こんにちは!株式会社タイミーでアナリティクスエンジニアをしているひろろと、データエンジニアをしているつざきです。 本記事は、二人の共同執筆という形式でお届けします! 現在、私たちはアメリカ・ラスベガスで開催されているdbtの祭典 「Coalesce 2025」 に現地参加しています! Coalesce 2025 は、年に一度世界中のdbtユーザーが集まり、機能アップデートや事例発表、ハンズオンなどが行われるdbtの技術カンファレンスです。 当社ではデータ基盤にdbtを採用しているため、最新技術のキャッチアップを積極的に行っています。Coalesceへの参加もその一環として決まりました。 ※アーキテクチャのついて詳しくは こちら また、今回はカンファレンス参加支援制度 「KaigiPass」 を利用して参加しております! 速報を現地の熱気とともにお届けします。ぜひご覧ください。 Day 1 初日には有料のトレーニング中心で、夕方からカンファレンスのキックオフとウェルカムパーティーが開催されます。 キックオフでは近くにいる人との自己紹介タイムがあり、最初は焦りましたが、みんな技術者同士。英語が苦手でも温かく受け入れてもらえる優しい雰囲気でした。 Coalesceのイベント内容や会場案内などを中心に紹介され、これから始まるセッションへの期待が高まる良い時間でした。 (決してモーニングやランチが出ることに喜んでいるだけではありません笑) キックオフの後は、ウェルカムパーティーの開催です!立食パーティーの形式で実施され、パートナーブースで話を聞いたり、他の来場者との会話を楽しんだりできます。 同じ日本人の参加者とも交流することができ、データに関する話題で盛り上がりました。日本開催のカンファレンスとは違い、日本人が少ない分、数少ない日本人同士で仲間意識が芽生え、より深い話ができたように感じます。 また、パートナーブースの方も熱気がすごく盛り上がっていました。日本で開催されるカンファレンスよりも、皆さんのテンションが高いです。実際にブースへ行ってみてデモをみせてもらうだけでもためになります。どのブースにもAIという文字が記載されているのが印象的でした! Day2 初日はKeynoteや数多くのセッションに参加しました。セッションの数がとても多いため、吟味するのがとても大変です。また、ランチの時は同じテーブルに座った方が気兼ねなく話しかけてくるので、そこでの会話も貴重な時間でした! Opening Keynote Keynoteはホテル内のシアター会場で行われました。前方席に座ったのですが、両サイドのスクリーンにリアルタイム字幕が表示されていたため、後方の方が見やすかったと後で気づきました。 Opening Keynoteでは「 Rewrite 」というキーワードが繰り返し登場し、印象的でした。dbt LabsのCEO、Tristan Handy氏をはじめとした登壇者たちが、AI時代におけるデータワークの再定義について語りました。 まず大きな話題として取り上げられたのが、Fivetranとの合併についてです!前日の10/13に発表されたばかりのため、この場で話を聞けることを楽しみにしていたのが、歓声から伝わってきます。 その流れで呼ばれたのが、FivetranのCo-Founder & CEOであるGeorge Fraser氏。Fivetranのコネクタバグ修正の話から始まり、dbtに対して初めは懐疑的だったが変わっていったこと、dbtをAIが今後重要となっていく中で将来性や相互運用性が合併の背景としてあること、dbtへの破壊的な変更はないことなどをトーク形式で語っていき、dbtユーザーを安心させ一緒にdbtを盛り上げていきたいという気持ちがとても伝わる内容でした。 次に、Metric Flowついて大きな発表がありました。 MetricFlowは、dbt Labsが提供するメトリクス管理の製品です。今回、Apache 2ライセンスでのオープンソース化が発表され、会場から大きな拍手が起こりました。 「ベンダーロックインが懸念で導入に踏み切れなかった」という声も多く、まさにその課題に応える発表でした。 参考URL: https://www.getdbt.com/blog/dbt-labs-affirms-commitment-to-open-semantic-interchange-by-open-sourcing-metricflow その次に語られたのが、 dbt Fusion エンジン になります。 dbt Fusionエンジンは「Rewrite Developer Experience」をテーマに、開発体験の抜本的な刷新を目指した機能群として紹介されました。 実際のデモでは、従来より最大30倍のコンパイル高速化や、CTEプレビュー・カラムレベルのエラー検知などが披露され、歓声が上がる場面もありました。 機能についての詳細は 公式ドキュメント をご覧ください。 SDF Labsの共同創業者で、dbt Fusionエンジンのプロダクトリーダーを務めているElias DeFaria氏によるライブデモでは、dbt Fusionエンジンがもたらす多くの開発支援機能が実際に披露され、会場からは何度も歓声が上がりました! 「Column rename propagation」など機能が発表される度にドヤ顔をしている担当者を近くで見られることは現地参加の醍醐味ですね! 特に、新たに発表された「Compare changes」は、変更を本番環境に適用する前にデータへの影響を確認することができます。本番にマージしてからデータがおかしくなってしまっていることに気がつく、といった肝が冷えるやらかしを削減できる素晴らしい機能だと思いました! 次に発表されたのは、State-aware orchestration です。 State-aware orchestrationは、Fusionの機能を活かしたインテリジェントな実行制御機能です。依存関係の入力データが変更されたモデルのみを再構築することで、無駄な再実行を防ぎます。 発表によると、この機能を有効化するだけで約10%のコンピュートコスト削減が見込まれるとのことです。(すごい!) また、State-aware orchestrationのさらなる最適化として、Tuned configurationが紹介されました。 Tuned configurationでは、ユーザーは「Freshness要件の宣言」をすることができ、年間コンピュートコストを少なくとも29%削減できる見込みが示されました。 dbt内部ではこれらの最適化を導入することで最終的に64%もコストを削減できたとのことです。すごすぎる! そして、最後に発表されたのがdbt Agentsです。 dbt Agentsでは4つの新しいサービスが発表されました。 サービス名 機能・コメント 状態 Developer Agent (開発者エージェント) 変更内容を記述するだけで、エージェントがそのタスクを実行し、SQLファイルの作成、テスト、ドキュメント化を自動で実行してくれるとのこと!アツイ! 近日公開 Observability Agent (可観測性エージェント) パイプラインの障害箇所を特定し、修正を支援してくれるエージェントです。これによってトラブルシューティングに費やす時間を削減しアラートの削減につながることが期待されます 近日公開 Discovery Agent (発見エージェント) カタログやドキュメントから承認済みのデータセットと定義を識別し、なぜそのデータが信頼できるのかを示します。ただの検索ではなく信頼性の高いデータを見つけるまでの時間が削減できるとのことです ベータ版 Analyst Agent (アナリストエージェント) 会話型分析(conversational analytics)の構築を支援し、複雑な質問に対してガバナンスされた回答を提供してくれるとのことです ベータ版 全てのAgentが、データ分析開発における「あったらいいな」を実現できる機能のように思えました。特に個人的には、Developer Agentは、テキストで指示するだけで自律的に実装を行ってくれる、おそらくDevinのような開発体験ができるのかなと感じていて期待が膨らみます。 まとめ 本記事では、Coalesce 2025の現地の様子とOpening Keynoteの内容を中心に紹介しました! dbt LabsとFivetranの合併、Metric FlowのOSS化、Fusionエンジンによる高速化、State-aware orchestrationによるコスト最適化など、「Rewrite(書き換え)」というテーマにふさわしい革新が詰まったセッションでした。 今後、残りのセッションで各機能の詳細や導入事例を調査し、続報をお届けする予定です。ぜひご期待ください!
はじめに こんにちは!今回は( @arus4869 、 @yoshi_engineer_ )の2人で執筆しました! この記事では、私達のチームが『スプリントゴールで価値を駆動しよう』 という書籍の輪読会をきっかけに、形骸化しがちだったスプリントゴールを 「チームの羅針盤」 として機能させ、スプリントの達成率を 体感値で50%から80%に向上させた具体的な実践記録をご紹介します。 この記事は、特に以下のような課題を感じている方に読んでいただきたいです。 スプリントゴールが「タスクリスト」になりがちで、なぜやるのか(Why)やどんな価値が生まれるのか(Outcome)が曖昧になっている。 スクラムを実践中で、スプリントゴールの質に悩んでいる。 ステークホルダーやチームメンバーと機能の話はできても、 「価値」についての会話 がしづらい。 なぜこの本を選んだのか 私達のチームも、まさに上記のような課題に直面していました。 スクラム開発を長く続けているものの、いつしか「フィーチャーファクトリー」のようになり、スプリントゴールが単なるタスクリストになっていました。チームとしてやりたいことが多すぎて常にバックログを積みすぎる傾向があり、「レビューで何を学んだか」をアウトカムで語ることが難しく、アウトプットの話に終始しがちでした。 この「なんとなくこなすだけ」の状態を脱却したい。そんな思いで、スプリントゴールを考え直すヒントを与えてくれそうな本書を、輪読会のテーマとして選びました。 そもそもスプリントゴールとは何か? スプリントゴールはなぜ設定されるのか知っていますか?私は説明することができませんでした。 スクラムガイドでは以下のように定義されています。 スプリントゴールはスプリントの唯⼀の⽬的である。スプリントゴールは開発者が確約するものだが、スプリントゴールを達成するために必要となる作業に対しては柔軟性をもたらす。スプリントゴールはまた、⼀貫性と集中を⽣み出し、スクラムチームに⼀致団結した作業を促すものでもある。 スプリントゴールは、スプリントプランニングで作成され、スプリントバックログに追加される。開発者がスプリントで作業するときには、スプリントゴールを念頭に置く。作業が予想と異なることが判明した場合は、スプリントゴールに影響を与えることがないように、プロダクトオーナーと交渉してスプリントバックログのスコープを調整する。 スプリントゴールはスプリントの 唯一の目的 。 スプリントにおいて、この目標を達成することこそが大本命なわけです。 では、その重要性を深ぼっていきましょう。 スプリントゴールがなぜ必要なのか? スプリントゴールの重要性、まず挙げられるのは「チームの思考をタスクベースの 「アウトプット」から、ユーザーに提供する「アウトカム」へと転換 させる」ことです。 チームは 「ユーザーへの価値の提供」を本来の目的として行っています。実際のチームを稼働していく際に、いつの間にかタスクリストのみを指針として作業を進んでしまう 可能性があります。 例えば、「ユーザー登録画面の実装」や「データベース登録処理」といったタスクの羅列だけでは、開発者はなぜその作業を行っているのか、その作業が最終的にどのようなユーザー価値に貢献するのかがチームメンバーが共通して理解しにくい場合があります。 スプリントゴールがあることで、ユーザーに届けたい価値,アウトカムがタスクと連結して、一つの具体的なインクリメントを生み出すという明確な意図が共有されます。 このようにチームは 「タスクの進捗」 だけでなく、 ゴールへの貢献度 を常に意識できるようになり、より良い意思決定と協調性を生み出す。 スプリントゴールの効能 スプリントゴールがチームに対してもたらす効能は他にもあります。それは 「集中」 と 「一貫性」です。 チームに明確なゴールがなければ、チームはプロダクトバックログアイテム(PBI)がスプリントバックログに含まれる場合、それぞれのPBIが独立した作業として捉えられ、チームがばらばらに作業するリスクがあります 。このような状況では、チームとしての協調性が生まれず、特定のPBIを担当する個人が孤立したり、作業の詰まりが発生したりする可能性があります 。 スプリントゴールは、これらのPBIを「なぜ我々はこれらを同時に進めるのか」という 共通の目的に集約します 。共通の目的を持つことで、チーム全員が同じ目標に向かって努力し、一体感を高めることができます。 これにより、チームメンバーは 「ゴール達成のために誰かを助ける」 という動機付けが生まれ、協力して問題を解決する姿勢が自然に育まれます。個々のタスクの完了ではなく、チーム全体のゴール達成に焦点を当てるという、スクラムの本質を体現します。 良いスプリントゴールを建てるために ここでは タスクベースのゴール設定 と 状態ベースのゴール設定 についてお話しします。タスクベースのゴールでは、チームメンバーが「自分のタスクが終わらなかった」という個人の反省に終始し、ネガティブな内省に陥りやすい可能性があります。 スプリントゴールを「モヤモヤが解消された状態」や「特定の価値が提供された状態」といった「状態」ベースで設定すると、チームはプレッシャーから解放され、より前向きな振り返りがしやすくなります。 また、ゴールが未達成であっても、チームは 「なぜその状態に至らなかったのか」という根本的な原因を客観的に分析する ことができ、これを次のスプリントでの改善点として捉えることができます 。 このようなプロセスは、チームメンバー間の信頼関係を深め、失敗を学習の機会と捉える健全な文化を醸成します。スプリントゴールの達成に向けて互いに助け合う習慣は、 チーム全体の協力体制を強化 し、 個々のモチベーションを維持する 上で重要な役割を果たします 。 スプリントゴールを駆動して成功の鍵として活用していくために スプリントゴールが単なるタスク管理ツールではなく、 チームの集中力、柔軟性、そして価値創出を最大化するための不可欠な要素 です スプリントゴールを 「タスクのリスト」 から 「成果を示す羅針盤」 へと進化させることで、 チームは「何をするか」から「何を成し遂げるか」へと意識を変えることができます。 何を実践したのか(輪読会での取り組み) 輪読会での学びを元に、私達は以下の3つの具体的なアクションをチームに導入しました。 1. スプリントゴールの「決め方」を合意形成のプロセスに変えた これまで曖昧だったスプリントゴールの決め方を、チームで合意を形成するための明確なプロセスに変更しました。具体的には、スプリントプランニングで以下のステップを踏んでいます。 全員でスプリントゴール案を1つ考える: まず、POだけでなくチーム全員でスプリントゴール案を出します。 自信度の可視化と投票: そのスプリントゴール案に対して、達成できる自信度を各自が表明し、参考情報として投票を行います(多数決でスプリントゴールを決めるわけではありません)。 対話と議論: なぜその自信度なのか、なぜその案が良いと思うのかを全員で対話し、納得解を探ります。 「FOCUS」で最終チェック: 最後に、そのスプリントゴール案が良いゴールの特性(※)を満たしているか、チームでチェックし、最終決定します。 ※FOCUSとは? 良いスプリントゴールの特性を示した頭字語。Fun(楽しい), Outcome-based(アウトカムベース), Collaborative(協調的), Ultimate(究極的), Singular(単一)の5つの観点。 このプロセスにより、スプリントゴールが「誰かが決めた目標」から「自分たちが合意した目標」に変わりました。 2. 「やること」を勇気をもって絞り込んだ 過去の私達は、スプリントゴールに集中できずに品質を低下させたり、ゴール自体を達成できない経験がありました。本から「同時に多くの作業に取り組むことは、協働を妨げ、価値提供を減少させる」 という原則を学び、輪読会中にチームの 合意として以下のルールを決めました。 「スプリントプランニングでスプリントバックログに入れるのは、スプリントゴール達成に直接貢献するPBIだけにする」 これにより、チームのエネルギーが分散することなく、全員がゴール達成に集中できるようになりました。 3. レビューで「データ」を語ることを始めた 価値(アウトカム)を意識するため、スプリントレビューで関連するプロダクトのダッシュボードを参加者で見ることから始めました。まだ道半ばですが、これにより会話が「何を作ったか(Output)」から「それによって何が変わりそうか(Outcome)」へと少しずつシフトするきっかけになっています。 やった結果どうだったか(輪読会の成果) これらの取り組みの結果、チームには明確な変化が生まれました。 スプリントゴール達成率が向上: あくまで体感値ですが、スプリントゴールの達成率は 約50%から80%へと向上 しました。 プランニングの質が向上: 「このPBIはスプリントゴール達成にどう繋がるんだっけ?」という問いかけが自然に生まれ、バックログ選択の迷いが減少しました。 デイリースクラムの会話が変わった: 単なる進捗報告ではなく、「スプリントゴールを達成するために、今日は〇〇をしようと思う」といった、ゴールを意識した会話が中心になりました。 参加者の声 輪読会の参加者の声を抜粋します。 総合的に輪読会に参加して良かったという感想になりました。 「不確実性への対処」における説明やそれに対するソリューションが大変学びになった。 一人で読むとインプットだけで終わりがちですが、チームですぐに実践できるのが輪読会の良いところだと感じました。 FOCUSは一つのHOWに過ぎないと思いつつ、輪読会から具体的なアクションが生まれたのはとても良いな〜と思いました。 価値提供を重視し、FOCUSの考え方でゴールを打ち立てることが本を通じて印象に残りました。 まとめ 今回の輪読会と実践を通して、私達は重要な学びと気づきを得ることができました。 経験からの学び: 良いスプリントゴールとは、優れた文章以上に、 チームで『何に集中し、何を顧客に届けるのか』を合意するプロセスそのもの でした。 気づき: チームが共通のゴールに集中することで初めて、 日々の行動が価値ある「得点」に繋がる のだと気づきました。 この記事で紹介した私達の「スプリントゴールの決め方プロセス」が、その一助となれば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
