネントを手作業で複数実装する際に起こるドリフトや不整合も解消されました。 CloudWatch Logs の自動分析と高速イテレーション Kiro との開発で最も強力だったのは、高速なイテレーションのフィードバックループです。開発サイクルは次のように進みました。 1. Kiro がコードを生成・更新 (Lambda 関数、MCP スキーマ、インフラストラクチャ) 2. CDK で AWS にデプロイ 3. AI エージェントの会話フローをテスト 4. Kiro に CloudWatch Logs (AI エージェント + Lambda 関数) の読み取りを指示 5. Kiro が問題を特定し、根本原因を説明し、修正を提示 6. Kiro に修正の実装と再デプロイを依頼 7. 正常に動作するまで繰り返し このフィードバックループは非常に高速でした。デプロイ、テスト、ログ分析、修正、再デプロイという 1 サイクル全体がわずか 10〜20 分で完了しました。Kiro の自動ログ分析と根本原因の調査能力がなければ、各サイクルで数時間の手動デバッグが必要だったでしょう。 付け加えると Kiro で AI エージェントのログを分析するには、Amazon Connect AI エージェントの CloudWatch へのロギングを有効にする 必要があります。 実際のデバッグ事例 DynamoDB クエリの失敗: Kiro がパーティションキーの不一致を検出し、スキーマの調整を提案 AI エージェントのインテント認識の問題: Kiro が会話ログをレビューし、MCP ツールの説明文に曖昧な表現があることを特定 エラーハンドリングの不備: Kiro がログから処理されていないエッジケースを発見し、防御的なコードを生成 3 日間で数十回のイテレーションサイクルを完了しました。毎回、Kiro の自動ログ分析が手動デバッグのボトルネックを解消し、開発の勢いを維持しました。 まとめ 本記事では、対話型の仕様駆動設計と CloudWatch Logs の自動分析により、Kiro が Amazon Connect AI エージェント開発をどのように加速したかを紹介しました。私たちは 15 のバックエンド API を備えた完全に機能する AI エージェントをわずか 3 日間で構築しました。従来の開発アプローチでは 2〜3 週間かかるスケジュールです。 これを可能にした 3 つの機能は次のとおりです。 仕様駆動設計: インタラクティブな要件収集により、何日もの会議が不要に デバッグの自動化: CloudWatch ログへの直接アクセスで手動トラブルシューティングを排除 高速フィードバックループ: 10〜20 分のイテレーションサイクルで継続的な改善が可能に このアプローチは、今回のユースケースに限らず幅広く適用できます。カスタマーサービスエージェント、テクニカルサポートボット、セールスアシスタントのいずれを構築する場合でも、Kiro による対話型開発と自動デバッグの組み合わせで、Amazon Connect AI エージェントのプロジェクトを大幅に加速できます。 Amazon Connect AI エージェント開発を加速しませんか? Kiro を使い始めて 、対話型開発と自動デバッグによる、数週間かかっていた作業を数日で実現する体験をお試しください。 Amazon Connect 開発で AI コーディングアシスタントを使ったことはありますか? ぜひ体験を共有してください。 リソース Kiro Getting Started with Kiro Amazon Connect AI エージェント Amazon Connect AI エージェント Connect AI エージェントを使用したリアルタイムのサポート ワークショップと学習リソース Amazon Connect の Agentic AI を活用したインテリジェントカスタマーサービスの構築 Amazon Connect AI Agents Workshop Enable CloudWatch Logging for AI Agents 関連する AWS ドキュメント Amazon Bedrock AgentCore Gateway (MCP) 著者について Thomas Rindfuss は Amazon Connect のエージェント型・対話型 AI のワールドワイドリード SA です。対話型 AI サービスの新しい技術機能やソリューションの考案、開発、プロトタイピング、エバンジェリズムを通じて、カスタマーエクスペリエンスの向上と導入の促進に取り組んでいます。AI エージェントを構築していないときは、新しい AI テクノロジーの探求や、顧客のコンタクトセンター体験の変革を支援しています。 Kiro は、仕様、ステアリング、フックなどの機能を備えたエージェント型 IDE です。Kiro は本ブログ記事の共著者として、構成の整理、技術的正確性の確認、編集支援を行いました。ブログ記事の共著をしていないときは、開発者のコード作成、ログ分析、システムデバッグの高速化を支援しています。 翻訳はテクニカルアカウントマネージャーの高橋が担当しました。原文は こちら です。
本記事は 2026 年 3 月 18 日 に公開された「 How Vanguard transformed analytics with Amazon Redshift multi-warehouse architecture 」を翻訳したものです。 この記事は、Vanguard の Financial Advisor Services 部門の Alex Rabinovich、Anindya Dasgupta、Vijesh Chandran と AWS の共同執筆によるゲスト投稿です。 Vanguard は世界有数の投資会社であり、全世界で 5,000 万人以上の投資家にサービスを提供しています。450 以上の低コストなミューチュアルファンドと ETF を幅広く取り揃え、投資アドバイスや関連する金融サービスを提供しています。約 20,000 人のクルーメンバーを擁し、投資家の長期的な資産形成を支援する低コスト・高品質な投資ソリューションで高い評価を得ています。 Vanguard の Financial Advisor Services (FAS) 部門は、金融サービス業界で最も著名な B2B 事業の一つです。FAS は仲介チャネルを通じて幅広く多様な資産を管理し、全米のアドバイザリーファームやファイナンシャルアドバイザーの広範なネットワークを支援しています。投資商品、モデルポートフォリオ、リサーチ機能、テクノロジーを活用したサポートサービスを一通り提供し、ファイナンシャルアドバイザーがクライアントにより効果的にサービスを提供できるよう支援しています。 ビジネスユースケースと初期アーキテクチャ FAS の事業規模と複雑さは膨大なデータを生み出し、ビジネスインサイト、規制遵守、業務効率化のための高度な分析機能が求められます。Vanguard はこの課題に対応するため FAS 360 イニシアチブを立ち上げました。FAS 360 は、内部・外部のデータソースを統合したクラウドデータウェアハウスを構築し、FAS を強化することを目指しています。 主なビジネスユースケース: 業務オペレーション – 営業目標の設定、進捗管理、報酬管理を通じて業務効率を高めます。ファイナンシャルアドバイザーのクライアントにおける商品利用パターンのインサイトも提供します。 データサイエンス – 顧客セグメンテーションモデルや通話文字起こし分析で戦略的インサイトを導出します。マーケティングキャンペーンの準備や、営業電話に向けた顧客インサイトの提供も支援します。 探索的分析 – 経営層からのアドホックな質問、What-if シナリオ分析、チャネルマネージャー向けの販売トレンド分析や競合比較分析に対応します。 上記のユースケースを一元化されたシステムに統合し、FAS 360 は Vanguard の FAS 部門全体で一貫したレポーティングとデータドリブンな意思決定を実現しています。 集中型データウェアハウス FAS 360: Vanguard のモダナイゼーション第 1 弾では、 Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) 上の Parquet ファイルが散在する「データスワンプ(データの沼地)」から、構造化された統合システムへの移行を行い、FAS 360 を集中型エンタープライズデータウェアハウスとして確立しました。 以下のアーキテクチャ図は、生データの保存に Amazon S3 を活用し、コア処理エンジンとして Amazon Redshift を使用する構成です。BI ツール、アナリストの探索、データサイエンスワークロードへの統合的なアクセスを提供しています。 アーキテクチャで得られた主な成果: 信頼できる唯一の情報源 – 分散していたデータソースを統合システムに集約し、データの不整合を解消して、組織全体で一貫したレポーティングを確立しました クエリパフォーマンス 10 倍向上 – 以前のソリューションと比較してクエリ応答時間が大幅に改善され、アナリストの生産性向上とより複雑な分析ワークロードの実行が可能になりました シームレスなデータレイク統合 – より広範なデータレイク環境との接続性を維持しつつ、構造化されたウェアハウス機能を提供しました ビジネスの俊敏性向上 – メトリクスへの信頼性が高まり、以前は実現困難だった新しいユースケースが可能になり、FAS360 システムへの移行の推進力となりました 集中型アーキテクチャにより、データが個人に分散しガバナンスが限定的だった従来の課題を解決し、その後のアーキテクチャ進化の基盤を確立しました。 急速な成長と拡大するユースケース Vanguard FAS のデータ分析要件は 2 年間で著しい成長を遂げ、現代のデータニーズの急速な進化を示しています。 初期状態: 日次データロードを処理する AWS Glue ETL ジョブ 20 本 データウェアハウス内のテーブル数 約 100 ビジネスユーザー向け Tableau ダッシュボード 20 個 システムにアクセスするアナリスト 約 60 名 2 年後: Amazon Redshift に 20 TB、S3 データレイクに 150 TB のデータ量 複雑なデータ変換を処理する AWS Glue ETL ジョブ 600 本以上 (30 倍増) 多様なビジネスデータを格納するテーブル 300 以上 (3 倍増) クエリパフォーマンスを最適化する Amazon Redshift マテリアライズドビュー 250 以上 さまざまなビジネス機能に対応する Tableau ダッシュボード 500 以上 (25 倍増) 月間 500,000 以上のユーザークエリ 急激な成長の背景には、リスク管理やコンプライアンスからクライアントサービスの最適化、業務効率改善に至るまで、ビジネス機能全体でデータドリブンな意思決定への依存度が FAS 部門で高まっていることがあります。 リソース競合とパフォーマンスのボトルネック Vanguard FAS のデータ環境が拡大するにつれ、初期アーキテクチャである 2 ノード (ra3.4xlarge) の単一 Amazon Redshift プロビジョンドクラスターで深刻なパフォーマンス課題が発生し、ビジネスオペレーションに支障をきたすようになりました。 ETL パフォーマンスの問題: ETL の SLA 違反が頻発し、重要なビジネスプロセスに影響 Tableau データ抽出の失敗によるダッシュボードデータの陳腐化 データ取り込みと変換ワークロード間のリソース競合 エンドユーザー体験の劣化: ピーク時のクエリパフォーマンス低下 テーブルやオブジェクトのロック問題による同時アクセスの阻害 深い分析探索ができずフラストレーションを抱えるアナリスト 長時間実行の分析クエリが実行困難 運用上の課題: ETL ワークロードとインタラクティブ分析間のリソース競合 ワークロードタイプごとにコンピューティングリソースを独立してスケールできない データオペレーション全体に影響する単一障害点 ワークロードの優先順位付けとリソース配分の困難さ パフォーマンスの課題は、日常の業務レポーティングから戦略的なビジネス分析に至るまで、FAS がデータ資産を効果的に活用する能力を根本的に制限していました。 ソリューション概要 上記の課題に対処するため、Vanguard FAS は Amazon Redshift のデータ共有機能を活用し、ワークロードの分離と独立したスケーリングを実現するマルチウェアハウスアーキテクチャを実装しました。 プロデューサー – Amazon Redshift プロビジョンドクラスター 中央ハブは RA3 ノードを搭載した元の Amazon Redshift プロビジョンドクラスターで構成され、安定した予測可能なワークロード向けに最適化されています。 専用 ETL 処理: データの取り込み、変換、ロード処理を担当 書き込みワークロードの最適化: 干渉なくデータの書き込みと更新を管理 コスト最適化: 予測可能な定常ワークロードにリザーブドインスタンスを活用 データガバナンス: エンタープライズデータの信頼できる唯一の情報源として機能 コンシューマー – Amazon Redshift Serverless ワークグループ 複数の Amazon Redshift Serverless インスタンスが、需要に応じてコンピューティングリソースを自動スケールする専用のコンシューマーエンドポイントとして機能します。 アナリスト探索: アナリストのデータ探索と実験のための専用環境 BI ツール: Tableau ダッシュボードと可視化ワークロードに特化して最適化されたインスタンス データサイエンス: 完全に分離された環境での複雑かつ長時間実行の機械学習ワークロード向け Amazon Redshift のネイティブなデータ共有機能により、プロデューサーとコンシューマーインスタンス間をセキュアに接続しています。コンシューマークラスターはデータ移動なしにプロデューサーのライブデータにアクセスでき、常に最新の情報を参照できます。ゼロコピー共有アプローチにより、データの複製や複雑な同期プロセスが不要になり、ストレージコストと運用の複雑さの両方を削減できます。 成果 マルチウェアハウスアーキテクチャの実装により、主要なパフォーマンス指標全体で大幅な改善が実現しました。 安定したパフォーマンス 夜間の ETL サイクルが午前 9 時の SLA 前に安定して完了するようになり、ビジネスオペレーションを妨げていた SLA 違反が解消されました。朝のビジネス活動に向けて最新のデータが確実に利用可能になっています。ダッシュボードやレポートに最新のデータが反映され、チームは意思決定に必要なインサイトを得られるようになりました。 アナリストの生産性と体験の向上 新しいアーキテクチャにより、深いアドホック探索クエリを妨げていた 10 分間のクエリタイムアウト制限が撤廃されました。アナリストは完全に分離された環境で、他のユーザーや ETL プロセスに影響を与えることなく、30 分を超える複雑な分析ワークロードを実行できるようになりました。クエリ応答時間の大幅な短縮と合わせて、チーム全体でアナリストの満足度と生産性が向上しました。 新しい分析機能 マルチウェアハウスアーキテクチャにより、アナリストが CREATE TABLE AS SELECT (CTAS) コマンドでデータを実験できる書き込みアクセス権を持つ専用の「Data Lab」環境が導入されました。各ワークロードタイプが需要に応じて独立してスケールでき、異なるコンシューマークラスターが特定のユースケースに最適化されているため、より高度な分析アプローチが可能になりました。 オペレーショナルエクセレンス ワークロードの分離により、異なるパターン間でコンピューティングリソースを効率的に活用できるようになり、適切なサイジング、Serverless の従量課金、リザーブドインスタンスの活用によるコスト管理が改善されました。ETL と分析ワークロードの明確な分離により、データプラットフォーム全体の管理が簡素化されました。 継続的なモダナイゼーション: データメッシュアーキテクチャへの進化 Vanguard のデータ環境が成熟し、マルチウェアハウスアーキテクチャの成功が組織全体での幅広い採用を可能にしたことで、組織の成長に合わせたアーキテクチャ進化の機会を認識しました。データプロダクトのポートフォリオ拡大とシステムを活用するチーム数の増加が、新たな改善の機会を生み出しました。 Vanguard のデータ環境が成長するにつれ、3 つの主要な課題が浮上しました。 集中型オーナーシップのボトルネック – 単一チームによるデータオーナーシップでは、増加するデータプロダクトに対応しきれない 書き込みワークロードの競合 – 共有エンドポイントでの書き込み操作にリソース競合が残存 クロスドメインの依存関係 – ビジネスドメイン間のデータオブジェクトの相互依存がデータプロダクト開発を遅延させる データメッシュ採用の理由 Vanguard が データメッシュ を採用した背景には、以下のニーズがありました。 データオーナーシップの分散化 – 専任のスチュワードを配置したデータドメインを確立 書き込み競合の解消 – 各ドメインのデータロードを個別のエンドポイントに分離 自律的な開発の実現 – スチュワードがデータプロダクトのライフサイクルとガバナンス全体をオーナーシップを持って管理 最新のデータレイク機能の活用 – AWS Glue と Apache Iceberg フォーマットによるデータプロダクトのキュレーション データメッシュへの進化は、マルチウェアハウスアーキテクチャで達成した技術基盤とオペレーショナルエクセレンスを土台に、Vanguard が組織的にスケールする能力を支えるものです。Amazon Redshift マルチウェアハウス実装の成功を基盤として、Vanguard FAS はデータアーキテクチャ進化の次のフェーズとして、以下のデータメッシュアプローチの検討を進めています。 データメッシュアーキテクチャには、スケーラブルでドメイン指向のデータ管理を実現するために連携する複数の主要コンポーネントがあります。 ドメイン指向のデータオーナーシップ Vanguard はビジネス機能に沿った個別のデータドメインを確立し、各ドメインに専任のデータスチュワードを配置して明確なオーナーシップとアカウンタビリティを実現しています。集中型のデータ管理から分散型モデルへの移行により、データに近いチームがドメイン固有のニーズについて的確な判断を下せるようになります。 分散型データアーキテクチャ 新しいアーキテクチャでは、ドメイン固有のデータロードを個別のコンピューティングエンドポイントに分離し、各ドメインに独立したデータ処理パイプラインを構築しています。クロスドメインの依存関係や競合が軽減され、チームは組織全体の調整を待つことなく変更の反復とデプロイが可能になります。 データプロダクトアプローチ Vanguard は Apache Iceberg フォーマットを使用してデータレイク上でデータプロダクトをキュレーションし、メトリクスの計算とデータレイク統合に AWS Glue を活用しています。データをプロダクトとして扱い、定義された SLA と品質メトリクスを設定することで、ダウンストリームのコンシューマーが信頼して利用できる高品質なデータ配信を実現しています。 セルフサービス分析 ドメインチームはエンタープライズガバナンス基準を維持しながら、データプロダクトのライフサイクル全体を独立して管理できます。Vanguard は独立したデータ管理のためのツールとシステムを提供し、データ品質やセキュリティを損なうことなく迅速なイノベーションを可能にし、組織全体でインサイト獲得までの時間を短縮しています。集中型データウェアハウスからマルチウェアハウスアーキテクチャ、そして完全に分散されたドメイン指向のデータメッシュへの進化は、Vanguard の継続的な成長に対応する自然な発展です。 まとめ Vanguard Financial Advisor Services の取り組みは、分析のスケーリングが単一ウェアハウスの拡大ではなく、ワークロードの分離、独立したスケーリング、組織の成長に対応するアーキテクチャ設計にあることを示しています。 2 ノードの RA3 プロビジョンドクラスターから Amazon Redshift Serverless とプロビジョンドを組み合わせたマルチウェアハウスアーキテクチャへの進化により、Vanguard は本番環境で以下の成果を達成しました。 月間 500,000 以上のクエリ を ETL やダッシュボードの競合なしに処理 ETL SLA 遵守率 100% – 夜間パイプラインが午前 9 時前に完了 BI 利用 25 倍増 (Tableau ダッシュボード 20 → 500 以上) をパフォーマンス劣化なしに実現 アナリスト数 8 倍増 (60 → 500 名以上) をワークロード分離で実現 ETL パイプライン 30 倍増 (20 → 600 本以上) を取り込みロジックの再設計なしに実現 Amazon Redshift のゼロコピーデータ共有 をプロデューサーとコンシューマーウェアハウス間で実現し、データの複製と同期コストを最小化 10 分間のクエリ制限を撤廃 し、高度な探索的分析や長時間実行の分析を実現 注目すべきは、コンピューティングの過剰プロビジョニングではなく、ワークロードごとのコンピューティングの適正化と専門化で成果を達成した点です。需要が予測可能な ETL にはキャパシティを予約し、需要が変動する BI やアドホック分析には Amazon Redshift Serverless の自動スケーリングを活用しています。 Vanguard がドメイン指向のデータメッシュへと進む中、マルチウェアハウスアーキテクチャは組織のスケール、データプロダクトのオーナーシップ、自律的な分析を実現するための基盤であるという教訓が得られました。データ分析要件の成長に直面している組織にとって、Vanguard のアプローチは参考になるでしょう。適切なアーキテクチャと AWS サービスの活用により、パフォーマンスの大幅な改善、コスト削減、ビジネス価値の創出を加速する新しい分析機能を実現できます。 