こんにちは、iOSエンジニアの大塚、山崎、早川( @hykwtmyk )、前田( @naoya_maeda ) です。 2025年9月19-21日に有明セントラルタワーホール&カンファレンスで開催されたiOSDC Japan 2025に、タイミーもゴールドスポンサーとして協賛させていただきました。 イベントは以下のように、3日間連続で行われました。 9月19日(木):day0(前夜祭) 9月20日(金):day1(本編1日目) 9月21日(土):day2(本編2日目) 私たちもイベントに参加したので、メンバーそれぞれが気になったセッションや感想をご紹介します。 大塚 編 先日、iOSDC Japan 2025に参加しました。今年は会場が例年とは異なり、カンファレンス全体の雰囲気にいつもと違った新鮮な印象を受けました。私は毎年iOSDCに参加していますが、日々の業務や自己学習だけでは触れる機会の少ない、高度でニッチな領域の知識を集中的に得られる点が、本カンファレンスの最大の魅力だと感じています。本レポートでは、その中でも特に印象に残った「金融サービスの成長を支える "本人確認フロー" の改善と取り巻く環境の変化」のセッションについてご報告いたします。 概要 セッションは、1. 本人確認フローの改善と2. 法令改正など取り巻く環境の変化についての発表でした。 1. 本人確認フローの改善 前半は、JPKI方式を用いた本人確認の実装戦略についての解説でした。リードタイムを短縮するため、マイナンバーカードの読み取りおよび電子証明書の検証といった機能は、外部ベンダーが提供する SDK を用いて実装しているそうです。一方で、ユーザーが直接触れるUI部分はあえて自社で開発するという戦略を採っています。UIを自社で開発することで、離脱率を改善するための様々な実験的な施策をスピーディーに導入し、その最適化のメリットを享受されているそうです。 2. 法令改正など取り巻く環境の変化 後半は、金融サービスを取り巻く犯収法などの法令改正がいかにアプリ開発に影響するかについてです。特にJPKIの署名用電子証明書を用いる方式やカード代替電磁的記録を用いる方式など、外部環境の変化にエンジニアがどう対応すべきかに焦点を当て解説されていました。 感想 私が所属するチームで担当している本人確認フローに関する発表だったため、特に強い関心を持って拝見しました。他社ではどのようにJPKI方式を実装し、離脱率の改善という難しい課題に対し、どのような観点で技術やプロダクト設計の選択を行っているのかを具体的に知ることができ、大変勉強になりました。 山崎 編 iOSDCは今回初めて参加させていただきました! 初参加だからこそ感じた現地の熱気やセッションの感想などをレポートします。ちなみに、私はday0とday2の2日間参加しました。 day0:カンファレンスの熱気に触れる day0ではまず、プレオープニングセッションに参加し、iOSDCの歴史やコミュニティの成り立ちについて知ることができました。多くの開発者の情熱によってこの素晴らしい場が作られていることを知り、参加できることへの感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。 その後は、弊社の岐部さん( @beryu )の発表を応援しに行ったり、興味のあるセッションをいくつか拝見しました。どれもレベルが高く、知的好奇心を強く刺激される内容ばかりでした。 day2:ブースでの交流 day2では、弊社のブースに立ち、たくさんの参加者の方々とコミュニケーションを取らせていただきました。 私たちのブースでは、「最近うまくいったこと」をテーマに付箋を書いてもらう、という企画を実施していました。これをきっかけに会話が弾み、「最近、SwiftUI化がうまくいったんです」「AIをこう活用して業務改善しました」といった具体的なお話をたくさん伺うことができました。特にAI活用のトピックは多くの方の関心事のようで、他社さんのユニークな取り組みを聞けたのは大きな収穫でした。 心に残ったセッション 業務で直接関わる機会の少ない領域でのセッションを機会が多かったのですが、どれも新鮮で非常に面白かったです。 手話ジェスチャーの検知と翻訳~ハンドトラッキングの可能性と限界~ fortee.jp Apple Vision Proでの立体動画アプリの実装と40の工夫 fortee.jp プログラマのための作曲入門 fortee.jp 「iPhoneのマイナンバーカード」のすべて fortee.jp 特に、Apple Vision Pro関連のセッションは、従来のアプリ開発とは異なり、3D空間上でUIやUXをいかに自然に見せるかという点に多くの工夫が凝らされており、大変興味深かったです。オブジェクトを空間に違和感なく配置することの難しさを改めて感じました。 マイナンバーカードの話は、実際にどのようなAPIが使われているのかという技術的な解説が非常にためになりました。アプリ内、対面、ブラウザの3種類のVerifier APIの具体的な使い方やユースケース、さらにはmdocのデータ構造や日本のために作られたAPIの紹介など、普段は知ることのできない実装の詳細に触れることができ、とても貴重な体験でした。 SwiftコードバトルとLT大会の熱気 Swiftコードバトルは、制限時間内に要件を満たすプログラムを、Swiftでいかに短く書くかという競技で、緊張感のある中、参加者の方々のコーディングスピードと発想力に圧倒されました。 LT大会は、参加者がサイリウムを振って会場全体が一体となる、ライブのような賑やかな雰囲気でした!特に印象的だったのは、課金周りのLTが続いた時間帯です。各社それぞれの知見や工夫が凝縮されており、とても勉強になりました。 初めてのiOSDCは、技術的な学びはもちろん、何よりもコミュニティの温かさと熱量を肌で感じられる最高の体験でした。ブースでの交流、刺激的なセッション、そしてユニークな企画までとても熱狂感のある素晴らしいイベントでした! 早川 編 タイミーでiOSエンジニアをしている早川です。 一昨年ぶりにiOSDC Japan 2025にオフライン参加してきました!今年から会場が変わり、またいつもと違う雰囲気でしたね(個人的には、自宅から近くなったので嬉しいです)。 さて、いくつかのセッションを聴講した中で、特に学びが多かったのが、デスクスさんが発表された「 5000万ダウンロードを超える漫画サービスを支えるログ基盤の設計開発の全て 」です。 speakerdeck.com 大規模サービスにおけるログ基盤という、普段なかなか知ることのできない領域について、詳細なコードベースでの解説や実践的な知見が共有されており、多くの学びがありました。本記事では、発表内容の要点と特に印象に残った点についてまとめていきます。 発表の要点 1. 新ログ基盤「Tracker」の設計思想と特徴 パフォーマンスと柔軟性の向上を目的とし、モダンな技術スタックを全面的に採用。Swift 6の Sendable に準拠した設計をベースに、並行処理による高いパフォーマンス、gzip/deflateによるデータ圧縮、そしてモバイル環境の不安定なネットワークを考慮したExponential Backoffによる堅牢なリトライ戦略が主な特徴として挙げられていました。 2. Clean Architectureによる責務の分離 アーキテクチャにはClean Architectureを採用。Entity、Use Case、Data Layer、Public Interfaceを明確に分離することで、各コンポーネントが独立して機能し、テスト容易性や変更容易性が格段に向上したとのことでした。これにより、全体で80%以上という高いテストカバレッジも実現していました。 3. Firebase Remote Configを活用した安全な移行戦略 Firebase Remote Configをフラグとして利用し、旧基盤と新基盤を並行稼働させ、いつでも切り戻しが可能な状態で段階的に移行を進めるという、非常に現実的でリスク管理に優れたアプローチが紹介されました。 特に印象に残った点・感想 この発表では、ログ基盤というテーマに留まらず、大規模なモバイルアプリ開発全般に役立つ知見が随所に見られました。 ログの送信自体はユーザーの目に見えない部分ですが、メインスレッドをブロックしない、メモリを圧迫しないといった ユーザーファーストな視点 と、テスト容易性を高めるアーキテクチャ設計や高いテストカバレッジといった 開発者としてのこだわり が見事に両立されており、まさにユーザーと開発者の双方にとって「Win-Win」な内容だと感じました。 また、Firebase Remote Configの活用法も非常に印象的でした。特に「 将来的に全体公開する前提のConfigは、デフォルト値をtrueにしておくことで、移行完了後にConfigを削除できる 」という知見は、私自身も過去に逆の設計で失敗した経験があるからこそ、大変共感しました。 このように、自身の業務でもぜひ参考にさせていただきたい学びの多い、素晴らしい発表でした。 前田 編 僕は今年が二回目のiOSDCへの参加でした。今回も幅広いジャンルで興味深いトークがたくさんありました。その中で、僕が最も面白いと感じたセッションは、 かっくん さんの「独自UIで実現する外部ストレージデバイスの読み書き」でした。 fortee.jp 偶然なのですが、ちょうどこのトークの前日に、僕が個人的に調査を始めたトピックでした。 僕にとってはすごくホットなトピックだったこと、デモを交えた聴講者を惹きつけるトークが魅力的に感じたのでこちらのトークを選びました。 このトークは、iPhoneで撮影した写真や・ビデオデータを外部ストレージに直接保存する方法を紹介する内容です。まだ情報自体が少ないこともあり、Appleのエヴァンジェリストの方と一緒に調査を進めて、実装を実現したエピソードを交えたトークになります。 iPhoneのカメラで撮影した写真や・ビデオデータを保存する場所や方法は、大きく2パターンが用意されています。 一つ目の方法は、iPhoneのストレージに保存する方法ですね。こちらの方法は最もよく知られており、サンプルコードも豊富で難易度はそこまで高くありません。 PhotoKit フレームワークを使用することで、10行程度のコードで実現することができます。 zenn.dev 二つ目の方法は、iPhoneに接続している外部ストレージに保存する方法です。こちらの方法は、さらに2パターンに分かれています。 一つ目の方法は、 UIDocumentPickerViewController または、.fileExporter モディファイアを使用する方法です。これらのAPIを使用することで、データを外部ストレージに保存することができます。しかし、これらの方法では、ユーザーにデータの保存先を選んでもらう必要があります。ユーザーは、データの保存先を選択することができるメリットがある一方、ユーザーの操作数を増やしてしまうことになります。 そこで今回のトークで登場したAPIが、 AVExternalStorageDevice です。iOS 17から使用可能な比較的新しいAPIです。このAPIと関連APIを使用することで、iPhoneに接続している外部ストレージに、データを直接保存できます。実装コストも高くなく、数十行程度のコードで本機能を実現できることを知れて、僕にとっては学びが多いトークでした。 本トークでは、実際に会場で撮影した写真を、iPhoneに接続されている外部ストレージに直接保存し、保存したデータ一覧を表示するといったデモもあり、楽しくトークを聴くことができました。 最近では、高ストレージ端末を除いては、ProRes Logデータを撮影する時に外部ストレージとの接続が必須になってきています。今後、外部ストレージ接続が必須になる機能が増えるかもしれない状況になる可能性もあるので、さらに深掘りを進めてみたいと思います。 最後に この3日間を通して技術的な知見を深めたり、久しい友人に会って話をすることができ、すごく有意義な時間を過ごせました。この場を用意してくださったiOSDCスタッフの方々、参加者のみなさん本当にありがとうございました! 上記で紹介したセッション以外にも非常に興味深いセッションが多くありました。 記事にある内容や、その他の内容についても、もしタイミーのエンジニアと話したいという方がいらっしゃればぜひお気軽にお話ししましょう!
タイミーの江田、徳富、神山、亀井、桑原、志賀です。 KaigiPass という制度を利用して Kaigi on Rails 2025 に参加してきました。タイミーは昨年に引き続きスポンサーをさせていただき、今年はなんと幸いなことにブースも出させていただきました。今回はそんな Kaigi on Rails 2025 の参加レポートを KaigiPass を利用したメンバーで記述していこうと思います。 2分台で1500 examples 完走!爆速 CI を支える環境構築術 Hiroshi Tokudomi https://kaigionrails.org/2025/talks/falcon8823/#day1 「2分台で1500 examples 完走!爆速 CI を支える環境構築術」というタイトル通り、CI をどのように高速化していくかについての発表でした。 弊社でも現在 self-host runner を使って GitHub Actions 上で CI を回しており、2 万 2 千件のテストを平均 9〜10 分程度で実行しています。CI は短ければ短いほどいいものなので、このセッションタイトルを見たときに「これは絶対に見に行こう」と思ったのですが、まさに期待通り参考になる内容でした。 テストを並列に分割して実行する方法として Knapsack Pro が紹介されており、自分たちが使っている split-test と比較しながら聞くことができました。Knapsack Pro は実行時間の履歴をもとに分割を最適化できるとのことで、今後検討してみたいと思います。 また、EBS の I/O がボトルネックになることで CI が遅くなる話も印象的でした。弊社でも CI 実行が重なると I/O 使用率がギリギリまで上がることがあり、tmpfs を使うことで改善できる可能性があるのでは、とワクワクしながら聞いていました。 ちょうど最近 CI 基盤を self-host runner に移行したばかり( 参考 )ということもあり、「次はどこをチューニングできるか」と考えていたタイミングでのセッションだったので、個人的にはかなり刺さりました。CI をどう速くするかは日々の開発体験に直結するテーマなので、今回の学びを持ち帰って改善につなげていきたいです。 https://speakerdeck.com/falcon8823/2fen-tai-de1500exampleswan-zou-bao-su-ciwozhi-eruhuan-jing-gou-zhu-shu-kaigi-on-rails-2025 dynamic! Keisuke Kuwahara https://kaigionrails.org/2025/talks/moro/#day1 https://speakerdeck.com/moro/dynamic 1日目のキーノート「dynamic!」は、静的なアプローチとは対照的に、最初から完璧なゴールを目指すのではなく、継続的に変化していくプロセスを重視するテーマでした。 セッションでは、開発を細かく進めるための第一歩として、「ハッピーパス」の実装が重要だと強調されていました。ハッピーパスとは、ユーザーが使える「最小限かつ最もシンプルな機能」のことであり、これをまず実装することで、早い段階でフィードバックを得て、改善サイクルを回すことが可能になります。 特に印象的だったのは、開発者だけでなく、チーム全体で変化を起こしていくという考え方です。私自身、複雑な機能を実装する際、最初からすべてを網羅しようと時間をかけた結果、いざデモをしてみると多くのフィードバックをもらった、という経験があります。その時はできるだけ指摘をもらわないように実装しよう、という気持ちになっていましたが、今回の話を聞いて、動くものをいち早くチームメンバーやステークホルダーに確認してもらい、早くフィードバックを得ることの重要性を再認識しました。 またこれまでは、優秀なエンジニアほど、一発で完璧なプロダクトを作るものだ、と漠然と思っていましたが、実際は逆でした。経験豊富なエンジニアほど、最小限の開発から始め、段階的な改善を積み重ねていくのだと気づきました。 アジャイル開発は今のチームでは当たり前になっていますが、「動的に変化し続けること」の重要性を改めて深く感じました。完璧主義にとらわれて最初の実装に時間をかけるのではなく、変化を恐れずに、その時々で最もシンプルな方法を実践していきたいと思います。 「技術負債にならない・間違えない」 権限管理の設計と実装 Akitoshi Shiga https://kaigionrails.org/2025/talks/naro143/#day2 https://speakerdeck.com/naro143/ji-shu-fu-zhai-ninaranaijian-wei-enai-quan-xian-guan-li-noshe-ji-toshi-zhuang Webサービスにおいて頻出の課題である権限管理に対して、自社のプロダクトで行った取り組みを発表されていました。 権限管理のありがちなアンチパターンとして、権限の判定が必要な場所で操作者の役割を判定するような実装についてあげられていました。 例: あるControllerのcreateアクション内で if admin? 役割を判定する場合は、判定する箇所が役割ごとに何ができるかを把握する必要があります。 役割ごとの権限は、サービス内容や事業環境の変化が激しい状況においてはすぐに複雑化します。 その上、この実装では権限を変更するたびに、すべての判定箇所に手を加えなければいけません。 その結果としてすぐに保守が困難になります。 そこで、役割=何者であるかではなく権限=何ができるか に依存すること、その上で、権限管理に必要な要素である「対象」「操作」「役割」「条件」に対する記述を分離・明文化した設計を発表されていました。 具体的には、module分けした「対象」ごとに「役割」のクラスを作り、「操作」に紐づいたメソッド内で「条件」を判定する実装を行っていました。 これによって、対象ごとに役割が操作を行うための条件が非常にシンプルになりました。 https://speakerdeck.com/naro143/ji-shu-fu-zhai-ninaranaijian-wei-enai-quan-xian-guan-li-noshe-ji-toshi-zhuang?slide=64 その結果、カスタマーサポートやプロダクトマネージャーがGitHubでコードを読んで理解できるようになり、社内からのエンジニアへの権限に関する問い合わせが0になったそうです。 所感として、操作する対象が増えるたびにすべての役割のクラスを作成する必要があるものの、条件というコアなロジックは一箇所に集中されるので保守しやすそうだと感じました。 また、権限という複雑なビジネスロジックを非エンジニアが理解できるほどシンプルにコードで表現されていることに感銘を受けました。 複雑なビジネスロジックにちゃんと向き合ってシンプルな表現を目指すことの効果と大切さを今一度実感しました。 Railsによる人工的「設計」入門 Yutaka Kamei https://kaigionrails.org/2025/talks/nay/#day1 亀井です。万葉の大場さんのこちらのセッションが素敵だなと思ったので、このセクションを書かせていただいています。私なりにこの発表を解釈すると、設計がうまくなる方法について深掘りした内容だったのかなと思います。この AI 時代にコーディングを AI に任せることは増えてきた中で、人間が設計をできることの重要性がとても高まっています。そんな中で、どのようにしてもっとうまく設計ができるようになるのか?というのをご自身の偶然の経験から形式知にしてまとめてくださった内容でした。 完成したシステムを思い浮かべてそこから「逆算」して考えていくとよいのではないか?というのが重要そうでした。私の経験でも、ゴールを思い浮かべてそこに至るまでのマイルストーンを描きステップを重ねるというやり方がよいのではないか?ということを 思っていた ので非常に納得感があります。まさに全体から部分へ、という思考を行うことによってうまく設計ができる、という考え方ですね。たしかに、 Ruby on Rails が MVC をベースにしたフレームワークだからといって、モデル→コントローラー→ビューという順番に書く必要もないですし、むしろその順番で書くと全体が見えない状態で開発をすることになるので、次第につぎはぎだらけのコードが生成されてしまいます。その場しのぎのコードになってしまうと、やはりそれはそれで今後のメンテナンス性に影響してくるわけです。あるべき状態、あるいは本質的なゴールを描いてそこから「逆算」する、という考え方の言語化がとても素敵でした。 また、名付けの重要性について語っておられたのもよかったですね。 Ruby 界隈では「名前重要」というのはよく知られていると思いますが、設計の上でなぜ名付けが重要なのか?ということについての言語化もクリアでわかりやすかったです。たしか、コードのレベルではなく、抽象度の高いレベルで短い名前をつけながら考えを進めて「デザインパーツ」を取捨選択し「仮置き」することが重要というようなこともおっしゃっていたと思います。「仮置き」というワーディングがよいですね。たしかに、「決定」というと後戻りができない感じがしますが、「仮置き」というのは「変更の余地があること」を示唆する感じがして、日本人としてこういう日本語表現を利用できるのはとてもラッキーだなと思います。そういえば、「仮置き」で思い出しましたし、このセッションで参照されたキーノートの dynamic! にもあったように、オプショナリティーについて言及が最近増えましたね。「仮置き」という用語にもオプションというニュアンスを感じます。『Tidy First?』を読んで私なりにオプションについて理解をしているつもりでしたが、こうしていろいろな登壇を聞いて私なりの解釈もそこそこあってそうな予感がしてうれしさを感じています。みんな Kent Beck が好きですよね。私もです。 今改めてServiceクラスについて考える 〜あるRails開発者の10年〜 Yuki Eda (edy) https://kaigionrails.org/2025/talks/joker1007/#day1 Ruby on Railsでアプリケーション開発に従事しているエンジニアであれば一度は通るであろうServiceクラス。2025年のこのタイミングでjokerさんがこのタイミングで発表を行う理由も気になり視聴しました。 