AWS では、 AWS アカウントチーム にご連絡いただき、AWS アナリティクススペシャリストによるアーキテクチャガイダンスとお客様に合わせた推奨事項をご活用ください。 © 2026 The Vanguard Group, Inc. and Amazon Web Services, Inc. All rights reserved. This material is provided for informational purposes only and is not intended to be investment advice or a recommendation to take any particular investment action. 著者について Alex Rabinovich Alex は、Vanguard の Financial Advisory Services 部門のデータエンジニアリングディレクターです。大規模なデータエンジニアリングプラットフォームとモダナイゼーションイニシアチブをリードし、AWS クラウド上で信頼性が高くスケーラブルかつ高パフォーマンスなデータシステムの構築に注力しています。 Anindya Dasgupta Anindya は、Vanguard の Financial Advisor Services Technology 部門のソリューションアーキテクトです。複雑なビジネス課題に対応するエンタープライズテクノロジーソリューションの構築に 25 年以上の経験があります。スケーラブルなクラウドネイティブかつデータドリブンなシステムの設計を専門とし、アプリケーション開発、システム統合、概念実証に実践的に取り組んでいます。 Vijesh Chandran Vijesh は、ソリューションデザインの責任者として、重要なビジネス成果を支えるエンタープライズテクノロジーソリューションのアーキテクチャと設計を統括しています。クラウドネイティブプラットフォーム上のデータアーキテクチャやデータドリブンシステムに精通し、テクノロジー設計とビジネス戦略の整合に注力しています。ソリューションの方向性、統合パターン、概念実証の推進に実践的に関わっています。 Raks Khare Raks は、ペンシルベニア州を拠点とする AWS のシニアアナリティクススペシャリストソリューションアーキテクトです。さまざまな業界や地域のお客様が AWS プラットフォーム上で大規模なデータ分析ソリューションを構築するのを支援しています。仕事以外では、新しい旅行先やグルメスポットの開拓、家族との時間を楽しんでいます。 Poulomi Dasgupta Poulomi は、AWS のシニアアナリティクスソリューションアーキテクトです。お客様がクラウドベースの分析ソリューションでビジネス課題を解決するのを支援することに情熱を注いでいます。仕事以外では、旅行や家族との時間を楽しんでいます。 この記事は Kiro が翻訳を担当し、Solutions Architect の Kenji Hirai がレビューしました。
本記事は 2026 年 3 月 18 日 に公開された「 Scale fine-grained permissions across warehouses with Amazon Redshift and AWS IAM Identity Center 」を翻訳したものです。 Amazon Redshift は、フルマネージドでペタバイト規模のクラウドデータウェアハウスで、分析ワークロードを容易にスケールできます。複数のビジネスユニットにまたがって分析機能を拡張する際、各ウェアハウスのきめ細かなアクセス許可を効率的に定義・管理する手法が求められます。多くの組織では、Microsoft Entra ID、Okta、Ping などの外部 ID プロバイダー (IdP) を使用してワークフォース ID を一元管理しており、一貫したアクセス制御でデータウェアハウスを効率的に統合する必要があります。この課題に対応するため、 Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可 と AWS IAM Identity Center の統合が導入されました。セキュリティポリシーを一度定義すれば、アカウント内のすべてのウェアハウスに自動的に適用できます。 Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可は、IAM Identity Center を通じて 複数の AWS リージョン で利用できるようになりました。Microsoft Entra ID、Okta、Ping Identity、OneLogin などのサポートされている ID プロバイダー (IdP) の ID を、IAM Identity Center を通じてサポートされている AWS リージョン間で使用できます。レジリエンシーやユーザーへの近接性といったビジネス要件に対応できます。IAM Identity Center をプライマリ AWS リージョンから、データレジデンシー要件に基づいて追加のリージョンに拡張できるようになりました。そのリージョンでは、Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可を使用して複数のウェアハウスに新しいウェアハウスを追加し、水平方向のマルチウェアハウススケーラビリティを実現できます。Redshift フェデレーテッドアクセス許可では、そのリージョン内の任意の Redshift ウェアハウスからデータアクセス許可を一度定義すれば、そのリージョンのアカウント内のすべてのウェアハウスに自動的に適用されます。 本記事では、Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可と AWS IAM Identity Center を実装し、複数のデータウェアハウスにまたがるスケーラブルなデータガバナンスを実現する手順を紹介します。Enterprise Data Warehouse (EDW) がプロデューサーデータウェアハウスとして一元的なポリシー定義を持ち、手動で再設定することなく Sales および Marketing のコンシューマーデータウェアハウスにセキュリティポリシーを自動適用するアーキテクチャを示します。以下の内容を扱います。 データ共有のプロデューサーとコンシューマーの両方に対する IAM Identity Center 接続の設定 Amazon Redshift Serverless 名前空間の AWS Glue Data Catalog への登録 信頼できる ID の伝播のセットアップ 動的データマスキング ポリシーの作成とアタッチによる、顧客の生年月日などの個人情報 (PII) の保護 ユーザーロールに基づくデータの可視性を制御する 行レベルセキュリティ ポリシーの実装 IdP グループから Amazon Redshift データベースロールへのマッピングによるシームレスなアクセス管理 前提条件 開始前に以下を確認してください。 管理者ロール権限を持つ AWS アカウント 上記の管理者ロールにデータレイク管理者権限を割り当てる。手順については、 データレイク管理者の作成 を参照 Lake Formation を使用した IAM Identity Center 統合 を有効化 AWS IAM Identity Center と Amazon Redshift Query Editor v2 のセットアッププロセスを理解するため、 こちらのブログ記事 を確認 AWS アカウントで IAM Identity Center を有効化し、「ソリューション概要」セクションの「ユーザーアクセス」(図 2) に記載されているユーザーとグループを作成 Amazon Redshift スーパーユーザーとして、 AWSIDC:awssso-admin データベースロールに CONNECT 、CREATE TABLE、INSERT、SELECT、sys:secadmin の権限を付与 IAM Identity Center アクセス用の IAM ロール: ステップ 1 : Amazon Redshift アクセス用の IAM ポリシーを作成する 。Amazon Redshift と IAM Identity Center を統合するため、Amazon Redshift データウェアハウスが存在するアカウントに IAM ポリシー (例: aws-idc-policy) を作成します。 { "Version": "2012-10-17", "Statement": [ { "Sid": "VisualEditor0", "Effect": "Allow", "Action": [ "redshift:DescribeQev2IdcApplications", "redshift-serverless:ListNamespaces", "redshift-serverless:ListWorkgroups", "redshift-serverless:GetWorkgroup" ], "Resource": [ "arn:aws:redshift-serverless:<AWS Region>:<AWS Account ID>:workgroup/*", "arn:aws:redshift-serverless:<AWS Region>:<AWS Account ID>:namespace/*" ] }, { "Sid": "VisualEditor1", "Effect": "Allow", "Action": [ "sso:DescribeApplication", "sso:DescribeInstance" ], "Resource": [ "arn:aws:sso:::instance/<IAM Identity Center Instance ID>", "arn:aws:sso::<AWS Account ID>:application/<IAM Identity Center Instance ID>/*" ] } ] } ステップ 2 : IAM ロールを作成する 。Amazon Redshift データウェアハウスが存在するアカウントに IAM ロール (Amazon Redshift – カスタマイズ可能) を作成します (例: IAMIDCRedshiftRole)。 ステップ 3 : IAM ポリシーをロールにアタッチする 。上記のロールに以下の 2 つの IAM ポリシーをアタッチします。 aws-idc-policy AmazonRedshiftFederatedAuthorization ステップ 4 : 信頼関係を更新する 。このロールの信頼関係を以下のように更新します。 {   "Version": "2012-10-17",   "Statement": [     {       "Effect": "Allow",       "Principal": {         "Service": "redshift.amazonaws.com"       },       "Action": [         "sts:AssumeRole",         "sts:SetContext"       ]     }   ] } 注意: AmazonRedshiftFederatedAuthorization は、Amazon Redshift フェデレーテッド認可でクエリを実行するために必要な権限を提供するマネージドポリシーです。 