冒頭で歴史的な経緯を含めて日本国内で布教した背景の考察や、『パーフェクトRuby on Rails』にてServiceクラスを題材に執筆された当時の意図、執筆後数年経ってからの[Qiitaでのエントリ]( https://qiita.com/joker1007/items/25de535cd8bb2857a685 )などに触れられつつ、Serviceクラスに対しては出来る限り使わない方が良いと結論づけられていました。理由は「開発統制の困難さを上回るメリットが得られない」とのこと。 この点、私も思い当たる節はあり、例えばFat Modelを解消する手段としてServiceクラスを選択していた過去があります。適切な命名付けをしたとしても、アプリケーションの成長や数年間の運用の過程で特定のドメインだけの処理で留まらずに肥大化したトランザクションスクリプトになる傾向があると思います。これはjokerさんも言及されていた「基準の作りにくさ」から来る部分や、適切なドメインモデリングを怠った結果の2つが大きな原因だと、発表を聞きながら改めて考えさせられました。 結局のところ、ビジネスにおける関心事を顧客やチームメンバーを交えながらシステム内でうまい具合に表現できるするか、その丁寧な抽象化と具体化の繰り返し作業が大事で、Serviceクラスもそうですし対抗馬として挙げられることの多いFormクラスも含めて、デザイン方法は表現技法の一つに過ぎないということですね。 発表の末尾のスライドの「正解はない、一緒に考え続けましょう」「ソフトウェア設計は継続的な営み」が非常に印象的で心に留めておきたいと思いました。 履歴 on Rails : Bitemporal Data Modelで実現する履歴管理 Daichi Kamiyama - dak2 https://kaigionrails.org/2025/talks/hypermkt/#day2 https://speakerdeck.com/hypermkt/history-on-rails-with-bitemporal-data-model 直近で履歴を残すかどうかの設計に頭を悩ませたことがあり、Bitemporal Data Model での履歴管理の良し悪しが気になったので、拝見させてもらいました。 履歴テーブルのパターンとして参考になるのは、一休さんの https://user-first.ikyu.co.jp/entry/history-table このスライドが非常に参考になると思っています。普通に“履歴”という概念を表現するのであれば、このスライドの内容に沿って場合分けしていけば多くの場合は網羅できるんじゃないかと思っています。 ただ、SmartHR さんが扱うドメインとして “従業員を起点とした変化” に向き合っていく場合、「あとから分かった出来事も正しい日付で反映したい」というニーズがあるようです。確かに言われてみればそうですよね。 レコードとして有効な期間(ex. 2025/09/26 までに役職が部長だった)と、操作時間の2つの時間軸で履歴を管理するコンセプトが Bitemporal Data Model です。有効な期間だけだと、そのレコードがいつ登録/無効になったかの事実が抜け落ちるので、2つの時間軸で管理しようという話のようです。 パッと直感的に思ったのは2つの時間軸を考慮しないといけないので、考えることが掛け算で増えてしまう懸念を持ちました。SQL も複雑になりそうですしね。後から有効な期間を追加したい場合に、有効期間が重複してはいけないと思うので、そこの制約を Model のバリデーション、Database の制約ともに考慮する必要はあるんだろうなとか。 スライドでも想定外の履歴データが作られていることがあり、原因調査に丸一日かかったという言及がされていました。基本的に INSERT されるはずなので、そこから問題となっているデータを特定するのに時間がかかるというのはあるんだろうなと。activerecord-bitemporal gem では visualizer 機能があり、レコードの履歴を可視化してくれるそうです。 有効期間の日付管理が timestamp だと時分秒の管理があるから、date 型に変更して運用容易性を担保したという話も興味深かったです。この部分で意図しないレコードが生まれるケースはありそうだなと思っていたところ、 https://tech.smarthr.jp/entry/2025/09/12/115617 も拝見し、まさにその問題があったようですね。“履歴の一括出力後、Excelで適用日を編集するとExcelの仕様で時分秒の情報が「00:00:00」に丸められてしまう”、“例えば部署マスターの更新、並べ替え、削除、従業員部署の登録、更新などでは多数のモデルが同一トランザクションで更新されます。 このとき、適用日の時刻を固定して揃えないと、処理タイミングの僅かなズレによって適用日が秒未満の精度で異なった履歴が作成されてしまう” 、“同一適用日の更新において、社員番号と適用日の組み合わせでレコードを特定する際、ユーザーから秒未満を切り上げた日時を受け取り、秒未満を考慮して対象の履歴を探す” などなど、かなり負の側面を抱えていたようです。大変な移行だったようですが、とても意味のある移行だなと思いながら拝見しました。date 型だと unique 制約によって重複を弾きやすくなりますしね。 “履歴” を表現する1つの手段として Bitemporal Data Model を使ったリアルな声が公開されているのは、本当に嬉しいですね。とても参考になる話を聞けました。今後モデリングする際は、1つの手段として頭の片隅にインデックスを貼っておこうと思いました。 Kaigi on Rails 2025 に参加したタイミーのメンバー
こんにちは! タイミーでデータアナリストをしているtakahideです。 突然ですが、「この事業を成功させるにはどうすれば?」といった、ふんわりと大きなテーマを渡されて、「さて、どこから手をつけようか...」 と悩んだ経験はありませんか? タイミーでも、今後より会社の重要課題に関わる分析プロジェクトが増える中で、こうした上流の課題を見つけ、精度の高い仮説を立てる力、いわゆる「課題発見・仮説思考力」の重要性が高まると考えています。 本記事では、「仮説向上プロジェクト」での取り組みを元に、複雑な課題を構造化し、具体的なアクションに繋げるための思考整理術をご紹介します。 この記事が、同じように課題発見に悩む方々の助けに少しでもなれば幸いです。 「知っている」と「できる」の壁 思考のプロセスを可視化する「仮説向上プロジェクト」 思考整理の「3つのステップ」 1. 「問い」から「5W1H」への整理 2. 「5W1H」から「Flywheel」への落とし込み 3. 「Flywheel」から「定義」の再整理へ 今後の展望:思考プロセスをAIを用いてスケールさせる We’re Hiring! 「知っている」と「できる」の壁 これまでもデータアナリティクス部では、事業部のメンバー向けに仮説構築の勉強会を開いてきました。1回目は仮説のタネから仮説の木を育てる「仮説構築」の全体像を、2回目では論理を整理するための「便利な道具 (フレームワーク)」について行いました。 おかげで、チーム内で「仮説」という言葉の目線は一定揃ったのかな、と思っています。一方、知識として「知っている」ことと、実践で「使いこなせる」ことの間には、思った以上に大きな隔たりがありました(当たり前ではありますが、、)。 思考のプロセスを可視化する「仮説向上プロジェクト」 そこで、この壁を乗り越えるために、実験的な「仮説向上プロジェクト」を立ち上げました。 このプロジェクトの目的は、とてもシンプルです。 「問いを立てる力を引き上げること」。 分析の精度は、最初の「問い」の質でそのほとんどが決まってしまいます。MECE (モレなく、ダブりなく) やロジックツリーといったフレームワークといった調理器具を使う前に、「そもそもどの食材をどう料理するべきか?」 という「見立てる力 (素材の目利き)」を鍛えることにフォーカスしてみました。 具体的には、会社としての重要テーマを題材に、メンバーと1on1形式でディスカッションを重ねました。この抽象的なお題を、どう整理し、具体的な分析テーマに落とし込んでいくか。その思考プロセスを繰り返しました。 思考整理の「3つのステップ」 この実験的な取り組みを数回繰り返す中で、手応えのある思考整理のプロセスが見えてきました。 1. 「問い」から「5W1H」への整理 すべては、一つの大きな「問い」から始まります。特に会社の重要課題につながるような抽象的な問いの場合、そのままでは、どこから手をつければ良いか判断がしづらいです。 そこで、まずは問いを具体的な要素に分解することで、その後のプロセスがスムーズに進むことが分かりました。 特に、5W1Hは問いを具体化する初期段階において、シンプルですが便利なフレームでした。 Who (誰が) まず、「誰にとっての成功なのか?」を定義します。特に私たちのようなプラットフォーム事業では、関わるプレイヤーが複数存在します。例えば、「ワーカー」と「事業者」です。 What (何を) 次に、この新しい事業が「具体的に何を価値として提供するのか」を、それぞれのプレイヤーの目線で定義します。 Why (なぜ) そして、それぞれのプレイヤーが「なぜ、提供された価値に関心を持って、関わりうるか?」という動機を深掘りします。提供者が抱える「不安定さへの不満」や、利用者が感じる「既存サービスへのコストや品質面の課題」など。 一つの問いを様々な視点から分解していくことで、漠然としていたテーマの輪郭が見えてきます。チーム全員の目線を合わせ、分析のブレをなくすための最も重要な土台作りと考えています。 2. 「5W1H」から「Flywheel」への落とし込み 5W1Hで事業の構成要素を洗い出したら、次に行うのがFlywheel (はずみ車)への落とし込みです。 Flywheelとは、事業を「一度回れば自律的に成長していくサイクル」として捉えるための思考ツールです。「何がどう作用して、次のどんな結果に繋がるのか?」 という一連の因果関係のループとして可視化することで、事業成長のエンジンがどこにあるのかを特定しやすくなります。 私たちのようなプラットフォーム事業を例に考えてみます。 1. まず、事業の成長を促すためのアクションがあります。例えば、マーケティング施策や営業活動によって、ワーカーの集客を強化したとします。 2. プラットフォーム上のワーカーが増えると、人材を探している事業者にとっての魅力が増し、「ここなら良い人が見つかりそうだ」と事業者の利用が増加します。 3. 事業者の利用が増えれば、仕事の募集件数も増えます。 4. 仕事が増えることで、ワーカーはより多くの就業機会を得ることができ、満足度が高まります。 5. 満足したワーカーがリピートすると、事業者の満足度にも繋がります。満足した事業者は継続的に利用し、さらに多くの仕事を募集してくれます。 このように、「ワーカーの増加 → 事業者の増加 → 仕事の増加 → ワーカーの満足度向上 → 事業者の満足度向上 → さらなるワーカーと事業者の増加...」 というように、片方の満足がもう片方の満足を呼び、雪だるま式に事業が成長していく好循環が生まれます。 この図を描いて共通認識を得ることで、「このサイクルのどこにエネルギーを注げば、最も効率的に全体を加速させられるのか?」 という、事業戦略の勘所が見えてきます。 3. 「Flywheel」から「定義」の再整理へ 最後のステップは、Flywheelで事業全体のサイクルを俯瞰しながら、もう一度最初の問いに立ち返る、「定義の再整理」です。 5W1Hで各要素を分解し(点の理解)、Flywheelでそれらの因果関係を繋ぎ合わせる(線の理解) ことで、事業を一つの動的なシステムとして捉えられるようになります。この視点を持つと、当初ぼんやりと設定していた言葉の定義が、より解像度の高い、具体的なものに変化していることに気づきます。 特に、求められている「成功」が「Flywheelのどの部分を、どのように回すことなのか?」という問いに変わります。 「短期的な売上」を成功とすれば、新規獲得やマッチング率といった回転数を上げるための分析に集中します。 一方、「長期的な成長」が成功であれば、リピート率や評価といった質を高め、遠心力を強めるための分析に注力します。 このように、抽象的な言葉が、具体的な指標やアクションと結びつきやすくなります。 このステップを行うことで、分析が向かうべきゴールが明確になり、その精度が高まると思います。 今後の展望:思考プロセスをAIを用いてスケールさせる 今後は、本プロジェクトで得られた知見を基に、AIとの対話を通じて同様のワークが誰でも実現できる仕組みを作りたいと考えています(例えば以下のようなものを想定しています)。 1. 分析したい「問い」をAIに入力する 2. AIが対話形式で分析テーマをサポートする 3. 仮説を選択・編集する 4. 最終的な分析プランが提案される 私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。データから価値を生み出すために、これからもアナリスト自身の「考える力」を磨き続けていきたいと思います。 We’re Hiring! タイミーのデータアナリティクス部では、ともに働くメンバーを募集しています!! カジュアル面談 も行っていますので、少しでも興味がありましたら、気軽にご連絡ください。
はじめに タイミーでAndroidエンジニアをしているふなちです。 本記事は、 「DroidKaigi 2025 参加レポート〜Part 1〜」 の記事の続きになります! まだPart 1を読んでないよ!と言う方は、ぜひPart 1も読んでいただけると嬉しいです。 本記事(Part 2)では、Part 1から続いてエンジニアメンバーによるセッションレポートと、タイミーのブース出展の様子をお届けします 📣 エンジニアによるセッションレポート nakagawa 紹介するセッション: Gemini エージェントで Android Studio 開発を高速化 タイミーではdroidkaigiでブースを出しており、多く方に足を止めていただくことができました。 ブースに立っている中で初日にどこか見覚えのある方がいらっしゃり、「お会いしたことありましたっけ?」と聞いてみたら、特に面識はないとのこと… 翌日に聴講したセッションでその方が登壇しており、その時に気づきました。 「あの人、YouTubeのGeminiでE2Eテストの動画に出てた人だ!!」 www.youtube.com セッションではYouTubeで見て未来に思いを馳せていたGeminiが自然言語で記述されたテストを実行するJourneyのライブデモを見ることができ、ちょうど当日にAndroid Studio Canaryでリリースされたばかりとのことでした。 デモでは日本語で記述して実行結果のスクリーンショットとその結果とその根拠をテキストで出力しており、メンテナンスコストが低いE2Eテストの実装ができそうだと感じました。 後にAsk the speakerに質問をしにいき、見覚えがあった理由の話もしたのですが、「彼はYouTube Famousだからね」と一緒に登壇されていたMandaさんも笑っていました。 「CIで動くようになるのはいつですか?」と伺ったところ、絶賛開発中とのことでした、期待です。 DroidKaigiから帰ってさっそくタイミーのプロジェクトで試してみましたが、まだ動かなそう…?Build Logic使っているせいか、まだうまく読めてないような気がしていますが、まだしっかりとは見れていません。安定的に使えるようになったら実際の運用で使えるか試してみたいと思いました。 murata( @murata ) 紹介するセッション: Cache Me If You Can RyuNen344さんによる「Cache Me If You Can」は、多くのAndroid開発者が"何となく"で使ってしまいがちな Gradleのキャッシュ機構 に深く迫るセッションでした。 私自身、Gradleはブラックボックス同然で、ビルドエラーが起きるたびにStack Overflowを彷徨う…そんな場当たり的な対応を繰り返していました。このセッションは、そんな私のGradleに対する苦手意識を打ち破る、まさに目から鱗の内容でした! セッションで得た知識を元にさっそくプロジェクトのGradle設定を見直したところ、ビルドパフォーマンスにつながる以下の改善を実現できました。 Configuration Cacheと並列実行の有効化 ( org.gradle.configuration-cache.parallel=true ) 環境変数を参照していた System.env() を Provider API に置き換え 通常のビルドでは不要なタスクを提供するプラグインの適用方法を最適化 これまではConfiguration Cacheが効かずに頭を悩ませることも多々ありましたが、今ではこのセッションで学んだ知識を武器に、自信を持って原因を調査できる気がしています👍 「Gradleのビルド遅いな…でもよくらからないから後回し!」となっている、そこのあなた! ぜひ本セッションのアーカイブ動画を視聴して、一緒にGradleの世界を切り拓いてみませんか?😊 スポンサーブースも大盛況でした🎉 DevRelのみーた( @earlgrayMK )です。 今回タイミーではゴールドスポンサーとしてブースを出展しました。 多くの方にお立ち寄りいただき、ありがとうございます! スキマバイトとしてアンケートのお仕事をみなさんにお願いし、たくさんの回答をいただいたのでご紹介します。 みなさんのご投票の結果、Android開発において最も困難だと感じられているのは、「既存コードベースの保守・改善」と「OSバージョン・デバイスの多様性」であることが明らかになりました。 この根深い課題に対して、タイミーのAndroidエンジニアがどのように向き合っているのか、具体的な取り組みをまとめました。 1. OSバージョン・デバイスの多様性への対応 自動テストの活用 テスト自動化ツール「MagicPod」を導入し、サポート対象OSの上下限バージョンで毎日テストを実行。広範囲の環境を効率的にカバーしています。 多様な物理デバイスでの検証 外部のQAチームや、クラウド型検証サービス「RemoteTestKit」を活用。さらに、社内Slackで特定端末を持つメンバーに協力を仰ぐなど、物理デバイスでの実機検証を徹底しています。個人的に折りたたみスマホを購入し、検証に活かす開発者もいます。 2. 既存コードベースの保守・改善 進捗の「見える化」と「仕組み化」 リファクタリングの進捗をLinterのwarning数やモジュールの分割状況などで定量的に可視化し、チーム全体で課題意識を共有する仕組みを重視しています。デザインシステムの構築やEdge-to-Edge対応もその一環です。 プロダクトオーナー(PO)との共通理解 技術的負債の解消がプロダクトの価値向上に不可欠であるという点をPOと共有。これにより、計画的なリファクタリングを実現しています。 適切なエンジニアリソースの確保 リソース不足が負債の蓄積と開発の悪循環を招かないよう、Androidエンジニアの適切なリソース確保に努めています。 バランスの取れた技術選定 新技術の導入時は、必ずその妥当性をチームで議論し、合意形成を図ります。これにより、将来の負債化を防ぎ、技術的なバランスを保っています。(この領域では、特にエンジニアの村田が重要な役割を担っています。) 高いサービスレベル目標(SLO)の維持 プロダクトの品質目標を高く設定し、それを維持する文化が、コードベースの健全性を保つ動機付けにもなっています。 両課題に共通する、タイミーの強み 厚いチーム体制 チームメンバーが多いため、新規のプロダクト開発と並行しながら、検証やリファクタリングといった改善活動を分担して進められる体制が強みです。 「地道な努力」の文化 メンバー全員が「地道に改善を続けるしかない」という共通認識を持っており、日々の継続的な取り組みを大切にしています。 Day2「開発している中でAIをどのように活用していますか?」 Day2では様々なご回答をいただいたので、特に多かったものや面白いと思ったものをまとめました。 おわりに DroidKaigi 2025では、各セッションや参加者の方々との交流から、日々の開発の参考になる知見を得ることができました。ここで得た学びは、今後のプロダクト開発につなげていきたいと思います💪 また、10月21日(火)にココナラ社、アンドパッド社、令和トラベル社、そしてタイミーの4社共催で「 After iOSDC & DroidKaigi 2025 」を開催します。 当日は弊社からAndroidエンジニアの tick-taku が登壇します 🎉 ハイブリッド開催 となっておりますので、ご興味のある方はぜひ気軽にご参加ください 🙌 reiwatravel.connpass.com 最後に、本カンファレンスを支えた運営・登壇者のみなさん、ならびにタイミーブースにお越しいただいた方々、ありがとうございました!
はじめに タイミーでAndroidエンジニアをしているみかみです。 2025年9月10日から12日にかけて、Androidの技術カンファレンスである「 DroidKaigi 2025 」が開催されました。タイミーからはAndroidチームをはじめとする複数のメンバーが現地に参加し、今年も昨年に続いてゴールドスポンサーとしてブースを出展しました。 セッションでは最新の知見に触れる機会が多く、日々の業務にもつながる具体的な学びを得ることができました。また、会期を通しては立ち話や展示をきっかけに参加者同士が議論を深める場面も多くあり、交流の広がりも強く感じました。そのような様子は会場にとどまらず、XなどのSNSを通じて、オンラインでも盛り上がりをみせていたのが印象的です。 Part1、Part2の2記事に渡り、エンジニアメンバーによるセッションレポートと、ブース出展の様子をお届けします。 本記事(Part 1)では、エンジニアメンバーによるセッションレポートをご紹介します! エンジニアによるセッションレポート まずは、DroidKaigiに参加したエンジニアメンバーによるセッションレポートを紹介します。 Hunachi( @_hunachi ) 紹介するセッション: Androidライブラリアンの手引き:堅牢なライブラリとSDKの構築 私はライブラリを公開した経験はないのですが、このセッションはライブラリ開発者だけでなく、マルチモジュール構成で開発している人、そしてライブラリを利用する人にも多くの学びがある、非常に有益な内容でした。 このセッションで特に印象的だった、新しく学べた点をいくつかご紹介します。 公開範囲の制御の重要性について internal を正しく使うことはもちろん、 Explicit API mode を有効にすることで、意図せずパブリックAPIが公開されてしまうのを防げると知りました。これによって、モジュールの責任範囲が明確になり、APIの健全性を保つことができます。 親切なAPIの非推奨化ついて クラスや関数を非推奨(Deprecated)にする際、 @Deprecated アノテーションの message や replaceWith 引数に具体的な説明を記述することで、利用者がスムーズに新しい実装に移行できる配慮が大切だと学びました。 破壊的変更の自動検知について パブリックAPIを変更、特に削除する際には、 binary-compatibility-validator を導入して自動的にチェックをかける手法が紹介されていました。うっかり互換性を壊してしまうミスを防ぐための仕組みは、特にライブラリのメンテナンスにおいて非常に重要だと感じました。ライブラリを作成する機会があったら利用するようにしたいです。 また、ライブラリとそれを利用するプロジェクト間でリソース名が衝突するという問題についても話がありました。マルチモジュールでの問題においては弊社でも対応は済んでいるものの、ライブラリ使用者として予期せぬ挙動に悩まされた経験が何度かあるので自分がライブラリを作る側になった時は気をつけようと思いました。 ライブラリの裏側で何が起きているのかを知ることで、利用者としてもより賢く付き合っていくことができると再認識しました。今後、マルチモジュールでの開発やライブラリを利用する際に、今回学んだ知識を活かしていきたいです。 tick-taku 紹介するセッション: EncryptedSharedPreferences が deprecated になっちゃった!どうしよう! タイトルの通りで、なぜ deprecated になったかなどの背景を含め紹介し覚悟を決めさせてくれる素晴らしいセッションでした。 タイミーでは KeyStore + Cipher + DataStore を利用していましたが、別のブログで Tink を利用するといい感じに wrap されて、複雑な暗号化周りをライブラリに任せつつ実行速度が速くなると知りました。特定端末でのみクラッシュしてそうな気配を Crashlytics から観測しており、「もしや自前の実装が悪く Tink であれば Google 提供だしその辺も対処してくれているのでは…?」と思い移行しようとちょうど DroidKaigi 直前に Issue を作成して検討していたところ、このセッションの存在を知りました。 結論からですがやめた方がいいとのことです 😇 どうやら観測していたクラッシュは OEM デバイスの KeyStore のバグでどうしようもないとバッサリでした。これは security-crypto が deprecated になった要因の1つらしく、Tink に移行したところで解決せず、むしろアプリ側でのハンドリングが難しくなるそうです。こうなったらどうしようもないのでデータは捨てましょうと割り切るしかないとのことでした… また、クラッシュの要因としてもう1つバックアップ設定の話がありました。 allowBackup=false に設定しているため大丈夫と考えていたのですが、Android 12 からメーカーによっては device-transfer によるバックアップは allowBackup の設定を無視するようになっているそうです。おかげでデータは移行されるのに key が異なるので復号に失敗するというものでした。 本当にちゃんと作ってくれメーカー… また EncryptedSharedPreference が存在してしまうが故に我々はなんでもかんでもデバイスのストレージに保存してしまうという思想のもと deprecated にした背景もあるらしく、「そもそもそのデータをデバイスに保存する必要があるのか?」は設計時に常に意識したい事項だと感じました。 紹介するセッション: OAuthを正しく実装する:Androidアプリのためのセキュアな認証 OAuth を導入するための基礎知識や歴史が理解できる内容でした。 一度実装したり触れたりしたことがある人はそうだよねとなる内容も多く OAuth の入門として非常に勉強になると思います。 気になった点としては、多くのアプリでは access token をデバイス上に保存していると思いますが、その際は変に暗号化せずにシンプルに SharedPreference を使ってデバイスを信頼しましょうといった趣旨の内容が話されていて、Android は root 化したら引き抜けると思ったのですが大丈夫なんでしょうか… また、 PKCE がベストプラクティスらしいですが、そこまで実装しているアプリはどれだけあるのか気になります。 haru 紹介するセッション: スマホ新法って何?12月施行?アプリビジネスに影響あるの? DroidKaigi初の公正取引委員会の人による発表で、主にこれから施行される新しい法律に関する話でした。 対象になるのは基本的にAppleやGoogleなどのプラットフォーム事業者で、In App Biilingなどの機能に対して影響があるようでした。 とはいえ、一般デベロッパーに開放していない機能を開放して欲しいなどのリクエストを送ることもできるようになるらしいので、今後どうなっていくか目が離せない法律の1つでもありますね。 みかみ 紹介するセッション: Be a Business-Driven Android Engineer DroidKaigi 2025に参加して、特に印象に残ったセッションの1つが、ohzonoさんの「 Be a Business-Driven Android Engineer 」です。Androidエンジニアがどのようにビジネスの成長に貢献できるのかを解きほぐした内容で、今の自分が所属するストリームアラインドチーム(価値提供チーム)の状況とも重なり、とても心に残りました。 特に共感したのは「越境」という考え方です。現在所属するチームは少人数のため、エンジニアがデータ分析を担ったり、専門外の実装に挑戦したりと、役割の垣根を越えた働き方が自然に行われています。そのため、「越境」という言葉はもともとチーム内でもキーワードになっていました。今回のセッションは、そうした取り組みを価値あるものとして肯定してくれる内容であり、大きな励みになりました。AIの進化によって専門外の領域に踏み込みやすくなっている今、「越境」はこれからますます重要になると感じます。 また、開発チームが売上を直接的なKPIとして持つという話も新鮮でした。私はこれまで、パフォーマンス改善やエラー率の低減、ユーザー行動に基づく指標といったプロダクト内部の成果に注目することが多かったのですが、このセッションではそれに加えて、自分たちのアウトプットを事業全体の成果と結びつけて考える視点が提示されました。自分の仕事がどうビジネスインパクトにつながるのかを意識することで、エンジニアとしてもっと広い視野で取り組んでいきたいと感じました。 さらに、この考え方を技術面から支える手段として、Kotlin Multiplatform (KMP) の存在感も改めて実感しました。副業や別プロジェクトでKMPを利用してきた経験からも、その有効性を強く感じています。もちろん、ビルド速度やKMPそのものの複雑さ、iOSとAndroidエンジニア間の連携といった課題はまだあります。ドメインレイヤーの共通化によるメリットは大きく、KMPはAndroidエンジニアがiOS開発へと「越境」する後押しとなり、チーム全体の生産性を高める現実的な選択肢だと思います。今後も注目していきたい技術です。 syam 紹介するセッション: KotlinでのAI活用による開発 JetBrains の Sebastian Aigner さんと Márton Braun さんによる「 KotlinでのAI活用による開発 」というセッションが気になったので聴講しました! Kotlin と AI の関わり方を「コード補完のような軽い支援」から「エージェントに任せる自動実装」まで段階的に紹介しており、JetBrains の AI エージェント Junie を使ったデモでは、新しい画面追加や UI の改良を自動で行っていて、既存コードのパターンも踏まえた修正が印象的でした。 また、Kotlin 製のフレームワーク Koog も紹介され、マルチプラットフォームで AI エージェントを組み込める仕組みとして活用できるとのことでした。 nshiba( @nshiba310 ) 紹介するセッション: ユーザーも開発者も悩ませない TV アプリ開発 - Compose の内部実装から学ぶフォーカス制御 AndroidTVアプリを Compose を使って実装方法を紹介するセッションでした。 Compose 以前の時代に存在していた leanback library という Google 製のライブラリがありましたが、これは Compose には対応していません。 Compose で AndroidTV を実装しようと思ったら、どういったライブラリを使ったら良いかと行った基礎的なことから始まり、leanback library ではデフォルトでライブラリが対応してくれていた、フォーカス周りの制御やいまどのUIにフォーカスがあったているかがわかりやすくなるUIの制御などを Compose では自前で実装する必要がありどういった対応が必要かについても詳しく解説されていました。 また AndroidTV アプリでは、スクロールの制御についても通常のモバイルアプリとは異なる実装方法が必要になり、これについても詳しく解説されていました。 セッションタイトルの通りどのセクションでも Compose の内部実装までちゃんと処理を追って説明されていてとてもわかりやすく、これから Compose で AndroidTV アプリを作成する方にとって必見の内容がつまっていました! 続きはPart 2の記事で! 引き続き、Part 2の記事にて他のエンジニアメンバーによるセッションレポートと、ブース出展の様子をお届けします。 ぜひ読んでください! tech.timee.co.jp
こんにちは、タイミーでエンジニアをしている徳富です。 今回は、 EKS上にGitHub Actions Self-hosted Runner基盤を構築した話 をお届けします。 背景:GitHub Actionsへの移行と、新たに見えてきた課題 2024年10月に公開した CI基盤をGitHub Actionsへ移行した記事 で紹介したとおり、 CircleCIからGitHub Actionsへの移行によって、私たちのCI体験は大きく改善しました。 しかし、開発者やテストケースが増え、時間が経つにつれて 新たな課題 も見えてきました。 実行回数の急増によるコスト高騰 2025年2月頃からDevinをはじめとしたAIエージェントの利用が進み、PRやpushの回数が一気に増加 開発者数の増加も重なり、ワークフロー実行回数が比例して伸びていった GitHub-hosted Runnerは料金や安定性の面である程度最適化されているため、Self-hostedに切り替えれば必ずしもコスト削減につながるとは限らない。 しかし、割引オプションが少なく、コストコントロールが難しい という課題もある 一方AWSならSavings PlansやSpotインスタンスなどの仕組みを活用でき、柔軟に最適化が可能。開発者やエージェントの利用増加で実行回数が急増するタイミーのユースケースにおいては、この「柔軟に最適化できる」という点が大きなメリットであることがわかってきました テスト時間のじわじわとした増加 テストケース数の増加により、全体の実行時間も長くなってきている apt install などのセットアップ処理にも時間がかかっている 「ランナーイメージに事前インストールしておけばもっと速くできるのでは?」という声も出始めた 「コストをコントロールしながら、テストももっと速くしたい」 そんな思いから、私たちは Self-hosted Runner基盤の構築 を検討し始めました。 最初のアプローチ:ECS + Lambda構成 当初は ECS + Lambda + API Gateway を組み合わせて、ランナー基盤を構築しようとしました。 しかし実際に検証してみると、すぐにいくつかの課題に直面しました。 レートリミットの考慮 1回のCI実行で最大35並列のランナーを起動してます。 日中は多いときで 1時間に60回以上 実行されることもあり、GitHub API の レートリミット を意識した設計が必要になります。 → これを Lambda 側で考慮して実装するのはかなり複雑。 ランナーは30秒以内に立ち上がってほしい という要件がある。 Lambda のコードを継続的にメンテナンスするコスト も無視できない。 「長期的に運用するには、この構成は少し複雑すぎるかもしれない」 そう判断し、よりシンプルに運用できる別のアプローチを探すことにしました。 選んだのは EKS(auto mode) × Actions Runner Controller そこで目をつけたのが、GitHub公式が提供する **Actions Runner Controller (ARC)**。 ARCはGitHub ActionsとKubernetesをつなぎ、必要なときだけランナーPodを動的に起動してくれます。 さらにクラスタ基盤には EKS Auto Mode を採用しました。 ノード管理やスケーリング設定をほとんど自前で持たずに済むため、運用の手間を大幅に減らせるのが魅力です。 「EKS Auto Mode × ARC であれば、管理コストを抑えつつ柔軟なSelf-hosted Runnerが作れるのでは?」 そう考え、この構成で進めることにしました。 実際、EKS Auto Mode を採用したことで クラスタのアップデートも自動化 でき、現在の運用は Renovate が作成する定期アップデートの PR をレビュー・マージする程度で済んでいます。 アーキテクチャ概要 ざっくりとした構成はこんなイメージです。 アーキテクチャー図 ARC : GitHub APIと連携し、ランナーPodを自動的に作成・削除 EKS Auto Mode : クラスタ管理を最小限に抑えつつ、柔軟なスケーリングが可能 Karpenter : Auto Modeの裏側で働くプロビジョナー。従来のCluster Autoscalerよりnode起動が速い 特にCIのように時間帯によって必要リソースが大きく変動するワークロードでは、 Auto Mode+Karpenterの組み合わせが非常に相性が良く、メンテナンス性・柔軟性の両立 ができました。 導入時に直面した課題と解決策 ここからが本番です。 実際に導入を進めていくと、次々と問題が発生しました。 1. Spotインスタンスの安定性問題 当初はコスト削減を狙って、停止率の低いインスタンスタイプの Spotインスタンス を採用していました。 しかし、弊社のCIは 35並列で高頻度に実行 されるため、必要なインスタンス数が多くなり、停止確率が低いタイプでも 1日あたり5〜10回ほどノードが落ちる ことがありました。 その結果、CIが途中で失敗するケースが頻発し、 開発者体験を大きく損ねる要因 となってしまいました。 対策 そこで思い切って オンデマンドインスタンスに切り替え 、必要に応じて Savings Plans を適用する方針にしました。 オンデマンドにしたことで、ランナーが突然落ちるリスクがなくなり、安定してCIを回せるようになった 安定性が向上したことで、CIだけでなく デプロイなど他のワークフローもSelf-hosted Runnerに寄せる ことが可能に これによりEC2のアイドル時間を減らし、稼働率を高めることでコスト効率も改善できました 2. スケールインでランナーPodが強制終了する問題 次に直面したのは「EC2のスケールインによって、ランナーPodがCI実行中に突然落ちる」という問題です。 原因は、Karpenterの設定でした。 デフォルトでは disruption.consolidationPolicy が WhenEmptyOrUnderutilized になっており、 ノードのリソース使用率が低いと、 Podが稼働中でも容赦なくノードを落としてしまう のです。 (参考: https://karpenter.sh/docs/concepts/disruption/) 対策 consolidationPolicy を WhenEmpty に変更 Podがないノードのみスケールイン対象とするよう設定 spec : disruption : consolidationPolicy : WhenEmpty これでランナーPodが実行中に消える問題は解消しました。 3. ノードが全然スケールインしない問題 しかし、ここで別の問題が発生します。 「一度スケールアウトすると、ノードがほとんど減らない」という現象です。 原因は Kubernetes のスケジューリング。 Kubernetes のスケジューラには、Pod をできるだけ均等に配置しようとする仕組みがあります。 そのため Pod が複数のノードに分散して配置されやすく、 ノード上の Pod が 0 になるケースが少ない ため、スケールインがなかなか進まなくなります。 対策 Pod Affinity を利用し、ランナーPodはなるべく同じノードに詰めるよう設定 Pod配置の断片化を防ぎ、スケールインしやすくしました affinity : podAffinity : preferredDuringSchedulingIgnoredDuringExecution : - weight : 100 podAffinityTerm : labelSelector : matchLabels : actions.github.com/scale-set-namespace : arc-runners topologyKey : kubernetes.io/hostname これによりリソース効率が大きく改善されました。 