上記の IAMIDCRedshiftRole IAM ロールをすべての Redshift Serverless エンドポイントにアタッチ ソリューション概要 以下のアーキテクチャ図は、マルチウェアハウス環境でのフェデレーテッドアクセス許可を示しており、セキュリティポリシーを自動適用し、Amazon Redshift ウェアハウス全体でスケーラブルなデータガバナンスを実現します。 図 1: サンプルアーキテクチャ図 ユーザーアクセス ユーザーは、Amazon Redshift Query Editor v2、サードパーティの SQL エディター (DBeaver や SQL Workbench など)、またはカスタムクライアントアプリケーションを通じてデータウェアハウスにアクセスできます。どのアクセス方法でも一貫したセキュリティが適用されます。 図 2: ソリューション概要フロー AWS IAM Identity Center の統合 IAM Identity Center は、シングルサインオンによる一元的な認証を提供し、組織内のロールに基づいて権限を自動的に割り当てます。ID フェデレーションにより企業の ID が AWS リソースに直接リンクされ、ウェアハウスへのアクセス前に認証が行われます。 マルチウェアハウスアーキテクチャ このアーキテクチャでは、異なるビジネス機能を持ちつつ、セキュリティポリシーを共有する 3 つのデータウェアハウスを使用します。 Enterprise Data Warehouse (EDW) EDW は、エンタープライズデータの中央リポジトリです。顧客データと製品データは Customer Profile Database (CPD) に格納されており、管理者は 2 つのセキュリティポリシーを定義します。 動的データマスキング (DDM) – Sales Analyst と Marketing Analyst の両方のロールに対して、顧客の生年月日 (DOB) フィールドをマスキングし、分析作業を妨げずに個人情報 (PII) を保護します 行レベルセキュリティ (RLS) – ユーザーロールに基づいて製品の可視性を制御します。Sales Analyst は launched (発売済み) の製品のみ表示でき、Marketing Analyst は launched と planned (計画中) の両方の製品を表示できます EDW は AWS Glue Data Catalog に登録され、統合メタデータリポジトリを作成し、アカウント内のウェアハウス全体でデータを検出可能にします。この登録がフェデレーテッドアクセス許可の基盤となり、ポリシーを自動伝播できます。 Sales データウェアハウス Sales Analyst が顧客テーブルと製品テーブルをクエリすると、フェデレーテッドアクセス許可により EDW で定義したポリシーが自動的に適用されます。EDW の登録済み名前空間が外部データベースとして自動マウントされるため、ポリシーの再作成や再アタッチは不要です。顧客の DOB フィールドはマスキングされ、 launched の製品のみが表示されます。追加設定は不要です。 Marketing データウェアハウス Marketing データウェアハウスも EDW のセキュリティポリシーを自動的に継承します。顧客の DOB フィールドは PII 保護のためマスキングされたままですが、RLS ポリシーにより Marketing Analyst は launched と planned の両方の製品を表示できます。マーケティング計画に必要な広範な可視性が確保されます。アクセス制御はユーザーロールに基づいて自動的に適用されます。 ウォークスルー ここでは 2 つの Amazon Redshift IAM Identity Center (IDC) 接続を作成します。 データ共有プロデューサー Identity Center 接続 – edw-wg Amazon Redshift Serverless ワークグループに割り当て データ共有コンシューマー Identity Center 接続 – cpd-sales-wg および cpd-marketing-wg Amazon Redshift Serverless ワークグループに割り当て Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可用の IDC 接続をセットアップする ウェアハウス間のフェデレーテッド認証を有効にする IAM Identity Center 接続を設定します。プロデューサー (ポリシー定義) ウェアハウスとコンシューマーウェアハウス用に個別の接続を作成します。 Amazon Redshift データ共有プロデューサー IDC 接続を設定する プロデューサー IDC 接続を作成するには: Amazon Redshift Serverless コンソール を開きます。 ハンバーガーメニューを展開して IAM Identity Center connections を選択します。 Create application を選択します。 「Amazon Redshift connected to IAM Identity Center」と表示されていることを確認し、 Next を選択します。 接続プロパティを設定します。 IAM Identity Center display name に名前を入力します。 Managed application name に rs-multicluster-producer と入力します。 Identity provider namespace で AWSIDC を選択します。 IAM role for IAM Identity Center access で、作成した IAM ロールを選択します。 Query editor v2 application で Enable the query editor v2 application を選択します。 IAM Identity Center application type で Configure Amazon Redshift federated permissions using AWS IAM Identity Center (Recommended) を選択します。 Next を選択します。 Configure client connections that use third-party IdPs で No を選択します。 Next を選択します。 設定内容を確認し、 Create Application を選択します。 図 3: データ共有プロデューサー IDC 接続 データ共有コンシューマー IDC 接続を設定する コンシューマー IDC 接続を作成するには: Amazon Redshift Serverless コンソール を開きます。 ハンバーガーメニューを展開して IAM Identity Center connections を選択します。 Create application を選択します。 「Amazon Redshift connected to IAM Identity Center」と表示されていることを確認し、 Next を選択します。 接続プロパティを設定します。 IAM Identity Center display name に名前を入力します。 Managed application name に rs-multicluster-consumer と入力します。 Identity provider namespace で AWSIDC を選択します。 IAM role for IAM Identity Center access で、作成した IAM ロールを選択します。 Query editor v2 application には「You already have a query editor v2 application.」という通知が表示されます。 IAM Identity Center application type で Configure Amazon Redshift federated permissions using AWS IAM Identity Center (Recommended) の選択を 解除 します。 Trusted identity propagation で AWS Lake Formation access grants と Amazon Redshift Connect を選択します。 Next を選択します。 Configure client connections that use third-party IdPs で No を選択します。 Next を選択します。 設定内容を確認し、 Create Application を選択します。 Amazon Redshift データ共有コンシューマーの IDC アプリケーションに必要なユーザーまたはグループを追加します。 図 4: データ共有コンシューマー IDC 接続 Amazon Redshift Serverless 名前空間に対するデータ共有プロデューサー IDC 接続を設定する フェデレーテッドアクセス許可で edw-ns 名前空間を登録するには: Amazon Redshift Serverless Namespace コンソール を開きます。 Amazon Redshift Serverless 名前空間を選択します。 Actions を選択し、 Register with AWS Glue Data Catalog を選択します。 Register with Amazon Redshift federated permissions を選択します。 Amazon Redshift federated permissions using AWS IAM Identity Center を選択します。 Register を選択します。 図 5: Amazon Redshift データウェアハウスの Glue Data Catalog への登録 図 6: Amazon Redshift データウェアハウスの Glue Data Catalog への登録 注意: 作成したデータ共有プロデューサー IDC 接続の IAM Identity Center マネージドアプリケーション ARN が使用されます。 既存の Serverless 名前空間に対するデータ共有コンシューマー IDC 接続を設定する cpd-sales-wg と cpd-marketing-wg の Serverless ワークグループについて、登録済みの IAM Identity Center 接続から以下の情報を収集します。 IAM Identity Center display name Identity provider namespace IAM Identity Center managed application ARN IAM role for IAM Identity Center access データベース管理者として以下の SQL コマンドを実行し、統合を有効にします。 CREATE IDENTITY PROVIDER "<IAM Identity Center display name>" TYPE AWSIDC NAMESPACE '<Identity provider namespace>' APPLICATION_ARN '<IAM Identity Center managed application ARN>' IAM_ROLE '<IAM role for IAM Identity Center access>'; 既存の ID プロバイダーを変更するには、ALTER IDENTITY PROVIDER コマンドを使用します。 ALTER IDENTITY PROVIDER "<IAM Identity Center display name>" NAMESPACE '<Identity provider namespace>'; ALTER IDENTITY PROVIDER "<IAM Identity Center display name>" IAM_ROLE default | '<IAM role for IAM Identity Center access>'; プロデューサーでのデータ準備とアクセス設定 顧客テーブルと製品テーブルを作成し、サンプルデータをロードし、DDM と RLS ポリシーを作成してデータベースロールにアタッチし、SELECT 権限を付与します。 EDW でデータを準備する IDC Admin ユーザーとして EDW データウェアハウスに接続し、以下の SQL コマンドを実行します。 product テーブルを作成します。 CREATE TABLE product ( product_id VARCHAR(16) NOT NULL, product_desc VARCHAR(200), current_price NUMERIC(7,2), wholesale_cost NUMERIC(7,2), category_desc VARCHAR(50), launch_status VARCHAR(50) ); サンプルの product データを挿入します。 INSERT INTO product VALUES ('AAAAAAAAAFNPEAAA','At least concerned authors adopt just brown, federal',7.12,4.12,'Jewelry','launched'), ('AAAAAAAAOAAGDAAA','Complex services may not find totally changing accountants. Tiny, available ministers could not know always systems. Hot, male speakers discer',8.08,5.49,'Shoes','planned'), ('AAAAAAAAMJJMCAAA','Rows could prevent political, old duties. Just international stairs would regret police. Conditions discard always interesting, warm years. Present jobs shall take nearby relatively dreadful',8.18,5.31,'Jewelry','launched'), ('AAAAAAAAKLBLBAAA','Suddenly external sentences believe then by the assets. Simultaneously young feet could not probe separately shortly new men. Forms work again individuals. Images',17.96,7.9,'Shoes','launched'), ('AAAAAAAAMBKMCAAA','Clubs see finally materials. Significant objectives sell fairly left, civil power',3.18,3.84,'Books','launched'), ('AAAAAAAACPCAAAAA','Perhaps past preferences tell rather to a accounts. Very common feet can command never available final years; minutes expect recent, due employers. Altogether english shoes',9.84,0.19,'Electronics','planned'), ('AAAAAAAAFOIABAAA','More responsible characters go left factors. Championships shall stand twice new, important shows. Books could receive too able, national pounds. Central',3.55,2.2,'Books','launched'), ('AAAAAAAAKGBIAAAA','High, political changes shall not',9.55,5.25,'Electronics','launched'); customer テーブルを作成します。 CREATE TABLE customer ( customer_id VARCHAR(16), first_name VARCHAR(20), last_name VARCHAR(30), date_of_birth VARCHAR(32), birth_country VARCHAR(20), email_address VARCHAR(50) ); サンプルの customer データを挿入します。 INSERT INTO customer VALUES ('AAAAAAAALAMKHGBA','Regina','Coleman','1926-12-17','GAMBIA','Regina.Coleman@JFFRohn.edu'), ('AAAAAAAAMCMKHGBA','John','Bell','1980-01-07','PAPUA NEW GUINEA','John.Bell@uAR3ReP6yi9eDyq.edu'), ('AAAAAAAANNMKHGBA','Jacqueline','Pierre','1951-12-18','SAMOA','Jacqueline.Pierre@UQcHfFDEVdj.com'), ('AAAAAAAANFNKHGBA','Frank','Mackay','1992-03-19','HONG KONG','Frank.Mackay@MzAI.edu'), ('AAAAAAAAOGNKHGBA','Anthony','Miller','1948-02-26','ALGERIA','Anthony.Miller@pF.edu'), ('AAAAAAAACPOKHGBA','Bradley','Sawyer','1956-12-25','ZAMBIA','Bradley.Sawyer@kAXu5U1MrRRkAqP.edu'), ('AAAAAAAAOIPKHGBA','Robert','Carter','1951-01-01','UNITED STATES','Robert.Carter@Z.org'), ('AAAAAAAALJPKHGBA','Ola','High','1980-11-19','SUDAN','Ola.High@N.org'); DDM と RLS ポリシーを作成する customer の生年月日に対するマスキングポリシーを作成します。 CREATE MASKING POLICY mask_cust_dob WITH (date_of_birth VARCHAR(32)) USING (sha2(date_of_birth, 256)::TEXT); product の launch_status に対する RLS ポリシーを作成します。 CREATE RLS POLICY product_launch_status WITH (launch_status VARCHAR(50)) USING (launch_status = 'launched'); CREATE RLS POLICY product_launch_status_all WITH (launch_status VARCHAR(50)) USING (launch_status IN ('launched','planned')); Sales グループと Marketing グループ用の Amazon Redshift DB ロールを作成する データベースロールを作成します。 CREATE ROLE "AWSIDC:awssso-sales"; CREATE ROLE "AWSIDC:awssso-marketing"; マスキングポリシーをアタッチする 両方のロールにマスキングポリシーをアタッチします。 ATTACH MASKING POLICY mask_cust_dob ON dev.public.customer (date_of_birth) TO ROLE "AWSIDC:awssso-marketing"; ATTACH MASKING POLICY mask_cust_dob ON dev.public.customer (date_of_birth) TO ROLE "AWSIDC:awssso-sales"; RLS ポリシーをアタッチし、product テーブルで RLS を有効にする RLS ポリシーをアタッチし、行レベルセキュリティを有効にします。 ATTACH RLS POLICY product_launch_status ON dev.public.product TO ROLE "AWSIDC:awssso-sales"; ATTACH RLS POLICY product_launch_status_all ON dev.public.product TO ROLE "AWSIDC:awssso-marketing"; ALTER TABLE dev.public.product ROW LEVEL SECURITY ON; テーブルへのアクセス権をロールに付与する 両方のロールに SELECT 権限を付与します。 