4. 夜間にリソースを最適化する作戦 リソース効率をさらに高めるため、 日中は安定性を優先し、夜間だけ段階的にノードを整理する仕組み を導入しました。 具体的には、 disruption.consolidationPolicy を WhenEmptyOrUnderutilized に設定したうえで、夜間に 一定間隔で15分だけpodが存在するノードのスケールインを許可 → その後は再び禁止 というサイクルを繰り返します。 これにより、ノード上にPodが残っていても一気に消されることはなく、 「急にPodが落ちてCIが止まる」といったリスクを避けながら、少しずつリソースを最適化 できるようになります。 spec : disruption : consolidationPolicy : WhenEmptyOrUnderutilized consolidateAfter : 5m budgets : - nodes : "0" reasons : - Underutilized schedule : "0 0 * * *" # 0:00〜11:45 UTC 禁止 (JST 9:00〜20:45) duration : "11h45m" - nodes : "0" reasons : - Underutilized schedule : "0 12 * * *" # 12:00〜15:00 UTC 禁止 (JST 21:00〜翌0:15) duration : "3h15m" - nodes : "0" reasons : - Underutilized schedule : "30 15 * * *" # 15:30〜17:00 UTC 禁止 (JST 翌0:30〜翌2:15) duration : "1h45m" - nodes : "0" reasons : - Underutilized schedule : "30 17 * * *" # 17:30〜20:00 UTC 禁止 (JST 翌2:30〜翌5:15) duration : "2h45m" - nodes : "0" reasons : - Underutilized schedule : "30 20 * * *" # 20:30〜24:00 UTC 禁止 (JST 翌5:30〜翌9:00) duration : "3h30m" この仕組みによって、 日中は安定してCIを回しつつ、夜間は少しずつノードを整理してリソースを効率的に活用 できるようになりました。 5. コールドスタート問題をランナープールで解消 弊社では 35並列 のランナーを利用しています。 そのため、完全なオンデマンド起動では間に合わず、 ランナー起動待ちが発生してしまうこともありました。 そこで、ARCの minRunners 設定を活用し、 ランナープールを作成 。 あらかじめ一定数のランナーを起動しておくことで、 要求があればすぐに割り当てられるようになり、 GitHub-hosted runnerと同じ快適な使い心地を実現しました。 5 Runner PodでDockerを使う工夫 最後のハードルは「ランナーPodでDockerをどう使うか」です。 私たちのCIではMySQLやRedisなどの service container を多用しているため、RunnerコンテナからDockerを操作できる仕組みが必要でした。 選んだ方法 RunnerでDockerを扱う方法は大きく分けて DooD (Docker outside of Docker) と DinD (Docker in Docker) の2種類があります。(参考: GitHub Actions の self-hosted runner で Docker を使う際のパターン整理 )。 今回は DinD を採用しましたが、その中でもさらに実現方法が2パターン存在します。 Runnerコンテナ内で直接Dockerデーモンを起動する方式 Runnerコンテナ自身が dockerd を立ち上げ、 docker build や docker run を自己完結的に実行する。 シンプルですが、Runnerコンテナに 特権モードや大量の権限 を付与する必要があるため、セキュリティ面での懸念が残ります。 また、RunnerコンテナとDockerデーモンが同居することでリソース管理が複雑化しやすく、トラブルシュートもしづらいという課題があります。 Dockerデーモンをサイドカーとして起動する方式 Pod内で Runner と dockerd を分離し、 emptyDir などを介して ソケット通信 させる。 Dockerの実行環境はサイドカーに閉じるため、Runnerコンテナは通常権限で動かせる。 CIジョブ終了とともにPodごと削除されるため、イメージやボリュームなどの作業痕が自動的に掃除される点もメリットです。 私たちは Runnerコンテナに強い権限を持たせないことを重視 し、後者の DinDサイドカー方式 を選択しました。 6. Docker Hub のレートリミット問題 DinD構成でservice containerを利用していると、CI実行のたびに Docker Hub からイメージを pull することになります。 弊社では 35並列 × 高頻度実行 という構成のため、Docker Hub の レートリミット にすぐ到達してしまい、 Too Many Requests でCIが失敗するケースが発生しました。 対策 DinDサイドカーの dockerd 起動時に、 レジストリミラー として mirror.gcr.io を指定することで、Docker Hub への直接リクエストを減らしました。 args : - dockerd - --host=unix:///var/run/docker.sock - --group=$(DOCKER_GROUP_GID) - --registry-mirror - http://mirror.gcr.io - --max-concurrent-downloads=8 これにより、pull リクエストはまず Google の公開ミラーを参照し、キャッシュがあればそこから取得されるため、Docker Hub へのリクエスト数を大幅に削減できます。 結果として、レートリミットによるCI失敗はゼロになり、安定してservice containerを起動できるようになりました。 まとめと次回予告 今回、 EKS × ARC を使ってGitHub Actions Self-hosted Runner基盤を構築し、 コスト・パフォーマンス・柔軟性のいいバランスで実現できました。 ただ、これで終わりではありません。 次回は、この基盤の上で テスト実行時間をさらに短縮するために行ったチューニング について詳しく紹介する予定です。 「GitHub-hosted runnerで限界を感じている」 「EKSでSelf-hosted Runnerを検討している」 そんな方の参考になればうれしいです。
こんにちは!
タイミーでBackendEngineerをしている志賀( @akitoshiga )です!
2025年9月6(土)に開催された「ながらRuby会議01」に行ってきましたので、その様子を振り返りたいと思います! ながらRuby会議には、「Kaigi Pass」という社内制度を利用して参加しました。
「Kaigi Pass」とは、世界中で開催されているすべての技術カンファレンスに無制限で参加できる制度です。 productpr.timee.co.jp 会場の様子 当日は長良川沿いにある「 長良うかいミュージアム 」というとても素敵な場所で開催されました。 会場内にはスポンサーノベルティや展示などもありました。 セッションの様子 refinementsのメソッド定義を4000倍速くした話 alpaca-tc さん Ruby3.2以降、refinementsにおけるメソッド定義は約1万倍低速化していました。 社内サービスの開発でこの事態に直面した際に、原因の究明からRubyへのコントリビュートまでを行った過程をお話しされていました。 refinementsとはRuby2.0から導入された安全にRubyを拡張する仕組みのことで、モンキーパッチを当てたクラスのスコープを限定させることが可能です。 きっかけは、社内サービスのRubyのアップデートの際にRuby on Railsのアプリケーションの起動に数十秒かかるようになってしまったことでした。 Vernier とMiddlewareを利用して計測を行ったところ、ボトルネックとなっている処理が判明しました。 そこにrefinementsのメソッド Module#refine が存在していました。 Ruby3.3では、 Module#refine を呼び出した際にrefineのcallcacheがクリアされる処理が追加されます。 このcallcacheが削除されたことが低速化の原因でした。 これを Ruby Issue Tracking System で報告したところアドバイスをもらいました。 しかし、alpaca-tcさんはRubyの実装であるC言語には馴染みがありませんでした。 この問題に対してはChat-GPTや ko1/rubyhackchallenge を活用したりコミュニティでアドバイスを得ることで解決していきました。 最終的にプルリクエストを作成してRuby本体へのマージが実現したそうです。 技術的なギャップを埋めるためにAIを活用したのは素晴らしい解決方法ですし、粘り強く取り組みRubyへのコントリビュートを実現する姿は素晴らしいと思いました! 知っているようで知らないrails newの世界 luccafortさん speakerdeck.com Ruby on Railsではプロジェクトの初期化の際に rails new というコマンドを実行します。 しかし、このコマンドの裏側でどのような処理が行われているかは多くは知られていません。 そこで、コマンドはどのような実行フローを行っているか、また使われている技術がどのような設計の組み合わせによって実現しているかについて深掘りしてお話しされていました。 luccafortさんの今回の発表の動機の一つには、オーガナイザーを務められた「 関西Ruby会議08 」での体験から、個人開発以外の成長の選択肢を模索したかったという想いがあったそうです。 rails new で実行される処理は以下の流れになっています。 コマンド解析 ジェネレータ初期化 オプション処理 ディレクトリ作成 ファイル生成 bundle install これだけでも長大な処理なので、本発表ではコマンドの解析からジェネレータの初期化まで中心に説明していました。 rails new を実行すると Rails::Command によってargの解析やエラーチェックが行われます。 その後、 Rails::Command.invoke によって入力したコマンドの内容から Rails::Command の適切なサブクラスが呼び出されます。 今回の場合は Rails::Command::ApplicationCommand が読み込まれます。 Rails::Command::ApplicationCommand#perform によって無効なコマンドチェックなどが行われた後、 Rails::Generators::AppGenerator.start で定義された各種ファイルの生成タスクが実行されます。 その後、 Rails::Generators::AppGenerator#bundle_command によって bundle install が実行され最終的にコールバックが呼び出されます。 rails new に関する説明は以上です。 この取り組みを通してluccafortさんは仕組みを理解する重要性について気づきがあったそうです。 仕組みを理解していなくてもRuby on Railsは使えるものの、深く理解することで新しい発想や新たな気づきのきっかけになるとお話しされていました。 Ruby × iOSアプリ開発:共に歩んだエコシステムの物語 Tomoki Kobayashi さん speakerdeck.com Kobayashiさんは普段は主にモバイルエンジニアとして活動されています。 RubyはiOS開発の歴史において過去大きな役割を担っており、またiOS開発コミュニティもRubyに大きく貢献しています。 iOS開発とRubyが今までどう関わってきたかの歴史をお話しされていました。 2010年ごろのiOSアプリ開発はObjective-Cが使用されていましたが、サードパーティのライブラリのインストールが大変だったそうです。 ライブラリによってインストールの仕方が異なっており、Xcodeのビルド設定を行う際にもAppleの非公開の独自仕様のために保守性が非常に低いものでした。 この問題を解決するために CocoaPods というパッケージマネージャーが登場しました。 これによりライブラリの依存性解決・ダウンロード・Xcodeへのプロジェクト統合まで自動できるようになりました。 CocoaPodsはRubyでライブラリ管理に使用されるRubyGemsとBundlerを参考に作成されており、本体の実装もRubyで書かれています。 その他も nomad-cli や fastlane といったRubyを参考にしたツールが登場してきました。 この背景はツールの作成者が元々RubyやRuby on Railsのエンジニアが多かったことにあるそうです。 そして、CocoaPodsの依存関係リゾルバーである Molinillo(モリニージョ) はBundler1.9, RubyGems2.9に搭載されるようになりました。 しかしながら、iOS開発とRubyの関わりは薄れつつあるそうです。 2014年のSwiftの登場を機にSwiftが公式のパッケージマネージャーを発表したりBundler2.4でMolinilloが引退しています。 Ruby Mini Language作成記 〜ハンズオンで学ぶインタプリタの世界〜 haruguchi さん Rubyを用いてインタプリタを作成した経験をもとに、字句解析、構文解析、評価とった処理の実装方法や設計上の注意点についてお話しされていました。 インタプリタを作ろうと思ったのはharuguchiさんがRubyKaigi2025に参加したことがきっかけだそうで、RubyKaigiでよく発表される言語処理の話の理解を深めたいと思った時にインタプリタの実装を思いついたそうです。 haruguchiさんが参加されている勉強会でこの話を持ち込み、他のメンバーと実装していくことになりました。 インタプリタはFizzBuzzが動くものをゴールとして、単純な2項演算の実装からはじめることにしました。 最初は単純なパーサーのみで実装することとし、インタプリタの機能を追加していくにつれてレキサーを実装したり構文解析方法を工夫したりと実装を進めていきました。 自身で実装することを面白くするポイントとしてif文の条件式の区切りを < > にしたりとオリジナルの要素を追加していったそうです。 5ヶ月ほどでFizz Buzzの実装まで完了して、途中デモで実践していました。 会場のみんなでモブプロしてるの良すぎる #nagara01 pic.twitter.com/PX9v0mA3k2 — しが あきとし (@akitoshiga) 2025年9月6日 当初のゴールとしては達成したのですが、ここから配列やハッシュといったデータ構造も行ってみたいとのことでした。 言語処理の話題はRubyではよく出てくるのですが、その理解のためにインタプリタを自前で実践するところに尊敬しました。また、自分も挑戦してみたいと思いました。 💡Ruby(ひかるびー) 川辺で灯すPicoRubyからの光 bash さん speakerdeck.com PicoRubyという組み込み向けの軽量なRubyを使ってLEDを点灯させるところから、音声や加速度といったセンサーを追加して様々なことに挑戦することでRubyで組み込み開発をする楽しさについてお話しされていました。 最初の機材は「 ATOM Matrix 」という開発ボードで、内蔵のLEDを点灯させるところから始まりました。 また、基本的なアーキテクチャは「Super Loop Architecture」というものを用いていました。 Super Loop Architectureとは、初期化の後に発生させた無限ループの中でLEDに対しての操作を行うものです。 LEDの点灯に成功させたあとは、ランダムに点灯させたり自分の動きに合わせて点灯させたりといった試みを行っていきました。 最終的には棒状のLEDやMIDIシンセサイザーといった他の機材と連携させる試みを行っていました。 ライトセイバーを振り回すbashさん #nagara01 pic.twitter.com/SSv6g6SMAE — すぎうり (@uproad3) 2025年9月6日 365日のOSS開発を続ける舞台裏 Koichi ITO(Koic) さん speakerdeck.com RuboCopのコミッターであり、365日OSSにコントリビュートを行っているITOさんの普段の開発環境やOSSに対する心構えについてお話しされていました。 開発環境は業務のコードとOSSのコードを透過的に扱えるようにすることをテーマとしていました。 そのためのツールとして ghq や gem-src の使用を推奨されていました。 OSS活動をするとローカルリポジトリが大量に増えるのですが、その点については peco や fzf を用いた対策を紹介されていました。 印象的だったのは、gitコマンドの扱い方でコミット権のないリポジトリとリポジトリでの振る舞いを合わせるためにFork先のリポジトリをoriginとして、upstreamをForkした方のリポジトリとすることを推奨されていた点です。 これによってどの環境にプッシュする際も git push upstream head と同一のコマンドにできる利点について強調されていました。 心構えについては、コードの内容だけではなく発言やレビューについても恥ずかしくない振る舞いをしようという「ソーシャルコーディング」という考え方や、OSSを地球全体での非同期開発と捉えて自己完結したコードのみのPRを出さずにコンテキストを文章化して伝えることの重要性にも触れられていました。 アフターイベント 懇親会の後にはアフターイベントとして鵜飼漁の観覧がありました! 鵜呑みです。 #nagara01 pic.twitter.com/EPTU5bsiJ3 — どみにをん525 (@Dominion525) 2025年9月6日 残念ながら自分は参加できなかったのですが、大変盛り上がったみたいです。 まとめ スポンサーLTも含めてどのセッションも大変面白かったです。 発表者の「これがやりたいからやる!」といった気持ちに基づいた発表が多かったのですが、その姿勢をとても尊敬しました。 また小規模の開催だったこともあり、アットホームで参加者間でのコミュニケーションもとりやすくたくさんの方と交流できました。 また、自身は今回初めて岐阜に行ったのですが、自然と人々の生活が調和したとても素晴らしい場所でした。 大変心に残る素晴らしい会だったので、次回開催される際はまたぜひ伺いたいなと思いました!
はじめに こんにちは。タイミーでデータエンジニアをしている chanyou です。 先日、おそらく関西圏で初めてのデータエンジニアリング・アナリティクスエンジニアリングをテーマとしたイベント、 関西データエンジニア/アナリティクスエンジニアMeetup に参加してきました! https://monotaro.connpass.com/event/360460/ monotaro.connpass.com このミートアップは、株式会社MonotaRO主催のもと、「関西に住みながらデータ関連の仕事をしたい」「関西で同じ職種の仲間と繋がりたい」という想いを持つデータ専門職向けに開催されました。 当日は株式会社10X、株式会社MonotaRO、ダイハツ工業株式会社、そして当社タイミーの4社の発表と、最後にパネルディスカッションがありました。 非常に熱量あるイベントでしたので、内容をまとめてお伝えします。 会社にデータエンジニアがいることでできるようになること まずは株式会社10X 吉田さんの発表です。 speakerdeck.com マネージドサービスが普及し、誰でもある程度のデータ基盤を構築できるようになった現代において、改めて「なぜデータエンジニアが必要なのか」という問いに、具体的な事例で答えていく内容でした。 特に印象的だったのは、以下の2つの取り組みです。 アセスメントの実施とデータ品質の改善 DMBOKを拠り所にデータ品質を定義し、データセットごとに可視化する仕組みを構築されているとのこと。 正直データ品質の継続的なモニタリングまでされていて、見習っていかねばと思いました。 Data Contractによるデータソース仕様の確立 データの生産者とデータの消費者の橋渡し役として、連携のプロトコルを取り決めて運用されているとのこと。 これもまたマネージドサービスだけでは実現できない、人間に残された仕事のうちのひとつだなと思いました。 セッション全体を通して、「データエンジニアの本質とは何か?」という問いを突きつけられたような感覚で、身が引き締まる思いでした…!! 組織的データ活用をスケールさせる、アナリティクスエンジニアリングの実践 続いて株式会社MonotaRO 小谷さんの発表です。 アナリティクスエンジニアリングに特化した部署を立ち上げ、組織的なデータ活用をスケールさせている実践例が共有されました。 今回発表された小谷さんは、営業専門のアナリティクスエンジニアとして、営業組織にフルコミット。深く入り込んで課題の特定からソリューションの実装・運用までされているそうです。 印象的だったのは営業組織に本当に深く入り込んでいる点で、営業管理部署の定例に参加するのはもちろん、作業も同じ部屋で行うなど、徹底的に現場に寄り添っていました。これにより真の課題を特定して、成果につながったとのことでした。 さらに 縦に伸ばして横に広げる という、アナリティクスエンジニアが深さを探求して、データエンジニアがそれを横展開する思想が語られており、非常に共感できる考え方だなと思いました!! 具体的なソリューションについても、セマンティックレイヤーを整備したり、生成AIによる議事録作成の自動化をしたりと、踏み込んだデータ活用をされていて勉強になりました。 AnalyticsEngineeringがもたらした実インパクトと未来のロードマップ 当社 okodoon さんによる発表です。 speakerdeck.com タイミーにおけるアナリティクスエンジニアリングを「データ活用UXの改善」と定義し、これまで行ってきたデータモデリングやデータアプリケーション開発が、実際にどのようなインパクトをもたらしたかを紹介しました。具体的には以下の事例を紹介しました。 Looker整備によるアナリストの負荷軽減と指標統一 個人情報を含むデータのアウトプット申請フローのセルフサービス化 また、後半ではさらにデータ活用体験を向上させるために行っているヒアリング活動についても触れました。 データ利用者の業務理解には、ジョブ理論とユーザーストーリーマッピングを組み合わせた独自のフレームワークでヒアリングを実施。いざモデリングを行うとなった際にはアジャイルデータモデリングを実践しています。 またアナリティクスエンジニアリングの魅力に注目して語っていて、okodoonさんは 飽きないことも重要 と話していたのが同僚ながら面白かったです。 製造業におけるデジタル人材の活躍ポイント ダイハツ工業株式会社 太古さんによる発表です。写真NGのスライドでしたので文章のみでお伝えします! 自動車メーカーということで他の3社とは、データを取り巻く環境が全く異なっていました。AI、BI、アプリ開発の3軸で、トップダウンとボトムアップの両面で変革を推進しているとのことでした。 AI に関しては、スキルあるメンバーが現場に入り込み、たった2ヶ月でリリースして回っているとのことでした。スタートアップ顔負けなスピード感に驚きました…! BI に関しては、ちょっとダッシュボード作れるレベルの方を増やすのではなく、人に教えられるレベルの方を増やすことに注力した戦略を取られているとのことでした。 アプリ開発軸に関しては、手を挙げたキャリアチェンジしたい方などにプログラミング教育を実施して、元の部署や異動後の部署で現場の課題を解決する動きを取ってもらっているとのことでした。実際に人手で行っていた作業を自動化する内製アプリがポツポツと開発されていて、現場の課題をそのまますぐに解決できる環境が実現されているんだなと思いました…すごい。 パネルディスカッション セッション後は、登壇者全員によるパネルディスカッションが行われました。多岐にわたるテーマで議論が交わされ、特に印象に残った点をいくつかご紹介します。 Q. ジョブ理論の活用といった知識のインプットや、チームでの議論はどう進めている? okodoon(タイミー): 「プロダクト開発の知見を参考にしている。社内のプロダクトマネージャーが実践しているジョブ理論やユーザーストーリーマッピングの手法を、データ基盤の利用者ヒアリングに応用した。」 吉田さん(10X): 「X(旧Twitter)など外部からの情報収集に加え、ソフトウェアエンジニアリングの知見を参考にすることが多い。ただし、単に新しい技術を導入するのではなく、自分たちの組織のフェーズに合っているかが重要。経営陣にも年単位で繰り返し伝え続ける粘り強さも必要。」 Q. 大人数がデータを触る中でのガバナンスや管理体制はどのように担保してる? 太古さん(ダイハツ): 「まずはセキュリティを固めたセキュアな環境を構築し、その中で自由に使えるようにしている。新しい技術を試すためのSandbox環境を用意するなど、目的で使い分けている。」 Q. データ品質改善の副作用や、他部署への説得はどう乗り越えた? 吉田さん(10X): 「オペレーション部門などとの連携は課題になりやすい。まずは現状の定義がなぜ正しくないのかを紐解き、あるべき姿(to-be)を考える。元データの作りが良くないなら、データ基盤側で吸収するアプローチも取る。」 小谷さん(モノタロウ): 「営業組織などは特に指標が変わることに敏感だが、丁寧に説明することで理解を得やすい文化がある。」 Q. 何を作るかの意思決定、どこにベットする? okodoon(タイミー): 「投資しても腐らない領域にベットする。AEが担う指標の定義などは、やればやるだけ人間もAIも喜ぶ領域。」 吉田さん(10X): 「ビジネスプロセスをどう定義するか。枯れたフレームワークはLLMも解釈しやすい。」 Q. アナリティクスエンジニアというロールはどうやって生まれた? okodoon(タイミー): 「アナリストが闇堕ちして誕生した(笑)。『分析テーブルが汚い』といった憎しみを解決したいという想いが原動力。」 吉田さん(10X): 「ロールはなんでもよくて、執念をどこに捧げられるかの違い。」 おわりに 今回のミートアップを通じて、関西のデータコミュニティの熱量を肌で感じることができました。 各社の発表が刺激になったのはもちろん、パネルディスカッション後の懇親会では様々な領域の企業の方とお話できて、本当に西日本における盛り上がりを感じました…! このような素晴らしい場を設けてくださった運営・登壇者の皆様、そして当日お話しさせていただいた参加者の皆様、本当にありがとうございました! 今回得た学びを日々の業務に活かし、タイミーのデータ活用をさらに前進させていきたいと思います。
こんにちは、タイミーでバックエンドのテックリードをしている新谷 ( @euglena1215 ) です。 タイミーでは、開発効率を向上させるため、Devin や Claude Code Action といった AI ツールを活用してコードレビューの自動化を進めています。 Claude Code は「インラインコメントでレビューして」と伝えるとインラインでのレビューをしてくれるのですが、Devin は同じ指示をうまく解釈できずインラインでレビューしてくれません。 この能力の差は GitHub MCP が使えるかどうかの差ではあると思うのですが、Devin と Claude Code Action でのレビュー内容の精度を比較しようとした際に、レビューフォーマットが異なっていると純粋な性能比較が難しくなります。 そこで、今回は Devin でもインラインコメントによるレビューを実現するための方法を調べてみたので紹介したいと思います。 方法 方法は簡単で、以下の GitHub API を使ってインラインコメントを投稿する方法を記したドキュメントを Devin の knowledge として登録するだけです。 トリガー設定は登録時に Devin が提案してくるデフォルトの内容で問題なく動作しました。 How to post comments with code embedded: 1. Create JSON file for each comment you want to post. Example 1: { "body": "Security Issue: Hardcoded API key. Recommendation: Use environment variables", "commit_id": "954...12312", "path": "file.py", "line": 11, "side": "RIGHT" } Example 2: { "body": "Multiple issues found:\n1. Hardcoded API key should be in environment variables\n2. Inconsistent class naming (userAccount vs Product)\n3. Inconsistent parameter casing (Password vs username)\n4. Missing docstrings and type hints\n5. Inconsistent spacing around operators", "commit_id": "323......87686", "path": "code.py", "start_line": 11, "start_side": "RIGHT", "line": 25, "side": "RIGHT" } body: The text of the review comment. Include markdown code blocks for snippets commit_id: SHA of the commit you're reviewing. Not using the latest commit SHA may render your comment outdated if a subsequent commit modifies the line you specify as the position. path: Relative file path in repo line (integer): Specifies the exact line in the pull request’s diff view to which your comment should attach. Required unless using subject_type:file. The line of the blob in the pull request diff that the comment applies to. For a multi-line comment, the last line of the range that your comment applies to. side: In a split diff view, the side of the diff that the pull request's changes appear on. Can be LEFT or RIGHT. Use LEFT for deletions that appear in red. Use RIGHT for additions that appear in green or unchanged lines that appear in white and are shown for context. For a multi-line comment, side represents whether the last line of the comment range is a deletion or addition. subject_type: The level at which the comment is targeted. Either "line" or "file". Use "line" for inline comments. Use "file" for file-level comments. start_line (integer): Required when using multi-line comments unless using in_reply_to. The start_line is the first line in the pull request diff that your multi-line comment applies to. start_side: Required when using multi-line comments unless using in_reply_to. The start_side is the starting side of the diff that the comment applies to. Can be LEFT or RIGHT. A pull request diff may not match the original file's absolute line numbering. That is, if the PR contains additions or deletions before the line you’re commenting on, the line indices shown in the “Files changed” tab can shift from the original file’s line numbers. For example: In the pre-PR state, line 231 might refer to a completely different section of code than line 231 in the post-PR diff (because code added or removed above it shifts everything down or up). Therefore, you must use the line numbers as shown in the PR diff rather than the original file’s line numbers. If you have issues, visit the docs: https://docs.github.com/en/rest/pulls/comments?apiVersion=2022-11-28#create-a-review-comment-for-a-pull-request 2. Use gh api command. gh api \\ --method POST \\ -H "Accept: application/vnd.github+json" \\ /repos/owner/repo/pulls/4/comments \\ --input comment.json owner: the account owner of the repository. The name is not case sensitive. repo: The name of the repository without the .git extension. The name is not case sensitive. pull number: The number of the pull request. Key points: use "line" instead of "position", include code snippets in body using markdown, , set side="RIGHT" for additions この knowledge を登録することで Devin に「インラインコメントでレビューして」と一言伝えると、安定して正しくインラインコメントでレビューしてくれるようになりました! 🎉 実は、上記の knowledge の内容は Devin の開発元である Cognition 社の記事にそのまま掲載されています。 cognition.ai 公式ドキュメントを読みましょう、以上。の内容ではありますが、あまり日本語の文献が見つからなかったので記事にしてみました。 この記事が、同じように AI コードレビューに取り組む方々の助けになれば幸いです。
はい、亀井です。 インターネット上では、yykamei(わいわいかめい)という名前で活動しています。所属はタイミーです。 Kaigi Pass を利用して スクラムフェス仙台2025 に行ってきましたので、参加レポートという形でこちらに投稿しています。 まずは、スクラムフェス仙台の運営の皆さん、スポンサーの皆さん、会場提供をしてくださった enspace さん、そして、登壇者や参加者を始めとする関わってくださった皆さん、ありがとうございます。皆さんのおかげで終始楽しめました。 1日目はキーノートが行われます。今回は モンテディオ山形 の相田さんがキーノートスピーカーとして登壇されました。モンテディオ山形に入ってから相田さんが実施した取り組みを中心に、今後の展望についても話されていました。もともと楽天イーグルスやヴィッセル神戸などに関わっていたこともあり、クラブ運営についての知見などがあったと思うのですが「色々と変えてくれ」というオーダーを受けてモンテディオ山形にジョインされ、「色々」されたようです。たとえば、オフィスがあまりにも「オープン」すぎるがゆえに情報が筒抜けになっているので「これ、チームとしてまずいね」ということでオフィスの改善をしてセキュリティーレベルの向上をされたり、クラブも結局は売上が大事なので「試合をしていないときにどのようにして売上をあげていくか?」ということを考えてスタジアムの周辺の環境を整備されたりしたようです。印象的だったのは「地域にあってくれてよかった!」と言ってもらえること、そして、「このチームに入りたい!」と選手に思わせることを目指している、ということでした。スクラムフェスのように各地域で行われているスクラムフェスはそれぞれの地域で運営メンバーが異なりますし、同じスクラムフェスという名前を冠していても特色が異なります。そのような独自性をもつ地域スクラムフェスですが、みんな「地域に貢献したい」という思いがあるのではないかと私は思っています。そうした中で、スクラムフェス仙台で相田さんをキーノートにお招きしたのは何か感じるものがありますね。また、相田さんの話をよくよく聞いているとたくさんの 改善 をされたのですが、その 改善 の裏には丁寧な 観察 があったのではないかと推察します。というのも、先ほどのオフィスの話にしても現場に入ってよくよく見てみないと状況はわからないですからね。そのうえで対策を行うという話がまさにスクラムでいうというところの検査と適応なのだなと。 キーノートのあとにネットワーキングパーティーがありました。ここで写真を撮っておかなかったことを後悔していますが、とにかくわいわいやらせていただきました。特に印象に残っているのは、おーのAさんに「お、これは... 『かめり』さんですか?」といういじりですかね。ひらがなで「かめい」と書いたつもりなのですが、字が汚かったようで「い」が「り」に見えたようです。どうですかね?そんなに「り」ですか? 「かめり」?「かめい」? 2日目はいろいろと登壇セッションがありますね。初回は我らが ShinoP の登壇ということで聞いておりました。私はいわゆる「中の人」なので知っている内容ではあったのですが、あらためて聞いてみるとよくまとまっている話でしたね。さっそく 資料 もアップロードしていただいたみたいです。面白かったのはこれまでの行動を改めて言語化して、「共感性」「透明性」「一貫性」というものにまとめたところですね。誰かがその後質問をされていたのを盗み聞きしたところ、実際に行動を行っていた時はその言語化したことを意識してやっていたわけではない、とのことでした。改めてふりかえって言語化してみた結果、そうした概念にたどりついた、ということのようです。おもしろいですね。もちろん、内容自体の学びもあるのですが、登壇をきっかけに深いふりかえりによる内省が行われ自身の行動が明確化された、というところにも学びがありますね。別に登壇する機会がなくてもこういう内省自体には価値がありそうです。こういう気づきを与えてくれた盗み聞きの会話があるのもカンファレンスの醍醐味ですね。 続いて、りんさんの どうやら人って変われるらしい。一年半コーチングを受けて見つけたコンフォートゾーンの超え方。 という登壇を拝見しました。個人的に最近コーチングに興味があって学んでいる最中なのですが、クライアント視点でどう行動変容が行われたのか?という話は非常に学びがあります。コーチ視点だとクライアントの話を聞きながら適切なコーチングのスキルを活用していくことが求められるのではないかと思うのですが、そのコーチのあり方がクライアント側からはどう見えるのか?が垣間見えました。コーチングは共同関係だと思うのですが、まさにコーチだけではなくクライアントの努力があってこその行動変容なんだなと思いました。 お昼の時間帯は「はじめまして!」な方々とランチに行きました。厳密にはみんながみんな「はじめまして!」ではないのですが、まあいいでしょう。たまたま同じグループに地元の方がいらっしゃいましたので「いい感じの」ラーメン屋さんに行きました。おいしかったですね。その後、 鯛きち というおみせに行ってずんだ餅のたい焼きを食べました。 午後の時間帯はやはり登壇が行われるのですが、登壇と並行してコーチズクリニック、ワークショップ、フォトブース、OSTが行われます。なお、ワークショップは午前中からありました。本当はでたいワークショップがあったのですが、1日目の時点でほとんどのワークショップが定員に達してしまったので諦めました。私はほとんどOSTを行う部屋で過ごしていましたが、OSTとはいいつつもずっと誰かが話したいテーマを熱く語り合っていたり、たまにリーンコーヒーで構造的に話題を切り替えながら話をしていました。ここではかなりディープな内容を話していたのかなと思います。それこそ登壇では言えないような話とかがあるので、実は結構学びになる場だったかもな、と。 そういえば、スクラムフェス仙台が開催された会場である enspace さんについて話していませんでした。もともと最初のオーガナイザーだった天野さんが「スクラムフェス仙台やりたいなー」という構想段階で「じゃあうちでやりなよ!」と声をかけてくれたのが enspace さんだそうです。場所も日程も決まっていないし、なんならどういうコンセプトで何をやるのかすら決まっていない状態で声をかけてもらった感じみたいですね。 enspace さんはこのように初回からかなり協力的なのですが、実際のスクラムフェス仙台当日の動きについてもかなり協力的です。スクラムフェス仙台ではだいたい運営の方が紫色のTシャツをきていらっしゃるのですが、 enspace のスタッフの皆さんも同じ運営のTシャツをきています。つまり、 enspace のスタッフの方々もスクラムフェス仙台の運営として全面的に協力されていました。 enspace のスタッフさんお二人と話す機会がありました。一人目の方は大学4年生だとのことで、 enspace には大学1年生の頃からインターンとしてお仕事をされているとのことでした。「ここのお仕事はものすごく楽しい」と言っていたのが印象的です。来年からは新社会人として東京の会社に就職されるそうで enspace から離れるのを名残惜しそうに話しておりました。もう一人の方は大学3年生で enspace には大学2年生の頃から関わっているようです。こちらの方も「もうすごく楽しくてくるのが楽しみなんです」ということを言っていました。そして、スクラムフェス仙台が開催される日程が決まると、自分のシフトをそこに合わせるようにしたとのことでした。いわく、「スクラムフェスは楽しい」とのことです。会場を提供しているスタッフの方がこういう風に言ってくれるのは、ただの参加者である私にとってもとてもうれしいですよね。そして、そういう協力を惜しみなく提供する enspace のスタッフの皆さんにも本当に感謝したいです。 ここまでつらつらとスクラムフェス仙台の感想を書いてみました。もちろん、それぞれの登壇にも学びがありましたが、この場自体に存在することそれだけでも学びがありました。スクラムフェス仙台は今回が初めての参加でしたが、また来年も機会があれば行きたいですね。最後に、タイミーのメンバーで撮った写真をはっておわろうと思います。 タイミーからきた参加者の皆さん