GRANT SELECT ON dev.public.customer TO ROLE "AWSIDC:awssso-sales"; GRANT SELECT ON dev.public.customer TO ROLE "AWSIDC:awssso-marketing"; GRANT SELECT ON dev.public.product TO ROLE "AWSIDC:awssso-sales"; GRANT SELECT ON dev.public.product TO ROLE "AWSIDC:awssso-marketing"; IAM Identity Center を使用して Sales データウェアハウスに接続する Sales Analyst として接続するには: IAM Identity Center 接続タイプを使用して、ユーザー sales-analyst として cpd-sales-wg に接続し、 Continue を選択します。 sales-analyst を選択し、 Next を選択します。 パスワードを入力し、 Sign in を選択します。 MFA コードを入力し、 Sign in を選択します。 Amazon Redshift Query Editor V2 で sales-analyst として cpd-sales-wg に接続できました。 図 7: IDC ユーザーとして Sales データウェアハウスに接続 Sales Analyst として共有データをクエリする 動的データマスキングが適用された customer テーブルをクエリします。 SELECT * FROM "dev@edw-ns"."public"."customer"; customer テーブルにアクセスできますが、 date_of_birth 列の機密情報は暗号化されています。 図 8: customer テーブルの結果セット 行レベルセキュリティが有効な product テーブルをクエリします。 SELECT * FROM "dev@edw-ns"."public"."product"; product テーブルにアクセスできますが、 launch_status が launched の製品のみ表示されます。 図 9: product テーブルの結果セット 注意: Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可にオンボードされたデータ共有プロデューサーに IDC ユーザーとして接続するには、スーパーユーザーが接続しようとする IDC ユーザーに CONNECT 権限を付与する必要があります。CONNECT 権限の付与方法については、Amazon Redshift データベースデベロッパーガイドの Connect privileges を参照してください。 IAM Identity Center を使用して Marketing データウェアハウスに接続する Marketing Analyst として接続するには: IAM Identity Center 接続タイプを使用して、ユーザー marketing-analyst として cpd-marketing-wg に接続し、 Continue を選択します。 marketing-analyst を選択し、 Next を選択します。 パスワードを入力し、 Sign in を選択します。 MFA コードを入力し、 Sign in を選択します。 Amazon Redshift Query Editor V2 で marketing-analyst として cpd-marketing-wg に接続できました。 図 10: IDC ユーザーとして Marketing データウェアハウスに接続 Marketing Analyst として共有データをクエリする 動的データマスキングが適用された customer テーブルをクエリします。 SELECT * FROM "dev@edw-ns"."public"."customer"; customer テーブルにアクセスできますが、 date_of_birth 列の機密情報は暗号化されています。 図 11: customer テーブルの結果セット 行レベルセキュリティが有効な product テーブルをクエリします。 SELECT * FROM "dev@edw-ns"."public"."product"; product テーブルにアクセスでき、 launch_status が launched と planned の両方の製品を表示できます。 図 12: product テーブルの結果セット 追加リソース フェデレーテッドアクセス許可の実装について詳しくは、以下のリソースを参照してください。 AWS ドキュメント Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可 Amazon Redshift クエリエディタ v2 からの接続のトラブルシューティング AWS ブログ Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可でマルチウェアハウスのデータガバナンスを簡素化する Integrate Identity Provider (IdP) with Amazon Redshift Query Editor V2 and SQL Client using AWS IAM Identity Center for seamless Single Sign-On AWS デモ Introducing Amazon Redshift Federated Permissions 主なメリット 管理負荷の削減 – ポリシーを一元管理し、手動での複製が不要になります 一貫したセキュリティの適用 – ウェアハウスやアクセス方法を問わず、ポリシーが均一に適用されます ID のシームレスな統合 – 信頼された ID 伝播とロールベースのアクセス制御で、既存の ID プロバイダーとのシングルサインオンを実現します まとめ 本記事では、Amazon Redshift フェデレーテッドアクセス許可と AWS IAM Identity Center の統合により、セキュリティポリシーを一元管理し、マルチウェアハウスのデータガバナンスを効率化する方法を紹介しました。動的データマスキングと行レベルセキュリティのポリシーを Enterprise Data Warehouse で一度定義すれば、同じアカウントとリージョン内の接続先データウェアハウスに自動適用されます。 著者について Raghu Kuppala Raghu は、データベース、データウェアハウジング、分析分野の経験を持つ Analytics Specialist Solutions Architect です。仕事以外では、さまざまな料理を試したり、家族や友人と過ごすことを楽しんでいます。 Satesh Sonti Satesh は、アトランタを拠点とする Principal Specialist Solutions Architect で、エンタープライズデータプラットフォーム、データウェアハウジング、分析ソリューションの構築を専門としています。世界中の銀行・保険業界のクライアント向けに、データ資産の構築や複雑なデータプラットフォームプログラムのリードに 20 年以上の経験があります。 Sandeep Adwankar Sandeep は、Amazon SageMaker Lakehouse の Senior Product Manager です。カリフォルニアのベイエリアを拠点に、世界中のお客様と連携してビジネスおよび技術要件を製品に反映し、データの管理、セキュリティ、アクセスの改善を支援しています。 Sumukh Bapat Sumukh は、AWS のソフトウェアエンジニアです。認証、接続性、セキュリティにおける複雑な問題を解決し、Amazon Redshift のカスタマーエクスペリエンス向上に取り組んでいます。ID 管理、セキュアアクセス、分散データベースシステムに注力しています。 Praveen Kumar Ramakrishnan Praveen は、AWS のシニアソフトウェアエンジニアです。ファイルシステム、ストレージ仮想化、ネットワークセキュリティなど、さまざまな分野で約 20 年の経験があります。AWS では Redshift のデータセキュリティ強化に注力しています。 Ashish Ghodke Ashish は、Amazon Web Services のソフトウェアエンジニアで、Amazon Redshift などの大規模クラウドサービス向けの ID およびアクセス管理システムに取り組んでいます。分散システム向けのセキュアな認証とシングルサインオンソリューションの構築に注力しています。分散システム、クラウドセキュリティ、スケーラブルで信頼性の高いインフラストラクチャの構築に情熱を持っています。 この記事は Kiro が翻訳を担当し、Solutions Architect の Kenji Hirai がレビューしました。
本ブログは、キヤノン株式会社イメージング事業本部様と Amazon Web Services Japan が共同で執筆しました。 こんにちは、AWS ソリューションアーキテクトの木村です。 2025 年 6 月から 12 月にかけて、キヤノン株式会社のイメージング事業本部様と共に生成 AI ハッカソンを実施しましたので、その取り組みと成果についてご紹介します。 1. 取り組みの背景 キヤノン株式会社様は、イメージング技術を核とした幅広い事業を展開するグローバル企業です。デジタルトランスフォーメーションの加速に伴い、同社では開発業務や社内業務の効率化に向けて、生成AI技術の活用を推進しています。 イメージング事業本部では、日々の開発業務において、データ分析、調査、UI開発、社内ナレッジ共有など、様々な課題を抱えていました。これらの課題を解決し、かつエンジニア自身が生成AI技術を深く理解するための取り組みとして、今回のハッカソン開催に至りました。 本ハッカソンは「社内業務の課題を生成AIで解決する」をテーマに、以下の3つの狙いを掲げて開催されました。 プロトタイプ創出スキルの習得 アイデアから実装まで一気通貫で体験し、価値創造のプロセスを実践的に学習する プロジェクト間の技術交流促進 各プロジェクトに閉じがちなクラウドアプリ開発の知見を共有し、チーム横断での技術交流を活性化する 生成AI開発の理解促進 AIを「使う側」から「作る側」に回ることで、生成AIの仕組みや使い方への理解を深める 2. 生成AIハッカソンの概要 開催期間・参加者数・チーム構成 開催期間: 2025 年 6 月~ 12 月(約 6 ヶ月間) 参加者数: 約 20 名(イメージング事業本部所属のエンジニア) チーム構成: 5 チーム(各チーム 3 ~ 4 名) 全体スケジュール 本ハッカソンは、約6ヶ月間にわたるプログラムとして設計されました。今回は通常業務と並行して取り組んだため、期間を少し長く確保しました。 キックオフ後に、AWS生成AIサービスの勉強会、アイデアソン、プロトタイピングを経て最終評価会を行いました。 アイデアソン アイデアソンでは、 ML Enablement Workshop を活用したアイデア創出ワークショップを開催しました。ML Enablement Workshop とは、取り組みに必要なメンバーを組成し、生成 AI を活用したユースケースと解決策を特定することを目的としたワークショップです。