8月6日、タイミー、UPSIDER、カケハシの3社共催による「 生成AI時代のPdM - 活用と未来戦略 」と題したイベントが開催されました。本イベントでは、プロダクトマネジメントにおける生成AIの活用と、それに伴うPdMの役割の変化に焦点が当てられました。本レポートでは、タイミーのプロダクトマネージャーである柿谷 樹の講演「AIで変わるPdMの役割 — 思考する力が武器になる」を書き起こし形式でお伝えします。 はい、株式会社タイミーの柿谷と申します。よろしくお願いします。 本日は『生成AI時代のPdM』というテーマで、『AIで変わるPdMの役割 — 思考する力が武器になる』という、少々仰々しいタイトルでお話しします。今回は『思考』をテーマにしたいと思います。 改めまして自己紹介をさせてください。株式会社タイミーでプロダクトマネージャーをしている柿谷です。バックグラウンドとしては、リクルートで新規事業開発を経験後、主にtoB領域のプロダクトマネジメントを5年ほど経験しました。昨年タイミーにジョインし、現在はバーティカルな市場での売上拡大を担当しています。タイミーは2-side-platformですが、toB担当・toC担当のように線を引かず、バリューストリーム(ユーザーに価値が届く一連の流れ)を単位に開発チームを組成しています。そのため、1人のPdMがプラットフォームの両面を横断して見ることが多いです。 それでは本題に入ります。このテーマを考えるにあたり、プロダクト開発の前提が大きく変わる中で、結局PdMに何が残るのかを突き詰めた結果、PdMの価値は『思考』へシフトするのではないかという結論に至りました。本日はその点について重点的にお話しできればと思います。 アジェンダは『思考する』『思考を止めない』『思考環境を整える』の3つです。 1. 思考する ── 文脈を設計し、出力を見極め、対話で共有する まず『思考する』についてです。『思考とは何か』という話ですが、デカルトの『我思う、故に我あり』といった話ではなく、私が読んだ本の中で非常に的確だと感じた説明を引用します。『思考とは、思考対象に対して何らかの意味を得るために、頭の中で情報・知識を加工すること』です。これは関数的な処理と捉えることができ、事象と知識というインプットからメッセージや意味合いというアウトプットを出すプロセスです。 この構造はAIの処理と似ていますが、本質的に異なる点があります。AIは不完全な入力に対しても、ハルシネーション(もっともらしい嘘)によってそれらしい出力を生成してしまいます。そのため、結局は人間による品質担保が不可欠です。ここに人間の価値が残ると考えており、プロダクトマネージャーには『コンテキスト設計能力』と『出力に対する審美眼』が求められるようになります。 この変化に伴い、ドキュメントの位置づけも変わってきます。アジャイル開発宣言では『ドキュメンテーションよりも対話』とされていましたが、AIに読み込ませるコンテキストが重要になる今、ドキュメントがAIへの重要なインプットとなり、PdMには『Why』を構造化するスキルが求められるようになります。これはPdMの役割が『コンテキストデザイナー』に変わることを意味します。ただ、これはドキュメント主義への回帰ではなく、コミュニケーションの重要性は普遍です。最終的にPdMには『思考の構造化』と『納得を生む対話力』が求められるようになると考えています。 2. 思考を止めない ── 継続的ディスカバリーが競争力の源泉に 次に『思考を止めない』についてです。これからの時代、継続的なディスカバリーこそが競争力の源泉になると考えています。一次情報が非常に重要になります。開発のデリバリー速度が爆発的に向上する中で、ディスカバリーも同じ速度で回す必要があります。そのためには、高速で一次情報に触れられる環境を構築し、そこから得た情報をもとに思考を常にアップデートし続ける仕組みが不可欠です。 では、何が大事かというと、これもAIとは直接関係ない部分もありますが、インタビューのリードタイムを極限まで短縮することです。明日インタビューしたいと思ったら、明日実行できるようなオペレーションを構築することが重要です。その上で、議事録の下書き作成などはAIに任せ、人間は考察に集中できる環境を作ります。そして『 オポチュニティ・ソリューション・ツリー(OST) 』のような思考フレームワークを活用し、論点を常にアップデートし続けることが重要です。 3. 思考環境を整える ── Bullshit Jobを減らし、意味ある仕事に集中する 最後に『思考環境を整える』についてです。PdMの仕事は『意味を作る仕事』へとシフトしていきます。AIの進化により、議事録作成や会議要約といった戦術的な労働から解放され、PdMは『意味の創造』という、より本質的な価値に時間を充てられるようになります。そのためには、いわゆる『ブルシット・ジョブ(無意味な仕事)』を減らし、思考しやすい環境を整えることが重要です。 チームや組織でAIを活用する方向性は、大きく2つに分けられると考えています。一つは、個人の成功事例を横展開し、チーム全体の生産性を底上げする試み。もう一つは、AI前提のオペレーションを抜本的に設計し直す試みです。まずは個人がアドホックにAIを活用し、そこで得たコンテキストや優れたプロンプトをチームで共有するなど、ボトムアップで進めていくのが現実的でしょう。 まとめ まとめになりますが、これからのPdMに求められることは、『思考する』『思考を止めない』『思考環境を整える』という3点です。 タイミーは積極採用中です。ご興味のある方は、カジュアル面談からでもぜひお声がけください。ありがとうございました。 hrmos.co 本講演のアーカイブはこちら 本講演の登壇資料はこちら speakerdeck.com
タイミーQAEnablingチームの松田( @yoshi_engineer_ )です。 先日、私の地元で開催されたスクフェス大阪に参加してきました! スクラムフェスに初めて参加したのは去年のスクラムフェス大阪24でして、その時の感動と熱が忘れられず、25年度も参加することに決めました。 www.scrumosaka.org 去年は個人で参加したのですが、今回は弊社のTED10というエンジニアの成長を支える制度を利用して参加させていただきました。 productpr.timee.co.jp 今年のスクラム大阪は去年とはまた違った取り組みも多く、参加者としてはとても満足しておりその取り組みも紹介できればと思います。 コーチーズクリニック ~経験豊富なコーチに相談してみよう~ 今回スクフェス大阪初の試みのコーチーズクリニック。 他のスクフェスでは何度か開催され、大変好評だったことから今回大阪でも採用されたとのことです。 そして今回はありがたいことにyoh nakamura( @yohhatu ) さんとのコーチーズクリニックを受けることができました。 以前から個人的に知っており、大変尊敬するお方でもあったので、とてつもなく緊張していたのですが、温かな笑顔で迎えてくださり、安心して対話し始めることができました。 私のスクラムに関する悩みを傾聴していただき、温かな空気の中、自分でも驚くほど話すことができました。 yohさんが寄り添いながら相槌を重ね、「どうして松田さんはそう思ったのかなー?」「松田さんの中でどうやったらもう少し良くできるだろう?」私が悩みを伝える中で、的確なタイミングで問いをいただきました。その答えも「あ,,,,じゃあ、こうしたら良いかも…!」と1人では気付けなかった(確信が持てなかった)仮説に自分から気づき言葉にすることができました。 ほとんど私の話だけで終えてしまったコーチングの時間でしたが、yohさんから「スクラムをする時、大事なのは、強い情熱持つことだよ。」と一言いただきました。 その言葉を聞いて、私はグーっと体の芯から力が湧き起こるような感覚になりました。 自分が困難な時、挫けそうになった時、yohさんからもらった言葉をお守りに頑張ろうと思います。 yohさん、有意義なお時間いただき本当にありがとうございました! 私の心を打ったsession アジャイル、諦めなかった10年 JTC,SIer,受託で挑んだリアル confengine.com JTC,SIer,受託会社の3社でアジャイル開発を推進を試みてきたOshikata( @oshikata200 )さん。この登壇はまさに理想と現実の中で泥臭く実践を行ってきたOshikataさんの10年間の軌跡を赤裸々に語っていただきました。 このセッションで話された内容は一言で言えば「組織改革への実践知」です。 「置かれた場所で咲く」よりも「咲ける場所を探す」べきなのか Oshikataさんはこれまで組織にアジャイルを導入すべく何度も奮闘してこられたのですが、組織の習慣や形態により導入するにあたって何度も壁にぶつかりました。 しかし、Oshikataさんの気づきはこうでした。 ソリューションやプラクティスを導入することを重視するのではなく、まずチーム、そして組織文化へのアプローチが必要。また、それは長い時間をかけて少しずつ行うことが重要。 失敗を恐れず、「増やす」から、「手放す」へ 企業の特性上、ドキュメントやルールが加速度的に増える現状があります。その背景には「過剰な失敗への回避」がそうせてる可能性があります。 しかし、そこで増えたドキュメントやルールは逆にメンバーやチームへの足枷になり速度と自立性を失わせます。 資産と思い積み重ねたものは、いつの間にか負債に変容。 現状を打破するためにも、形骸化されたルールやドキュメントを減らすことを推進されました。 負債を大きくするよりも、動きやすくするために手放すことを実践されました。 詰め込みすぎた制度,ルールがあるとそこから試行錯誤する姿勢が損なわれていきます。 “人を囲う”より,”みんなで空気を耕す” 「メンバーへの執着を手放す。そうではなく組織の空気を耕す」メンバーに執着することで自分のチームだけを囲うことは、長期的に見れば組織の衰退を助長します。 そうではなく、できる人材こそどんどん他の部署やチームに手放す。そしてまた新たなメンバーと対話し、組織の空気を耕していく。 それを体現するためにも、個人への信頼関係の構築が肝になる。 信頼関係の気付けた組織を耕し、メンバーがある範疇の制度の中でワークすることで工夫が行わられる。 「“強い個”を集めるのではなく、“みんな”で空気を耕す。 少しずつ、一歩一歩確実にみんなで進むことから風土が醸成されていく」 一朝一夕で組織は変わらないが、その一つ一つの積み重ねを愚直に行うことで芽が開く。とてつもなく大きい情熱を持って歩んでこられたOshikataさんのsessionは大きな学びと気づきを与えてくださいました。 困難な状態も、組織の実態もマイナスな要素をあげればキリがない状態であったとしても、少しずつ改善を重ね進まれていく姿が、今度は自分も頑張ろう!と心に火が灯るような感覚を覚えました。 おわりに 今回のスクラムフェスでも大変大きな気づきと学びを得ることができました。 この気づきと学びを活かして、より精進していきたいと思います! いつか私も聴講者としてではなく、登壇者としてスクラムフェスに寄与できればと思います!
こんにちは。データアナリストのtomitaです。 先日、社内のPdM(プロダクトマネージャー)とアナリストが中心となり、当社にとって重要な業界の一つである物流業界に関する勉強会を開催しました。 今回は、その内容と、そこで見えてきた当社の魅力についてご紹介したいと思います! 生成AIを駆使した『AI駆動勉強会』 今回の勉強会で最も特徴的だったのが、生成AIを活用した新しい学習スタイル『AI駆動勉強会』です。 これは、参加者各自がリサーチクエスチョンを設定し、それに対して生成AIを使って調査を行い、アウトプットと深掘りを行うスタイルです。 生成AIを使うことで、これまで何時間もかかっていた情報収集を短縮し、より本質的な議論に時間を割けるようにしました。 勉強会の様子 『AI駆動勉強会』の進め方 リサーチクエスチョンを立てる (5分):各自が知りたいテーマについて具体的な問いを立てます。 AIで調査する (15分):生成AIを使い、設定した問いについて効率的に情報を収集します。 アウトプット&質問深掘り (2分):調査結果を簡潔にまとめ、参加者と共有。疑問点やさらなる深掘りについて議論します。 このセッションを1.5〜2時間で2〜3回繰り返すことで、短時間で多くの学びを得ることができました。 参加者からの声 「リサーチクエスチョンを先に立てることで、集中して学習できた!」 「アウトプットと質問深掘りの時間で、学習内容がより深く定着した」 「AI活用の練度が上がり、効果的なプロンプトなどの知見が共有されたのが良かった」 「他の人のリサーチクエスチョン自体に学びがあり、視野が広がった」 部署を超えたメンバーとの交流 今回の勉強会には、アナリストだけでなく、PdMや元CSM(カスタマーサクセスマネージャー)で物流業界に詳しいメンバーまで、幅広い職種のメンバーが参加しました。 例えば、元CSMのメンバーからは、物流現場でのリアルな課題が共有され、AIによるリサーチだけでは得られない学びがありました。 多角的な視点からの議論は、私たちデータアナリストがデータから導き出したインサイトを、プロダクト改善やビジネス戦略に繋げる上で不可欠です。異なる専門性を持つメンバーと気軽に意見交換できる環境は、当社で働く大きな魅力の一つだと改めて感じました。 リモート参加も可能な柔軟な働き方 今回の勉強会では、多くのメンバーがオフィスに集まりました。私自身は家庭の事情でリモートでの参加でしたが、オフィスにいるメンバーと変わらず、活発な議論ができました。 当社のプロダクト組織では、働き方の柔軟性を担保する観点から、リモートワークOKとなっています。場所や時間にとらわれずに質の高いインプットとアウトプットができるのは、非常にありがたい環境です。 終わりに 今回の物流業界勉強会は、当社のPdMとアナリストが中心となり、生成AIを駆使した独自のスタイルで実施しました。AIで調査を進め、その結果をアウトプット・深掘りすることで効率的に物流業界への理解を深めることができました。 また、部署を超えて様々な職種のメンバーが参加することで、AIだけでは得られない物流現場でのリアルな課題が得られたり、多角的な視点からの議論ができたりしました。 We’re Hiring! 私たちは、ともに働くメンバーを募集しています!! カジュアル面談 も行っていますので、少しでも興味がありましたら、気軽にご連絡ください。
こんにちは、タイミーでPlatform Engineerをしている近藤です。 マージキュー上のエラー通知について GitHubのマージキューは、チームが効率的かつ安全にコードをリリースするために欠かせない仕組みです。特に、大規模なチームや頻繁にコードをデプロイするプロジェクトでは、マージキューがCI/CDプロセスの核となります。しかし、マージキュー上でエラーが発生した際、その通知を迅速に受け取ることが極めて重要です。通知が遅れたり、見落とされたりすると、次のような問題が生じる可能性があります。 リリースの遅延 エラーが発生すると、問題のある変更は差し戻されます。 その結果、後続のPRのベースが変更されるため、マージキュー上でのCI処理を再実行する必要が生じます。 これにより、本来スムーズに進むべきリリースサイクルが停滞し、開発スピードが著しく低下します。 開発者体験(DX)の低下 マージキューでのエラー通知が適切に行われないと、開発者が混乱したり、不要な手戻り作業を強いられたりします。これにより、開発者のモチベーションや生産性の低下を招くことにもなります。 以上の理由から、GitHubのマージキューでエラーが発生した際の通知を確実に行うことは、開発効率を保ち、迅速な問題解決を促すために不可欠です。通知の仕組みを整備し、チーム全体が即座に問題に対処できる環境を整えることが求められます。 エラー通知の課題 単にワークフロー中にエラー通知のジョブを入れるだけでは、先行してマージキューに積まれたPRにCIエラーが発生する内容が含まれている場合、後続の人にも不要なエラー通知が届いてしまいます。これを回避するために、GitHubのconcurrency機能を活用してCIを適切にキャンセルする仕組みを導入しました。 sequenceDiagram autonumber participant DevA as 開発者 A participant DevB as 開発者 B participant Queue as マージキュー participant CI as CI (GitHub Actions) participant Master as master ブランチ DevA->>Queue: PR A をキューに追加 DevB->>Queue: PR B をキューに追加 par Queue->>CI: PR A + master のテスト Queue->>CI: PR B + PR A + master のテスト end CI--x Queue: PR A + master でテストエラー Queue->>DevA: PR A がテストエラーになりました Queue->>DevB: PR B がテストエラーになりました Queue->>Queue: PR B + master の再エンキュー Queue->>CI: PR B + master のテスト CI-->>Queue: PR B のテスト合格 Queue->>Master: PR B を master にマージ PR AとPR Bがマージキューに積まれた状態で、先行するPR Aでエラーが発生すると、PR Bは自動的にPR Aの内容を除外した状態で再度マージキューに入れられます。 この際、マージキューの実行時に作成されるブランチ名は都度変化します。よって単純にブランチ名をキーとした以下の設定では、期待通りに動作しません。 concurrency : group : ${{ github.ref_name }} cancel-in-progress : true そこで、マージキュー上で作成されるブランチ名の規則性を利用します。ブランチ名にはPR番号が含まれているため、ワークフロー内でブランチ名からPR番号を抽出するジョブを追加しました。 最終的に採用したワークフローは以下の通りです。意外と知られていませんが、concurrencyキーワードはジョブレベルでも指定可能です。 name : ci on : push : branches : - '**' - '!master' - '!gh-readonly-queue/**' tags-ignore : - '*' merge_group : permissions : id-token : write contents : read pull-requests : write jobs : concurrency_key : runs-on : ubuntu-latest outputs : key : ${{ steps.extract_pr.outputs.key }} steps : - id : extract_pr name : Extract PR number from branch name shell : bash run : | if [[ $ {{ github.event_name }} == 'merge_group' ]] ; then full_ref="${{ github.ref_name }} " pr_number=$(basename " $full_ref" | cut -d- -f2) echo "key=$pr_number" >> "$GITHUB_OUTPUT" else echo "key=${{ github.ref }}" >> "$GITHUB_OUTPUT" fi ci : needs : concurrency_key concurrency : group : ${{ github.workflow }}-${{ needs.concurrency_key.outputs.key }} cancel-in-progress : true uses : ./.github/workflows/_ci.yml with : skip : ${{ github.event_name != 'merge_group' }} secrets : inherit merge_group_notify : needs : ci if : ${{ failure() && github.event_name == 'merge_group' }} uses : ./.github/workflows/_merge_group_notify.yml with : role_to_assume : arn:aws:iam::012345678901:role/example notification_type : failure secrets : inherit 上記の仕組みを導入することで、先行するPRでテストエラーが発生しても、その影響で後続PRに対して不要なエラー通知が送信されることを防げます。 sequenceDiagram autonumber participant DevA as 開発者 A participant DevB as 開発者 B participant Queue as マージキュー participant CI as CI (GitHub Actions) participant Master as master ブランチ DevA->>Queue: PR A をキューに追加 DevB->>Queue: PR B をキューに追加 par Queue->>CI: PR A + master のテスト Queue->>CI: PR B + PR A + master のテスト end CI--x Queue: PR A + master でテストエラー Queue->>DevA: PR A がテストエラーになりました Queue->>Queue: PR B + master の再エンキュー alt 失敗通知をキャンセル Queue -x DevB: PR B がテストエラーになりました (キャンセル) end Queue->>CI: PR B + master のテスト CI-->>Queue: PR B のテスト合格 Queue->>Master: PR B を master にマージ ただし、PR AとPR Bがほぼ同時にマージキューへ投入された場合など、極めて稀なタイミングによっては、キャンセル処理が間に合わず後続のPRに対して不要なエラー通知が送信されてしまうケースが残ってしまいます。 こうしたエッジケースまで完全に抑制しようとすると、ワークフロー全体の実装が大幅に複雑化し、運用・保守コストも増大してしまう懸念があります。 そのため、今回は「不要な通知の発生を現実的な範囲で最小化しつつ、実装のシンプルさを優先する」という方針を選択しました。 まとめ 本仕組みによって、マージキュー運用時の不要なエラー通知を大幅に削減しつつ、チーム全体の開発効率と安心感を両立できるようになりました。 今後も、より良い開発体験を目指して、現場の実情やフィードバックを取り入れながら、継続的な改善を進めていきます。