ワークショップでは、各チームごとに異なるテーマを設定し、Amazon 流のイノベーション創出手法である “Working Backwards” を通じて顧客の明確化・顧客の課題と機会の特定・解決策の特定を行いました。 最終的には、Amazon の文書化の文化にならって、決定した解決策をプレスリリース/FAQ の形にまとめあげました。初めてプレスリリース/FAQ に取り組んだ参加者からは「開発前にプレスリリースを書くのが新鮮だった。文書化することで曖昧な表現が避けられチーム感の共通認識がとりやすくなるように感じた」とコメントをいただきました。 プロトタイピング アイデアソンで生まれた各アイデアの価値を実証する目的で、実際に動くプロトタイプの開発に取り組みました。ハッカソンの運営からは、「Amazon Q Developerでコード/ドキュメント生成・レビューを効率化するなど生成 AI をフル活用しましょう」「失敗を恐れず、試行錯誤を楽しもう」といった案内が出され、参加メンバーはその方針のもと、積極的に新しい技術やツールを取り入れながら開発を進めました。 3. 各チームの成果発表 6 ヶ月間の活動を通じて、5 つのチームが実用レベルのサービスを開発しました。最終成果発表会では、両社の管理職参加のもと、各チームの取り組みを発表しました。 ハッカソンということもあり以下の観点で評価を行い、最優秀チームを選定しました。 提案価値: 提案する価値が明確で共感できるか、ソリューションが課題に対して適切か 技術的優位性: サービス選定やシステム構成が合理的か、価値向上のための技術的な工夫がみられるか アプリケーション品質: 実際の業務で継続利用できるレベルか、展開後の運用まで考えられているか 生成AIの適合度: サービスに生成AIの利点がうまく活かせているか、開発者として生成AIを使いこなせているか 各チームが取り組んだテーマは、データ分析の効率化、社内ナレッジの活用、開発プロセスの自動化など多岐にわたりましたが、いずれも Amazon Bedrock や Amazon Bedrock AgentCore といった AWS の生成 AI サービスを活用し、実際の業務課題を解決するシステムとして発表されました。また、全てのチームが Amazon Q Developer を活用し、開発の効率化を実現していました。 どのチームの発表も思わず「わお!」とコメントしたくなるようなデモ・発表内容で、審査員の皆様も採点に頭を悩ませていた様子でした。 最優秀賞を受賞したチームが開発したシステムのアーキテクチャ 4. 得られた効果 本ハッカソンを通じて、キヤノン株式会社イメージング事業本部様からは以下のような効果が得られたとコメントをいただいています。 技術スキルの向上 参加者全員が Amazon Bedrock や Amazon Q Developer を実際に使いこなし、生成 AI アプリケーションを「作る側」の経験をしました。特に、プロンプトエンジニアリングや RAG 、AI Agent の実装など、実践的なスキルの習得に繋がりました。 開発生産性の向上 Amazon Q Developer を活用することで、コード生成やドキュメント作成の効率が大幅に向上しました。参加者からは「従来であれば数週間かかっていた開発が、数日で完了できた」という声も聞かれ、生成 AI を活用した開発の可能性を実感する機会となりました。 組織横断のコラボレーション促進 普段は異なるプロジェクトで業務を行っているメンバーがチームを組むことで、技術知見の共有やコミュニケーションが活性化しました。交流が増えたことにより、組織全体の技術力向上につながっています。 5. 参加者の声 ハッカソン終了後に実施したアンケートから、参加者の声をご紹介します。 「生成 AI を活用したシステム開発を一から経験できたことで、生成 AI の可能性と限界の両方を知ることができました。今後の業務でも積極的に活用していきたいです。」 「Amazon Q Developer の支援により、普段触れないフロントエンド開発にも挑戦できました。『作りたいもの』に集中できる環境が整っていたと感じます。」 「Working Backwards の手法でプレスリリースを先に書くアプローチが印象的でした。開発を始める前に『誰のために、何を作るのか』を明確にすることの重要性を学びました。」 「他部門のメンバーと協力してゼロからシステムを作り上げる経験は、通常業務ではなかなか得られません。チームワークの大切さを再認識しました。」 6. まとめ 約 6 ヶ月間にわたるキヤノン株式会社イメージング事業本部様との生成 AI ハッカソンは、5 つのチームが実用レベルのプロトタイプを完成させるという大きな成果を収めました。 本ハッカソンで開発されたプロトタイプのうち、いくつかは実際の業務への展開が検討されています。また、今回の取り組みで得られた知見やノウハウを社内に展開し、生成 AI 活用の裾野を広げていく予定です。今回のハッカソンを一過性のイベントで終わらせず、継続的なイノベーション創出の仕組みとして発展させていくことをイメージング事業本部様は目指しています。 最後に、本ハッカソンの企画・運営にご尽力いただいたキヤノン株式会社イメージング事業本部の皆様、そして熱意を持って取り組んでいただいた参加者の皆様に心より感謝申し上げます。 執筆者 キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG技術第二開発センター 運営:草壁 悠希 様 キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG技術第二開発センター 運営:田代 大地 様 キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG技術第二開発センター 運営:南 佑太朗 様 Amazon Web Services Japan ソリューションアーキテクト 木村 直登(Naoto Kimura)
本ブログは 2026 年 2 月 26 日に公開された AWS Blog “ Inside AWS Security Agent: A multi-agent architecture for automated penetration testing ” を翻訳したものです。 AI エージェントには従来、学習した情報を保持できない、短期間を超えて自律的に動作できない、常に人間による監視が必要である、という 3 つの根本的な制約がありました。AWS はフロンティアエージェントによってこれらの制約に対処しています。フロンティアエージェントとは、複雑な推論や多段階の計画立案を行い、数時間から数日にわたって自律的に実行できる新しいカテゴリの AI です。マルチエージェントコラボレーションは、複数のステップと多様な専門知識を必要とする複雑なワークフローに対応するための強力なアプローチとして登場しました。例えば、ソフトウェア開発ではエージェントがコード生成、レビュー、テストを担当し、科学研究ではエージェントが文献レビュー、実験設計、データ分析で協力し、サイバーセキュリティでは専門のエージェントが偵察、脆弱性分析、エクスプロイトの検証を行います。 この記事では、従来は数週間もの期間と多くのリソースを必要としていたペネトレーションテストを、このテクノロジーによってどのように自動化したかについて説明します。また、 AWS Security Agent に組み込まれたペネトレーションテストコンポーネントのアーキテクチャについても、技術的な詳細を解説します。 自動セキュリティテストというコンセプト自体は新しいものではありません。ペネトレーションテストツールや脆弱性スキャナーは何十年も前から存在しています。しかし、大規模言語モデル (LLM) の最近の進歩により、フロンティアエージェントはアプリケーションの動作を推論し、フィードバックに基づいて戦略を適応させ、従来のツールでは不可能だった方法でコンテキストを理解できるようになりました。専門化されたエージェントのネットワークを構築することで、ますます複雑化するセキュリティの課題に対処できます。あるエージェントがアタックサーフェスをマッピングしている間に、別のエージェントがビジネスロジックの欠陥を分析し、検出結果を検証し、実際の悪用可能性に基づいて脆弱性の優先順位付けを行います。悪用可能性のコンテキストは、スウォームワーカーエージェント (群れとして協調動作するエージェント) による実際のエクスプロイトの試行、専門のバリデーターによる独立した再検証、共通脆弱性評価システム (CVSS) に基づく LLM 駆動のスコアリングの組み合わせから導き出されます。 AWS は AWS Security Agent 向けに自動ペネトレーションテストを開発しました。この機能は、専門化されたセキュリティエージェントをオーケストレーションし、協調して脆弱性を検出するマルチエージェントペネトレーションテストシステムで構成されています。システムはまず複数タイプのスキャンでベースラインカバレッジを確立し、次に事前定義された静的タスクを使って広範な偵察を行い、アプリケーションのサーフェスをマッピングして初期の攻撃ベクトルを特定します。これらの検出結果に基づいて、エージェンティックシステムは特定のアプリケーションコンテキストに合わせた集中的なテストタスクを動的に生成します。検出されたエンドポイント、ビジネスロジックのパターン、潜在的な脆弱性チェーンを推論し、アプリケーションの応答に応じて適応する、ターゲットを絞ったセキュリティテストを作成します。これらの専門的な機能を組み合わせることで、システムは主要なリスクカテゴリにまたがる複雑なセキュリティシナリオに対処できます。単一の脆弱性検出にとどまらず、複雑な連鎖攻撃も実行します。例えば、情報漏洩の欠陥と権限昇格を組み合わせて機密リソースにアクセスしたり、安全でない直接オブジェクト参照 (IDOR) と認証バイパスを連鎖させたりします。 図 1: AWS Security Agent ペネトレーションテストコンポーネントの構成図 システムアーキテクチャ このセクションでは、システムの主要コンポーネントについて説明します。認証と初期アクセス、ベースラインスキャン、専門化されたエージェントスウォームによる多段階探索、そして検証とレポート生成について順に取り上げます。 認証と初期アクセス システムはまず、多様なアプリケーションアーキテクチャに対応した認証処理を行うインテリジェントなサインインコンポーネントから開始します。このコンポーネントは LLM ベースの推論と決定論的メカニズムを組み合わせ、サインインページの検出、提供された認証情報による試行、後続のテストフェーズに向けた認証済みセッションの維持を行います。このアプローチはブラウザツールを使用し、さまざまなアプリケーション構造やターゲット環境に自動的に適応します。開発者は、ターゲットアプリケーションに合わせたカスタムサインインプロンプトを任意で提供できます。 ベースラインスキャンフェーズ 認証が完了すると、システムは専門化されたスキャナーを並列実行し、包括的なベースラインスキャンを開始します。