こんにちは、タイミーでバックエンドのテックリードをしている新谷 ( @euglena1215 ) です。 GitHubマージキューTIPSシリーズ、前回までに、マージメソッドの制約やCIの高速化といったTIPSを共有してきました。今回は、マージキューのポテンシャルを最大限に引き出すためのパラメータチューニングと、そのために不可欠なキューの状態の可視化について解説します。 デプロイ効率と安定性のトレードオフ マージキューには、その挙動をコントロールするためのいくつかのパラメータが存在します。 Build concurrency :マージキューのCIを同時に実行する並列数。 Minimum/Maximum pull requests to merge :一度のデプロイ(マージ)に含めるPRの最小数と最大数。 これらのパラメータは、効率性と安定性という、二つの相反する要素を調整するために使用します。 効率性(デプロイの速さ) :開発者の待ち時間を短縮するため、PRを迅速にマージすることが求められます。 安定性(変更の分離) :問題発生時の影響範囲を限定し、原因特定を容易にするため、一度にマージする変更は少なくすることが望ましいです。 例えば、 Maximum pull requests to merge を10に設定するとデプロイのスループットは向上しますが、障害発生時には10個のPRの中から原因を特定することが困難になります。逆に1に設定すると、原因特定は容易になりますが、PRが多数待機している場合に待ち時間が増加します。 キューの長さを計測する必要性 この関係を考慮してパラメータを調整するには、「現在のマージキューで待機しているPRがどの程度あるか」というデータが必要です。キューに待機しているPRがなければ設定を変更する必要はありませんが、常に多数のPRが待機している場合は、CIの並列数を増やすなどの対策を検討する必要があります。 しかし、キューの長さや待ち時間といった情報は、GitHubの標準機能では提供されていません。このため、キューの長さを計測し、可視化する仕組みを構築しました。 キューの長さを計測する方法 私たちのチームでは、GitHub Actionsを利用してキューの長さを計測し、Datadogへ送信しています。 その実装で利用している方法を紹介します。 gh コマンドによるキュー長の取得 GitHubマージキューの現在の長さは、GitHubのGraphQL APIを通じて取得できます。 gh コマンドを使えば、これを1行のコマンドで簡単に行えます。 使用するコマンドは以下の通りです。 QUEUE_COUNT=$(gh api graphql -f query=' query { repository(owner: "THIS_IS_ORG_NAME", name: "THIS_IS_REPO_NAME") { mergeQueue(branch: "DEFAULT_BRANCH_NAME") { totalCount: entries { totalCount } } } } ' --jq '.data.repository.mergeQueue.totalCount.totalCount') このコマンドは、GraphQLクエリで必要なデータ ( totalCount ) を指定し、 gh コマンドの --jq フラグでレスポンスから値を直接抽出しています。 このコマンドを、 on.merge_group (PRがマージキューに追加された時)をトリガーにしたGitHub Actionsで実行します。その結果をモニタリングツール(私たちの場合はDatadog)に送信することで、キューの長さを時系列グラフとして可視化できます。 マージキューに入っている Pull Request の数の時系列グラフ このダッシュボードによって「どの時間帯にマージが集中するのか」「現在のパラメータ設定でキューが効率的に処理されているか」といった状況を把握できるようになりました。 データに基づくパラメータ調整の実際 このダッシュボードを2週間運用した結果、私たちのチームでは同時にマージキューに積まれていたPRは最大でも 3件 であることが分かりました。 この実績データに基づき、安定性をさらに高めるため、パラメータを以下のように調整しました。 Maximum pull requests to merge : 変更前 5 → 変更後 3 Build concurrency : 変更前 10 → 変更後 6 一度にマージするPR数を実績値(3件)に合わせ、ビルドの並列数( Build concurrency )をその2倍に設定しました。これにより、リソースを効率的に使いつつ、より安定した運用を目指しました。 まとめ マージキューは導入するだけでも一定の効果がありますが、その効果を高めるには、開発の規模や状況に応じてパラメータを継続的に調整することが重要です。その調整は、勘や感覚ではなく、今回紹介したような可視化されたデータに基づいて行うことが推奨されます。 今回はキューの可視化とパラメータ調整について解説しました。次回以降も、マージキューをより効果的に活用するための情報をお届けします。
こんにちは、タイミーでバックエンドのテックリードをしている新谷 ( @euglena1215 ) です。 このシリーズでは 「モノリスRailsにマージキューを導入してデプロイフローを安定させる」 の続編として、導入時のTIPSを紹介しています。前回は 「GitHubマージキューTIPS:CIの実行を最適化し、障害対応を10分高速化する」 について解説しました。 本記事では、GitHubのマージキュー導入後に発生した、ブランチ保護機能(Ruleset)のbypass list機能との非互換性について解説します。 これまでのコードフリーズ運用 タイミーでは、主に年末年始やGWといった開発者が少ない期間にコードフリーズ期間を設けています。この運用を実現するため、我々はGitHubのRulesetsと、そのbypass list機能を活用していました。 これは非常に便利な機能で、以下のような運用を可能にしています。 通常時: 開発者は自由にマージできる。 コードフリーズ期間中: Rulesetを有効化し、原則マージを禁止する。 緊急時: ただし、bypass listに登録された開発者のみ、チェックボックス一つでこのルールを回避し、緊急の修正をマージできる。 この仕組みで、コードフリーズ期間中の安全性と、緊急時の柔軟な対応を両立していました。 マージキュー導入後に発覚した問題 マージキューを導入し、順調に運用が始まったかのように思えたある日、コードフリーズ期間直前に問題が発覚しました。 bypass listに登録されているにもかかわらず、ルールを回避してマージすることができなくなっていたのです。 コードフリーズ期間中にコードを変更することは基本ありませんが、例えば障害対応で緊急の修正が必要になった際に、これまでのように特定の担当者が即座にマージできなくなる、という影響が考えられます。これは、柔軟な対応を期待していた開発者にとっては意図しない仕様変更でした。 原因と対応 仕様上の非互換性 調査の結果、マージキューとRulesetのbypass機能は併用できないGitHubの仕様であることが分かりました。この件はGitHubの公式Discussionでも報告されています。 ref. https://github.com/orgs/community/discussions/45208 この仕様に対する直接的な解決策は見つからなかったため、bypass listを使用しない運用への変更が必要になりました。 新しい運用への変更 代替案として、以下の運用を構築しました。 コードフリーズ期間中、 常に失敗するCIジョブ をワークフローに追加する。 ただし、このCIジョブはブランチ保護ルールの 必須チェックには設定しない 。 これにより、開発者はCIの警告表示からコードフリーズ期間中であることを認識でき、意図しないマージの抑止につながります。 まとめ GitHubのマージキューは有用な機能ですが、Rulesetのような既存の機能と組み合わせる際には、意図しない動作をしないか注意が必要です。(この記事は2025年7月時点のGitHubの仕様に基づいています。) 私たちのケースでは、導入後にこの問題が判明し、コードフリーズ直前の対応が必要となりました。 マージキューの導入を検討する際は、通常のデプロイフローだけでなく、コードフリーズのような特定の運用条件下でも意図した通りに動作するか、事前に検証することを推奨します。 特に、ご自身のチームが以下の点に当てはまるか、一度確認してみてください。 ブランチ保護(Rulesets)で、特定の担当者やチームにマージの例外(Bypass)を許可しているか? その例外的なマージは、緊急時の対応など、今後も必要な運用か? 私たちのケースでは、導入後にこの問題が判明し、コードフリーズ直前の対応が必要となりました。 さて、次回はマージキューのポテンシャルを最大限に引き出すための「詰まり具合の可視化」と、パラメータチューニングについてご紹介します。
こんにちは、タイミーでバックエンドのテックリードをしている新谷 ( @euglena1215 ) です。 このシリーズでは 「モノリスRailsにマージキューを導入してデプロイフローを安定させる」 の続編として、導入時に工夫した点や直面した課題をTIPS形式で紹介しています。前回の記事では 「GitHubマージキューの制約:マージメソッドが1つに強制される」 について解説しました。 今回は、マージキューの特性を活かして CIの実行方法を最適化し、特に緊急時のデプロイを高速化した 話を紹介したいと思います。 Pull RequestにおけるCIは本当に必須か? マージキューの最も基本的な機能は、エンキューされたPull Request(PR)を 常に最新の master ブランチに取り込んだ状態でCIを実行する ことです。これによりmaster ブランチのCI成功が保証されるため、私たちはまず「master ブランチへのマージ後のCI」を不要と判断しました。 さらに、私たちはもう一歩踏み込んで考えました。 「そもそも、PR上でのCI実行も必須ではなくなったのでは?」 仮にPR単体でCIが失敗したとしても、その変更はマージキューのCIで検知され、キューから自動的に取り除かれます。master ブランチが壊れることはないため、PR作成時のCIはあくまで開発者のための任意実行とし、マージをブロックする「必須チェック」から外せるのではないか、という発想です。 CIを「必須」と「任意」に分ける方法 この「PRでのCIを必須としない」運用を実現するには、一つ技術的な壁がありました。 GitHubの仕様上の壁 GitHubの仕様では、PRの必須チェック(Required Check)とマージキューの必須チェックを分けることができません。マージキューでマージ前にチェックしたいCIはPRでも常に実行する必要があります。 こちらはマージキューへのフィードバックとして挙がっていますが、2025年7月時点では対応されていませんでした。 ref. https://github.com/orgs/community/discussions/46757#discussioncomment-4912738 PRでの必須チェックを外すためにチェックを外すと、マージキューでも必須ではなくなってしまい、CIが実行されないままマージされる問題が生じます。 ワークフロー分割による解決策 そこで我々は、CIのコアロジックを再利用可能なワークフロー( _ci.yml )として切り出し、それを呼び出す2つのワークフローに分割することで、この問題を解決しました。 1. ci.yml(マージキューでの必須CI) これをブランチ保護ルールの必須チェックに設定します。このワークフローは push イベントと merge_group イベントの両方でトリガーされますが、 github.event_name を判定し、 merge_group イベントでない場合は skip: true を渡すことで、CIの実行をスキップします。 これにより、「必須チェックとしては存在するが、PR上では即座に完了(スキップ)し、マージキューでのみ実行される」状態を作り出せます。 # .github/workflows/ci.yml name: ci on: push: branches: - '**' - '!master' merge_group: jobs: ci: # ... uses: ./.github/workflows/_ci.yml with: # merge_group イベントでない場合は true を渡し、ワークフローをスキップさせる skip: ${{ github.event_name != 'merge_group' }} secrets: inherit 2. ci_branch.yml(PRでの任意CI) こちらは必須チェックには設定しません。 push イベントでのみトリガーされ、常に skip: false を渡してCIを実行します。開発者はこのCIの結果を参考にしますが、完了を待たずにエンキューできます。 # .github/workflows/ci_branch.yml name: ci branch on: push: branches: - '**' - '!master' jobs: ci: uses: ./.github/workflows/_ci.yml with: # こちらは常に false を渡し、CIを実行させる skip: false secrets: inherit この構成により、「PR上ではCI実行は必須ではないが、マージキューではCI実行が必須」という状態を実現しました。 実行結果を確認する 挙動を確認するために、実行結果を確認してみましょう。 PR上では、ci.yml と ci_branch.yml が実行されます。必須であるci.ymlはほとんどのステップがskipされているので全体が数秒で確認できます。対して、ci_branch.ymlでは数分かかっていますが、必須ではないので実行途中でもマージキューにエンキューできます。 PR上でのci.ymlの実行結果 PR上でのci_branch.ymlの実行結果 対して、マージキュー上ではci.ymlのみが実行されます。マージキューで実行した場合、ci.ymlはskipされずに実行されるので、CIが失敗しているのにmasterブランチにマージされてしまうといったリスクはありません。 マージキュー上でのci.ymlの実行結果 障害対応のデプロイを10分短縮 この最適化は、特に緊急の修正(Revertなど)をデプロイする際に大きな効果を発揮します。 変更前 featureブランチのCI(10分) + masterマージ後のCI(10分) + デプロイ(5分) = 合計25分 変更後 マージキューのCI(10分) + デプロイ(5分) = 合計15分 結果として、障害発生から復旧までの時間を 10分短縮 できました。 まとめ マージキューはmaster ブランチを安定させるための機能ですが、その特性をうまく利用し、CIの実行方法を工夫することで、デプロイの安定化とデプロイの高速化を両立させることができました。まさに一石二鳥の改善だったと感じています。 次回は、マージキュー導入時に発覚した、GitHubのブランチ保護機能(Ruleset)との思わぬ非互換性について紹介します。
こんにちは、タイミーでバックエンドのテックリードをしている新谷 ( @euglena1215 ) です。 先日公開した記事 「モノリスRailsにマージキューを導入してデプロイフローを安定させる」 では、多くの開発者が関わるモノリスリポジトリのデプロイフローを安定させるために、GitHubのマージキューを導入した事例を紹介しました。 今回からは、導入にあたって直面した課題や、我々の開発プロセスにうまく組み込むために工夫した点などを、TIPSとして何回かに分けて紹介していきます。 シリーズ最初のトピックは、マージキューを導入すると直面するマージメソッドの制約についてです。 開発者の自由がなくなる?マージフローの変化 マージキューを導入すると、開発者のマージ作業のフローが大きく変わります。最も大きな変化は、開発者が直接「Merge」ボタンを押すのではなく、「Merge when ready」ボタンでエンキュー(マージキューに追加)する点です。 エンキューされたPull Requestのマージ作業そのものは、開発者ではなくbotが内部的に自動的に行うようになります。 マージメソッドを指定できない仕様 2025年7月時点でのGitHubマージキューの仕様では、各開発者がエンキュー後のマージメソッドを選ぶことはできません。代わりに、リポジトリの設定として、どのマージメソッド(Merge commit, Squash and merge, Rebase and merge)を使うかを指定しておく必要があります。 結果として、 これまで開発者が個人の好みでマージメソッドを選んでいた運用はできなくなり、全員が同じメソッドを使うことを強制されます。 我々が行った選択とそのプロセス マージキューを導入するにあたり、我々は Merge commit と Squash and merge のどちらに統一するか、という選択を迫られました。 各選択肢の課題の比較 それぞれの設定をデフォルトにした場合に、開発者にどのような影響が出るかを比較検討しました。 Squash and merge を選択した場合の課題: 意図的に複数のコミットに分けているプルリクエストが、マージ時に強制的に1つにまとめられてしまいます。さらに、GitHubのUI上で自動生成されるコミットメッセージは、個々のコミットメッセージを単純に連結したものになり、マージ時にメッセージをきれいに整形することができません。 Merge commit を選択した場合の課題: これまで feature branch 上で作業途中のコミットを細かく積み、マージ時にUI上で1つにまとめていた開発者にとっては、整形前のコミットがそのまま master ブランチの履歴に残ってしまうことになります。 我々の決定:「Merge commit」の採用と運用によるカバー 両者を比較した結果、我々はリポジトリのデフォルト設定として Merge commit の採用を決定しました。 決め手は、 Squash and merge を選択した際の「コミットメッセージが適切に整形できない」という制約の影響が大きいと判断したためです。 その上で、 Merge commit を選択した場合の課題(整形前のコミットが残ってしまう)については、運用でカバーする方針としました。 具体的には、コミットを1つにまとめたい開発者に対し、「マージキューに入れる前に、 feature branch 上で git rebase -i などを使って事前にコミットを整理してもらう」という協力をお願いすることにしました。 この運用により、意図したコミット履歴をそのまま残したいケースと、複数のコミットを1つにまとめてマージしたいケース、その両方に対応できると考えました。 この決定の背景と具体的な運用ルールをドキュメントにまとめ、開発者全員に協力を依頼することで、スムーズな移行を目指しました。 まとめ GitHubのマージキューはデプロイフローを安定させる有用なツールですが、一方で、チームの開発スタイルに影響を与える制約も存在します。特に、マージメソッドが1種類に固定される点は、導入前にチーム内でコンセンサスを取っておくべき重要なポイントです。 この「マージメソッドが強制的に固定される」という仕様は、見落とされがちなポイントだと思いましたので、最初のTIPSとして紹介しました。 次回は、マージキューの特性を活かして、障害対応時のCI待ち時間を短縮した工夫についてご紹介します。