ブラックボックステストでは、ネットワークスキャナーが Web アプリケーションの自動セキュリティテストを実施し、実際のトラフィックのやり取りを生成して、脆弱性の候補となるエンドポイントを特定します。ホワイトボックステストの場合は、リポジトリが利用可能であれば、コードスキャナーがソースコードの深層分析を行い、複数のカテゴリにわたる分析結果をまとめたドキュメントを生成します。さらに追加の専門スキャナーがこれらの機能を補完し、さまざまな観点から脆弱性を特定して初期のセキュリティカバレッジを確立します。 多段階探索 システムは、連携して動作する 2 つの異なる探索アプローチを採用しています。 マネージド実行 は、クロスサイトスクリプティング、安全でない直接オブジェクト参照、権限昇格などの主要なリスクカテゴリにまたがる事前定義された静的タスクで動作します。このコンポーネントは各リスクタイプに対して厳選されたタスクを実行し、体系的に包括的なカバレッジを確保します。次のフェーズでは、 ガイド付き探索 が動的かつインテリジェンス駆動のアプローチを取ります。このコンポーネントは、検出されたエンドポイント、検証済みの検出結果、コード分析ドキュメントを取り込み、アプリケーション固有の攻撃ポイントについて推論します。2 つのステージで動作し、まず未探索のリソースと潜在的な脆弱性チェーンを特定してコンテキストに応じたペネトレーションテスト計画を生成し、次にこれらの動的に生成されたタスクの実行をプログラム的に管理します。ガイド付き探索は、アプリケーションの応答や発見されたパターンに基づいて進化する適応型のタスクとして実行されます。 専門化されたエージェントスウォーム 両方の探索アプローチは、専門化されたスウォームワーカーエージェントに作業をディスパッチします。各エージェントは特定のリスクタイプ向けに設定されており、コードエクゼキューター、Web ファザー、共通脆弱性識別子 (CVE) インテリジェンスのための National Vulnerability Database (NVD) 検索、脆弱性固有のツールなど、包括的なペネトレーションテストツールキットを備えています。これらのワーカーは割り当てられたタスクを実行し、タイムアウト管理と構造化されたレポーティングを行います。 検証とレポート生成 専門化されたエージェントが潜在的なセキュリティリスクを特定すると、脆弱性のタイプ、影響を受けるエンドポイント、悪用の証拠、技術的なコンテキストを含む構造化されたレポートを生成します。しかし、自動ペネトレーションテストには重大な課題があります。LLM エージェントは一見もっともらしい検出結果を生成することがあるため、厳密な検証が不可欠です。候補となる検出結果は、決定論的バリデーターと、能動的にエクスプロイトを試みる専門の LLM ベースのエージェントの両方による検証を受けます。AWS はアサーションベースの検証手法を採用しています。セキュリティの専門家が記述した自然言語のアサーションにより、実際の攻撃の振る舞いに関する深い知識がエンコードされ、限定的な決定論的チェックと比べて回避が大幅に困難な、明示的で構造化された証明が要求されます。検証済みの検出結果は CVSS 分析による重大度評価を受け、検証結果、重大度スコア、悪用の証拠とともに最終レポートに統合されます。このレポートは、効果的な修復に向けた、信頼度の高い実用的な脆弱性情報を提供するよう設計されています。 ベンチマーク システムの評価では、自動ベンチマークに加えて人間による評価も実施しました。実際の実行トレースを分析してエラーパターンの分類体系を構築し、頻出パターンの特定を通じてソリューションを反復的に改善しました。ここでは、 CVE Bench パブリックベンチマークでの結果を報告します。CVE Bench は、NVD から収集された重大度 Critical の CVE 40 件を含む脆弱な Web アプリケーション群で構成されており、実際のエクスプロイトに対する AI エージェントの評価に使用されます。各アプリケーションには自動エクスプロイトのリファレンスが含まれており、LLM ベースのエージェントが脆弱性の悪用を試みます。 成功の測定には、攻撃成功率 (ASR) を使用します。ASR は、アプリケーションの脆弱性に対する悪用の成功率として定義されます。CVE Bench では、エージェントがエクスプロイトの成功を検証するためにクエリできるグレーダー (自動採点プログラム) が使用されており、明示的なキャプチャーザフラグ (CTF) 指示が提供されます。以下の 3 つの構成で評価を行いました。 CTF 指示と各ツール呼び出し後のグレーダーチェックを含む構成で、CVE Bench v2.0 において ASR 92.5% を達成 (一部の課題では、このフィードバックがなければエージェントが成功を検証できない blind exploitation が含まれる)。 CTF 指示やグレーダーフィードバックなしの構成で ASR 80% を達成。これは、エージェントが観察可能な結果を通じて自己検証する必要がある実環境の条件をより適切に反映しています。また、エージェントが LLM のパラメトリック知識に基づいて一部の CVE を特定できることも確認しました。次に示す bash コマンドでは、モデルが CVE を名前で明示的に参照しています。 このため、ナレッジカットオフ日が CVE Bench v1.0 のリリースより前の LLM を使用して追加実験を実施し、ASR 65% を達成しました。 以下のコード例は、LLM エージェントがトレーニングデータに含まれる CVE-2023-37999 に関するパラメトリック知識を活用し、悪用の前提条件を確認する bash コマンドを発行している様子を示しています。 # HT Mega 2.2.0 has a known vulnerability – CVE-2023-37999 # It has an unauthenticated privilege escalation via the REST API settings endpoint # Let's check if registration is enabled curl -s http://target:9090/wp-login.php?action=register -I | head -10 AWS は、エージェントの継続的な評価と、より新しく難度の高いベンチマークへの対応を通じて、セキュリティ脆弱性検出のフロンティアを押し広げることに取り組んでいます。 テストとコンピューティング予算の最適化 ペネトレーションテストにおける課題の 1 つは、悪用 (exploitation) と探索 (exploration) のバランスです。深さ優先のアプローチでは、特定の方向に計算リソースを過度に消費し、限られたコンピューティング予算のもとで脆弱性カバレッジが低下するおそれがあります。一方、幅優先のアプローチでは、複数の手法を組み合わせたテストを要する深い脆弱性を見落とす可能性が高くなります。したがって、与えられたコンピューティング予算でカバレッジを最大化するには、両アプローチのバランスが必要です。本システムの設計は、このハイブリッドアプローチの実現を目指しています。さまざまな脆弱性や異なる Web アプリケーションに汎化可能な、より効率的な動的ソリューションの開発は、今後の研究課題です。 もう 1 つの課題は非決定性です。基盤となる LLM の特性上、ペネトレーションテストの結果は実行のたびに異なる可能性があります。実行ごとに異なる検出結果が得られると、ユーザーの混乱を招くおそれがあります。この問題を軽減する方法の 1 つは、複数回実行し、それらの検出結果を統合することです。 まとめ 本記事で紹介したマルチエージェントアーキテクチャは、専門化されたエージェントが連携して複雑なペネトレーションテストのワークフローに取り組む仕組みを示しています。インテリジェントな認証とベースラインスキャンから、マネージド実行とガイド付き探索を経て、厳密な検証に至るまでの一連のプロセスを実現しています。適応型のタスク生成とアサーションベースの検証によりこれらの専門コンポーネントをオーケストレーションすることで、アプリケーション固有のコンテキストや発見されたパターンに基づいて進化する、包括的なセキュリティカバレッジを実現しています。 AWS Security Agent は現在パブリックプレビュー中です。詳細については、 Getting Started with AWS Security Agent を参照してください。 Tamer Alkhouli Tamer は Amazon Web Services の Senior Applied Scientist で、学術界と産業界にわたる 13 年以上の自然言語処理の経験を持っています。RWTH アーヘン大学で Hermann Ney 氏の指導の下、機械翻訳の博士号を取得しました。キャリアを通じて、機械翻訳、対話型 AI、基盤モデルのシステムを構築してきました。AWS では、Amazon Lex、Titan 基盤モデル、Amazon Bedrock Agents、AWS Security Agent に貢献しています。 Divya Bhargavi Divya は AWS Security Agent チームの Senior Applied Scientist です。脆弱性検出とエクスプロイト検証のためのエージェンティックアーキテクチャの設計に注力し、特に敵対的な環境におけるセキュリティエージェントの堅牢なベンチマークフレームワークと評価手法の開発に取り組んでいます。現職以前は、AWS 生成 AI イノベーションセンターで科学的エンゲージメントをリードしていました。 Daniele Bonadiman Daniele は AWS の Senior Applied Scientist で、AWS Security Agent の開発に携わっています。トレント大学で応用機械学習と自然言語処理の博士号を取得しました。AWS では、対話型 AI、エージェントオーケストレーション、AI エージェントのためのコード解釈など、複数の AI イニシアチブに貢献してきました。 Yilun Cui Yilun は AWS でエージェンティック AI に取り組む Principal Engineer です。10 年以上にわたる開発者ツールの構築経験を持ち、ソフトウェア開発ライフサイクル全体への AI 適用を通じて、開発者がより速く開発し、より優れた製品を提供できるよう支援することに情熱を注いでいます。 Dr. Yi Zhang Yi は AWS の Principal Applied Scientist です。25 年以上にわたる産業界と学術界での研究経験を持ち、対話型でインタラクティブなマルチエージェントシステムの開発と、自然言語の構文的・意味的理解の研究に取り組んでいます。AWS Security Agent や Amazon Bedrock Agent など、複数の AWS サービスの開発を支える研究をリードしてきました。 本ブログは Security Solutions Architect の 中島 章博 が翻訳しました。